14話『道なき騎士たち。』
「すげえ……。」
目の前に広がる街並みを見て、タツヤが目を輝かせていた。
教科書でしか見たこと事はないが、多分昔の中世もこんな感じだったのだろう。
煉瓦造りの道路を、綺麗な毛並みの馬が馬車を引っ張っている。
そしてその道には様々な露天商が立ち並んだ市場になっている。
「ショウ、いろんな店並んでるな!なんか面白いもん売ってないかな?」
「俺は焼き菓子とか買いたいな、カエデが好きなやつが売ってたらそれが欲しいな。」
俺はタツヤと話しながら歩いていると、騒ぎ声が聞こえてきた。
露天商の並ぶ道を歩いていくと、果物屋らしい店の前で店主らしい男と兵士を侍らせた全身を鎧で覆ったような人物の2人が口論していた。
「あれって何が起こってるんですか?」
近くにいたおばさんに聞こうと近寄るが、おばさんは嫌そうな表情で俺から離れていった。
目の前の状況からしてあまり良くない話だとは思ってはいたけど、口に出したくないほどということに困惑するしかない。
タツヤを見ると、この場から逃げ出したそうだ。
「別の道にでも行くか?」
「そうしよう。」
タツヤは言い終わるよりも早く踵を返して早歩きでその場から離れていく。
急いでタツヤの跡を追おうとすると、タツヤが十字路の横道から出てきた全身鎧の人物と衝突した。
「あ、すみま……。」
「なんだ貴様!」
声を荒げながら全身鎧はタツヤに向かって背負っていた大剣を構える。
全身鎧の後ろから、護衛のような兵士が槍を構える。
タツヤも俺も、目の前の状況を理解できず、その場で動けなくなった。
「あの、ぶつかってすみません!」
タツヤが震え声で全身鎧に謝罪している。
しかし、全身鎧は何も聞いていないと言うように大剣を振り上げた。
次の瞬間、タツヤが誰かに突き飛ばされるように横へ飛んでいく。
大剣はさっきまでタツヤがいた場所の地面に叩き込まれ、煉瓦作りの道路にヒビが入っていた。
「逃げるわよ!」
聞いたことのある声がすると同時に、タツヤが何者かに引っ張られるように走り出した。
「おい貴様!どこへ逃げる!追え!」
全身鎧にが命令すると、横に付き従っていた兵士が追いかけて行った。
全身鎧は十字路を曲がっていくタツヤを目で追っている。
あの様子だとこの国にいる限り追いかけるかもしれない。
俺は息を呑みながら全身鎧の人物の元へ歩いていく。
「あの、あいつは俺の連れで……。」
俺は意を決して全身鎧に話しかけた。
全身鎧は俺の顔を兜の隙間から覗き込む。
「すまない!悪いが今はあの暗殺者の追わなければならない!」
大剣を引っこ抜いた全身鎧はそういうとガシャガシャと音を鳴らしながら、タツヤが逃げた方向へ走っていった。
その場で呆気に取られていると、後ろからガシャガシャと音が聞こえてくる。
後ろから、全身鎧の男が兵士に果物の入った袋を持たせて歩いていた。
果物屋の方を見ると、並んだ棚はかなり荒らされていた。
周りにいた人々が果物屋に近づいて、棚を直したりして助けている。
少し息を吐いて、急いでタツヤを追いかけようと走っていく。
曲がった先の道路は人通りが多く、人を探すのに苦労しそうだ。
人混みの中を歩こうとすると、少し前に聞いた声が響いてきた。
「どこいった!出てきて罪を認めろ!」
さっきの全身鎧が道路の中央で大声を出している。
かなり人が混んでいるはずなのに、全身鎧の周りだけ綺麗に空間が作られている。
「ショウ……ショウ……。」
ふと横の路地裏から声が聞こえてきた。
路地裏の方を向くと、タツヤと黒いフードを被った人物が手を振っていた。
人混みの中を歩いて路地裏へと入る。
「タツヤ、無事だったか?」
「ぶつかっただけでここまで追い回されると思わないじゃん……。」
タツヤが震え声でその場に座り込んでいる。
横にいたフードを被った人物も、少し息が上がっている。
「お前は誰だ?」
「口の聞き方は気をつけた方が良いですよ。」
そういうと、目の前の人物がフードを取る。
フードの下からは、三つ編みの少女がいた。
「杉原、無事だったのか。」
俺は目の前の少女に驚いた声で聞く。
杉原尚美、学級委員を務めていた俺たちのクラスメートだ。
炎属性の魔力が高いのか、髪は赤色に変色している。
「マジで助かった、ありがとう。」
タツヤが立ち上がって頭をペコペコさせる。
「じゃあ俺たちは泊まっている宿に避難しに戻るから、後で行けるよう住所を……。」
「小畑君があの騎士に目をつけられているので、しばらく私が働いている鍛冶屋にいる方が安全だと思いますよ。」
そう言うと、ナオミは手招きしながら路地裏から全身鎧にバレずに道路を出て曲がる。
数分くらい経って、一つの煉瓦造りのお店に到着した。
金床が描かれた看板の店の扉を、ナオミがノックした。
「戻りました〜。」
扉が開いて、黒髪の見たことある人物が出てきた。
「あれ、ショウじゃん。」
「ダイキ!」
俺は目の前の黒髪の小太りな青年が出てきた。
足立大輝、クラスは違うがよく一緒につるんでいる悪友の1人だ。
バイトと株で荒稼ぎして遊ぶ時のお金をよく出してくれていた、1番頭が上がらない奴だ。
俺とタツヤは転倒する勢いでダイキに抱きついた。
「感動の再会ではあるけどそこまで喜ぶか?」
「何言っているんだ!」
「お前ほど頼りになるやつに会えたことが本当に嬉しいんだよ!」
俺とタツヤは、ダイキに会えたことを神に感謝しながら泣き喚いていた。
横でナオミが周囲から視線が集まっていて恥ずかしそうに顔を覆っていたが、今はそれ以上にこの感動を噛み締めていたかった。
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