表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
109/126

109話『開かれる檻』

「ヒロ君!大丈夫!?」

俺の横でマモルが檻の奥にいる青年に向かって話しかける。

檻の中の青年、水星英雄が顔を上げる。

「やあマモルくん、元気だった?」

ヒロが笑いながら俺たちに少し元気じゃない笑顔を見せる。

水星英雄は俺たちのクラスの学級委員だった男だ。

本来の名前の読み方はみずほしヒーローとキラキラネームになっているが、本人がその読み方を嫌い、クラスでは「ヒロ」と呼ばれている。

「蒼山くんまで来てくれたんだ。ごめんね。」

「とりあえずお前らを先に転移させる。」

俺は話しながら一度だけ使える魔法陣を檻の中に入れようとすると、ヒロが俺の手を押さえた。

「どうした?」

「それは僕を安全なところに移送する魔法か?」

ヒロの質問に軽く頷いて答える。

今手元にある魔法陣は自警団のアジトにつながっていて、佐々木と星宮がスタン張っている。

「ごめん、僕は2人も助けたい。ここから出してくれないか?」

ヒロが真剣な表情で話しかけてくる。

俺はマモルと一瞬顔を見つめ合った後、笑顔を向ける。

「サイア!こっちの牢を開けてくれ!」

俺は淡々と檻の扉を開けていくサイアに向かって話す。

サイアはすぐに頷いて檻に近づいて来ている間に別の魔法陣を取り出した。

「『転移書簡』!」

俺が叫ぶと同時に、手に持った魔法陣から杖とメイス、本と剣、何本かのポーションの瓶が飛び出してきた。

もしヒロ達が戦うと言い出した時用のために別で用意していたものだ。

サイアが檻の鍵を開くと同時に、出てきたヒロに剣を渡してポーションの口に押し込む。

レイスケが作った栄養剤だから、即効性はだいぶあるだろう。

「おいなんで囚人が出てきているんだ!?」

「取り押さえろ!看守たちを呼んでこい!」

遠くの方から兵士たちの声が聞こえてくる。

「もう少し騒ぎ大きくしてきて!」

「わかりました。」

サイアは頷いた後、ヒロの隣にあった檻の鍵を開けに行こうとして立ち止まった。

「ここの鍵、全部同じらしいのでこれを渡しておきます。」

サイアは手の中で氷の鍵を作って俺に手渡して、再び鍵を開けに向かった。

「んじゃ、俺たちも行くぞ!」

落ち着いた様子のヒロとマモルと共に囚人たちの方へ向かう。

階段の前までくると、怪我をした兵士たちの姿があった。

「なんか兵士の人たちの怪我の度合い、かなりひどくない?」

ヒロの若干引いているような声を聞いて、ルーカスが言っていたことを思い出す。

4階にいるのは凶悪犯と言われている人たちが牢獄に入れられている。

「もしかして、僕たちヤバい奴らも一緒に出したか?」

「まあ全責任は王国の奴らにあるってことで……。」

俺が説得しようとしたところで、通路の奥からサイアが目を見開いて走ってきた。

「サイア、どうし……!」

「待ちやがれええ!!」

サイアが俺の背中に回り込んで隠れると同時に、奥から聞き覚えのある野太い声が聞こえてきた。

右目に十字の傷の付いた、筋肉質な男が走ってきた。

どこで手に入れたのか、石の棍棒が握られていた。

「昨日の強盗!?」

「敵が増えたか!」

俺とマモルが急いで武器を構えようとすると、ヒロが俺たちの前に立つ。

「てめえらぶち殺すぞ!」

叫びながら近づいてくる強盗に、ヒロが落ち着いた表情でその場にしゃがみ込んだ。

強盗の振り上げた棍棒に向かって、カエルみたいに足を伸ばして飛び上がったヒロの剣が棍棒の柄目掛けて切り上げられた。

強盗の手に持った棍棒は柄から上を宙に残したまま地面に叩きつけられて砕けた。

「は?」

驚いた表情を浮かべる強盗の頭にヒロが乗っかり剣を振り下ろした。

剣の峰が強盗のうなじめがけて叩き込まれた。

強盗は白目を剥いてそのまま倒れ込んだ。

「流石に人を斬るのは躊躇うね。」

ヒロが片手で落ちてくる棍棒の打撃部を受け止めながらいい笑顔で振り返った。

「今持ってるの、俺たちが持ってきた鉄の剣だよな?」

俺はヒロの右手にある剣を見ながら話しかける。

「この世界に来た時、とても強い剣士の人に稽古してもらったんだ。おかげで黒龍を倒せる程度には強くなっている。」

「それより早く降りない?」

ヒロが俺の質問に答えていると、マモルが階段の方を見ながら話しかけてくる。

下へと続く階段から、男性の歓喜の声や女性の悲鳴が聞こえてきていた。

「まずい!」

俺はすぐに階段を降りて3階へと降りる。

3階では何名かの凶悪犯が女囚の入っている檻を壊そうとしていた。

手に持った雷竜の槍の穂先が戻っているのを確認して首筋に当てる。

「あ?」

俺を睨みつけてきた囚人を見て、俺はカバンに入っていた瓶の蓋を開けて振りかける。

「ぎゃああああ!!」

首に水が降りかかった槍の漏電に巻き込まれた囚人は感電してその場に倒れ込んだ。

「これ、鍵を開けるのまだまずいか?」

「だろうね。とりあえず閉じ込められているかもしれないユイナを探そう。」

「あとカエデだ!」

そういうと俺とサイア、マモルとヒロに分かれて女子を探し始めた。

見ていくだけで何人もの囚人が檻を開けようと必死になっていた。

「扉開けるように命令したの、間違いだったかも……。」

「今はご主人様を探しましょう。」

サイアと共に通路を走って十字路に差し掛かった。

十字路を横切ろうとしたところで右側から気配を感じた。

振り向くと鉄の壁が俺の目の前まで迫っていた。

「ショウ様!」

サイアに力一杯襟を掴まれて引き戻される。

俺が立っていた場所に鉄の板が倒れ込んだ。

鉄の板に乗っかっていた黒いローブを被った小さな人影が舌打ちをする。

「こいつがマモルの言っていた看守か!?」

急いで槍を構えようとすると、右側の通路からさらに弓を構えた小さなローブが現れた。

咄嗟に首を捻ると、さっきまで俺の頭があった場所を矢が通り抜けて奥の檻を揺らしている囚人の頭を貫いていた。

揺らされていた檻の中にいたらしい女性の悲鳴が聞こえてくる。

「サイア!」

俺が叫ぶと、背中に隠れていたサイアが氷のナイフを投げる。

盾持ちが防ぐより先に弓持ちのフードを切り裂いた。

フードが落ちて顔が見える。

見たことある緑色の肌が通路の脇にある松明の光で照らされる。

「ゴブリン!?」

「てめえらが4階の危険な囚人を解放したのか?」

右の通路から現れた小さいローブが苛立った声を上げながらフードを取る。

手には両端が別々の形になった棍棒を持っている。

「お前もフードを取れ、もう顔を隠す必要ないし視界を狭めるだけだ。」

棍棒を持ったゴブリンが支持すると、盾をもったゴブリンもフードを脱ぐ。

「ウィーク様直属の部下5人衆の1人、パッジ。」

「同じく5人衆の1人、ゲラ。」

「同じく5人衆の1人、カヒト。」

自己紹介を終えた3体のゴブリンは、各々の持った武器を構えた。

ここまで読んでいただ、ありがとうございます。もしこの作品を読んでいただいた後に感想を書いていただければ励みになります。また、どこか漢字や文法の間違いがあった場合、指摘していただけるとありがたいです。

また私情により次の投稿は23日になることを深くお詫びします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ