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120話『旅の再開』

「2人とも、起きてる?」

医務室にユリとサイアが入ってくる。

すでに部屋に来ていたタツヤたちと共に扉から入ってくる2人を迎える。

正直に言うと、ぐっすり眠れた記憶はない。

「それで、なんの話だ?」

「メジスト共和国への道筋について説明しにきた。」

ユリは軽く言うと、地図を取り出して俺の横に置いてあった机に置いた。

「まず今馬車がある村がここ。」

ユリが説明しながら地図の山が連なる箇所に指を置いた。

「この村を出た後、すぐに軟玉山脈を通ることになる。そこを通ったら港に出るの。そこから1週間かけて海路でメジスト共和国に到着するってルートよ。」

ユリが地図の上をなぞるように滑らせながら青い箇所を指差す。

どうやら海を渡るルートらしい。

「馬車は港に放置か?」

「いや、馬車ごと乗っけれる大きな船らしいから問題ないよ。」

ユリの返答を聞いたタツヤが安心する。

あの馬車を気に入っていたようだし、離れたくないようだ。

「じゃあ、早く行こうぜ。いつも通り馬車を動か……。」

「今回はショウが馬車操縦してもらう。」

ユリがタツヤに若干申し訳なさそうな表情で話す。

タツヤが不思議そうな表情をしていると、ユリが軽く手を叩いた。

医務室の扉が再び開き、ヒロとマモルが入ってくる。

牢屋にいた時の服装とは違い?白と赤を貴重としたかっこいい衣装を纏っている。

「結構かっこいい服だな。」

「ありがとう、それと申し訳ない。悪いニュースが一つある。」

ヒロは申し訳なさそうに話すと、後ろにいたマモルに合図をした。

マモルは用意していたらしく左手を俺たちに向けた。

左手の中には、あの水晶玉があった。

何が言いたいのかが速攻でわかった。

「水晶玉回収し忘れたのか?」

「神器だけ全部集めて完璧に忘れてた。ごめん。」

ユリが改めてヒロたちに謝罪していた。

「それで、水晶玉を回収するためにタツヤが再びリズラス王国に行く必要があるのか?」

「ええ、もう一度行く必要があるのは大変だけど、お願いできる?」

「まあ行くしかないだろ。ただ今度はカアイは敵になっているだろうし、見つかるかどうかなんて全くわからないぞ?」

タツヤの話を聞いたヒロが返す言葉もないと言わんばかりに頭を下げる。

「本当にありがとう。」

「水星君たちも向かっていいよ。水晶の回収が終わり次第、赤崎に持たせる予定の魔法陣から送り届けることにする。」

ユリはそう言いながら転移書簡を取り出した。

「とりあえず、まず3人を村に送るね。宿屋の店主にずっと馬車頼みっぱなしだったから。」

「おう、わかった。」

「2人も気をつけてね。」

そういうと、俺とカエデとサイアは魔法陣の上に立った。

「『転移書簡』。」

ユリが詠唱すると同時に、俺たちの体が吸い込まれていく。

目を開けると、馴染みのある馬車の中にいた。

「到着か。」

「じゃあとりあえず支払いに行ってくる。」

カエデは笑いながら馬車の扉を開けると、目の前に馬車の管理をしてくれていた宿屋の主人が現れた。

「お前ら!2週間もどこほっつき歩いとったんだ!」

若干キレ気味な主人が後退りするカエデに向かって叫ぶ。

禿頭には綺麗な青筋が浮かんでいる。

とりあえずサイアが敵と間違って認識したのかすぐに氷のナイフを作り出していた。

「ストップ。」

急いで止めて2人の状況を確認する。

「すみません!それと馬たちと馬車を止めている間ずっと整備してくれてありがとうございます!」

カエデが丁寧に謝る。

「すみません!お代はしっかり払うようつもりです!」

俺も馬車の入り口で必死に主人に頭を下げた。

宿屋の主人は徐々に怒りがおさまっていくらしく、青筋も消えていた。

「謝罪は伝わったが、俺に馬車を預けた期間の金は調達する。金貨6枚分だぞ?」

「こちらです!」

カエデがすぐにカバンの中に合った俺の皮袋から金貨を6枚取り出して主人に渡す。

払うのが難しいと思っていたらしい主人は目が点になっていた。

金貨は今7枚しか用意してなかったから、足りて良かったと心から思う。

「これで足りましたか?」

「ああ……毎度。」

主人は少し呆気に取られた表情で手渡された金貨と馬車を交互に見る。

俺は馬を撫でながら馬車の綱と繋ぐ。

「カエデ!」

「オッケー!ありがとうございました。」

「おう、毎度!」

主人は金貨を大切そうに胸ポケットにしまって俺の操る馬車に手を振っていた。

馬車が門を出た。

「こっから先に向かうんだな?」

「そうだね、だいぶ長旅になるけど大丈夫?」

後ろで話しかけてくるカエデに軽く頷く。

ただ、あまり体調は良くない。

ユリたちが来るまで、カエデが俺の手を握って一緒に手を握って眠ってくれた。

それでも俺は悪夢を見ていた。

夢の中では両腕のなくなったサイアが膝をついている夢だ。

慌てて近づいて触れた瞬間、恨み言を言いながらサイアが陶器みたいに割れて消える夢だ。

それでも夢は終わらず、次々と崩れていく風景から視線を感じていた。

何かが後ろにいるとわかった時には目が覚めていた。

あんな夢がずっと続いていてあまり眠れてない。

だからと言って、みんなを心配させるわけにはいかない。

「ショウ止まって!」

後ろからカエデが叫んできて咄嗟に綱を勢いよく引っ張る。

馬車は村を囲っていた柵の前で止まった。

「危なかった、ありがとう。」

「大丈夫?」

「大丈夫だ。」

俺はそう言いながら馬車を動かして村の門へ行く。

突然、後ろからカエデが後ろから抱きついてきた。

「どうした?」

「ごめん。」

後ろからカエデが申し訳なさそうな声で話しかけてきた。

「謝ることなんてないだろ。」

「今回の作戦はうまくいったけど、私が捕まったせいでショウが重傷を負ったのは変わりないから。」

話を聞いて少し安堵した。

「心配してくれてありがとう。けどそんなことで気を落とさなくていい。」

「分かった……。」

後ろから少し震える声と共に、首筋が少し濡れた感じがした。

「それじゃ、出発だ!」

俺は力一杯手綱を握る。

馬は素早く南に向かって走り始めた。

ここまで読んでいただ、ありがとうございます。もしこの作品を読んでいただいた後に感想を書いていただければ励みになります。また、どこか漢字や文法の間違いがあった場合、指摘していただけるとありがたいです。

また、最近体調があまり良くなく、また家庭内の事情でしばらく小説を執筆できる環境でなくなりました。

次の投稿は11月15日からを想定しております。

かなり長い時間になりますが、首を長くしてお待ちしていただけると幸いです。

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