114話『緑の看守』
次々と飛んでくる蔦を弾きながら看守へと近づいていく。
炎を纏わせた剣で斬りつけたつもりなのに、蔦が斬り倒せてないのが厄介だ。
幸いなのは、夢野が2人を連れてすでに逃げ出してくれたおかげで
「放たれろ!」
詠唱すると同時に、力一杯剣を振るう。
剣に纏っていた炎を斬撃を飛ばす。
僕の神器、六色の剣は全ての属性の力を纏うことが出来る。
今は炎を纏わせていて、それを投げ飛ばすように刀身から投げつけた。
看守の左腕に炎が直撃して燃え始める。
[ネペンテス。]
看守が奇妙な喋り方をすると同時に、看守の背中が大きく開く。
中から緑色の植物が急成長して、見たことのある真上に口のついた植物が現れた。
「ウツボカズラ?」
僕が困惑していると、燃えている左腕にウツボカズラの中にある水を流していた。
水をかけた際の煙が音を立てながら通路全体を包んでいく。
煙が晴れると、左腕が黒く焼き焦げている看守が近寄ってきた。
「やっぱただの看守ってわけでもなさそうだね。」
再び剣に炎を纏わせた瞬間、黒くなった艦首の左腕から新しい腕が生えてきた。
やはり植物で構成されたモンスターかゴーレムという噂は本当らしい。
植物なら燃やせばいいと思うが、さっきみたいにウツボカズラで炎を消してくるのは厄介だ。
[ローザ。]
看守が再び奇妙な喋り方をすると同時に右腕にバラの花を持つ。
疑問に思っていると、薔薇の蕾の箇所から茎が突き抜けてくる。
ギザギザの緑の刃物へと変わった薔薇のレイピアを握った看守が俺に顔を向けてくる。
「来るか?」
慎重に剣を構えた瞬間、足に違和感を感じた。
足を見ると、蔦が絡まっている。
蔦はさっき看守が出てきた床の瓦礫の隙間から蔦が伸びていた。
「案山子戦術か。」
叫んだ瞬間、足に絡みついた蔦が僕の体を持ち上げた。
「属性、風!」
詠唱と共に剣に渦巻く風を纏わせる。
足に近づけると、ミキサーみたいに蔦を巻き込んで捩り切った。
少し失敗したのか、足から少し出血する。
起き上がると走り寄ってきた看守が茨のレイピアを突き出す。
すぐに首を曲げてかわしながら剣を看守に向ける。
「放たれろ!」
刃に纏っていた旋風を看守の緑色の兜目掛けて飛ばす。
看守の頭部は扇風で捻れてバラバラになった。
「頭部破壊!少なくともこれで……!」
[ムッシプラ。]
奇妙な声が聞こえて青ざめる。
首のところから植物が伸びて、2枚の棘がついた葉っぱが僕に近づいてきた。
「属性水!放たれろ!」
即座に詠唱して剣に渦巻く水を纏わせて叩き込む。
水が周囲に散乱して看守の鎧の表面を刻んでいく。
急いで距離を取ると、左腕から蔦が伸びてきていた。
「まずい!」
「バーニングスター!」
真上から詠唱と同時に燃える杖で蔦を燃やしながら夏川さんが降りてきた。
「夏川さん、どうやって上から?」
「夢野に渡していた魔法陣で移動してきた。あいつが看守?完全に化け物だけど?」
夏川さんが嫌そうな表情でハエトリグサの顔が回復した看守が起き上がる。
「夏川さん、炎魔法得意ですか?」
「把握した。近接戦苦手だから援護お願いね。」
夏川さんはそういうと炎を纏った杖を強く握りしめる。
看守は左腕を伸ばすと、4本の蔦が僕と夏川さんめがけて飛んでくる。
「属性、生!放たれろ!」
僕は詠唱と同時に剣から5枚の柊のようにギザギザの付いた葉っぱが生えてきて散らばるように飛んでいく。
僕と夏川さんは柊の葉っぱで蔦が切り落とされる中を突っ切って進んでいく。
なんとか夏川さんが近づいて炎を纏った杖を突きつける。
[バルサミナ。]
看守奇妙な声と同時に、胴部分の鎧が観音開きする。
中からはオクラに似た植物が現れていた。
「しまった!」
「属性、土!」
急いで叫びながら夏川さんとオクラの間に土で覆った剣を挟む。
オクラが無数のタネを弾き飛ばしながら開いていく。
剣を覆っている土は全て砕けるが、僕と夏川さんを守り切った。
夏川さんをその場に仰向けに倒れるように後ろに飛ばして、看守の後ろ側に回り込んで背中に剣を向ける。
「属性、雷!放たれろ!」
僕が詠唱すると同時に、雷がまとわりついて勢いよく撃ち出される。
[サザンカ。]
看守は上半身だけ僕の方を向けて分厚い木の板が雷の前に聳え立つ。
雷が木の板に直撃して轟音を鳴らす。
顔を上げると、中央にヒビが入った木の板があった。
「燃えてない!?」
驚いていると、木の板をへし折った艦首が左手から5本の蔦を勢いよく伸ばしてきた。
「今だ夏川さん!」
僕は叫ぶと同時に蔦に体を絡まれる。
看守の背後では夏川さんが杖を構えている。
「ブレイズブラスト!」
夏川さんが詠唱すると同時に、無数の火の玉が看守と僕に向かって放たれる。
看守が振り向き終わる前に火の玉が触れ、体全体が燃え始めた。
幸い燃えている看守が盾になってくれて、僕に火の玉は一才当たらなかった。
[ネペンテス。]
「属性、風!放たれろ!」
再び背中から現れたウツボカズラに向かって、剣を向ける。
一度全ての属性を使ったことによって、再び風が使えるようになった。
剣から放たれた旋風は看守の背中に直撃してウツボカズラを捻り潰した。
看守は諦めたのか、天井に開いた穴を見る。
徐々に身体は崩れて燃えていき、最後には灰になった。
灰の山になった看守の裏から、肩で息をしている夏川さんが近づいてくる。
「これで……倒した?」
「多分倒せました。大丈夫ですか?」
「オクラ嫌いになりそう……。あんなの至近距離で爆発させられたら危ないって……。それよりカエデを知らない?」
息を荒げる夏川さんが腰につけていた赤い剣を手に取る。
おそらくその剣が早川さんの神器なんだろう。
「わかった、下の階にいるはずだから一緒にむか……。」
僕が提案しようとした瞬間、監獄全体が勢いよく揺れた。
バランスを崩した夏川さんが勢いよく転ぶ。
「大丈夫ですか?」
「大丈夫、それより今の揺れ何!?」
「わからない、とりあえず向かおう!」
僕は夏川さんの腕を掴んで階段に向かって走る。
階段を降りると、前から風が勢いよく吹き込んできた。
「何この風!?」
「わからないけど、風の吹いてくる方に蒼山くんたちがいたはずだ。」
目を開けると、壁が壊れて外が見える。
その奥では槍を持った人影が見える。
「蒼山くんだ!」
急いで近づいていると、巨大な甲羅が巨大なアームを伸ばしていた。
「まずい!属性、土!放たれろ!」
僕が急いで詠唱して剣を向ける。
詠唱と同時に土の塊を次々と飛ばす。
甲羅のアームが横に逸れて槍を持った影の横を通り過ぎていった。
「ヒロ!?」
驚いている蒼山くんに急いで近づいて行った。
ここまで読んでいただ、ありがとうございます。もしこの作品を読んでいただいた後に感想を書いていただければ励みになります。また、どこか漢字や文法の間違いがあった場合、指摘していただけるとありがたいです。




