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107話『奪還作戦』

「えっと、この人たちも味方なの?」

アジトに入ったユリが若干困惑したような表情で話す。

入り口の近くにいた男が嫌そうな表情でユリを見る。

「おいショウ、この嬢ちゃん大丈夫か?」

ルーカスが苦笑いを浮かべながらユリに指をさす。

「安心してくれ、結構強いから。」

俺は笑いながらルーカスの肩を叩く。

普通に仲良くなったことを信じてないのか、ユリは少し悩んでいるようだ。

「それで、カエデはどうなったんだ?」

俺が話しかけると、ユリが少し残念そうに、だけど少しまだ希望があるような表情をする。

「カエデは多分カアイに連れられて、監獄へ連れて行かれているはずね。」

「まじか……。」

「お前の彼女さんも連れて行かれたのか。」

後ろからルーカスが話しかけてくる。

「ええと、あなたは……。」

「この自警団の団長のルーカスだ。あの行軍で嫁を攫われた。」

ルーカスは笑いながらユリに手を伸ばしてきた。

ユリは恐る恐るルーカスの手を握り握手を交わしていた。

「ルーカス、監獄の地図をユリに見せてくれないか。」

「おう、嬢ちゃんこっち来い!」

ルーカスは叫びながら俺とタツヤ、ユリとサイア、マモルを連れて別の部屋へ連れて行く。

中はかなり小さく、真ん中に机が置かれているだけだ。

ルーカスはその机に一枚の大きな紙を広げた。

「これが監獄の地図だ。」

ルーカスが広げた地図には「田」の字を2つの線が囲むような地図があった。

「この監獄は4階建てになっている。2階が男性囚人、3階に男性の囚人がいる。お前の彼女はそこだろう。そしておそらく、国を守ってくれた英雄は強いから、おそらく4階の指名手配犯と同じ牢のはずだ。」

ルーカスが俺たちに説明しながら次々と監獄を指さす。

「そんで、その周りを2つの塀を囲んでいて、その間に兵舎が建てられている。そして北側には外につながる通路はあるが、山の廃校に繋がっている。そんで過去にそこの男を助ける時に使った道はもう使えないんだったな?」

ルーカスがマモルの方を向いて尋ねる。

マモルが軽く頷いている。

「兵士たちって空を見ますか?」

「多分見ないだろうな。この辺りのモンスターは空から襲ってくる奴はいないだろうし、囚人たちも登れない設計になっている。」

ルーカスが不思議そうに返事をしたのち、ユリが考えてから口を開く。

「まず、兵舎の兵士たちを自警団の皆さんで一ヶ所に集めてください。倒さなくていいです。その間に私の仲間が上空から侵入、私の魔法で上から潜入してみんなを助けて脱出する。それでどう?」

ユリの提案を聞いて、俺とタツヤは頷いていた。

確かにそれならカエデ達を連れて帰れそうだ。

「そういえば、マモルの盾ってどこにあったの?」

「王城の倉庫だったはず。確か鞄や水晶玉もそこに保管されてるって言ってた。」

マモルの話を聞いて、ユリがため息を吐く。

「これ王城にも行かないといけないな。」

タツヤが少し笑いながら話す。

「どっちも行くべきとなると……分割するべきね。」

「じゃあ潜入がうまい俺と、武器を奪って牢獄に行きやすくするためにユリが王城に行くのはどうだ?」

タツヤの提案を聞いたユリが静かに頷く。

「できれば、2階と3階にいる俺たち自警団の家族は無理か?」

ルーカスが真剣な表情で話しかけてくる。

確かに今回自警団に協力してもらう以上、彼らの家族を自由にするくらいはしないといけないだろう。

「ユリ、仕事量多いけど頼むぞ!」

「期待してるぜ!」

「早川さんが頼りだ!」

俺とタツヤとマモルの応援に、ユリが冷たい視線を送る。

「あんたたちも気をつけなさい。マモルの話なら、変な看守もいるらしいし。」

「おう、気をつけて行ってくる!」

俺はユリの心配に強く頷いた。


物陰から顔を覗かしながら兵舎を見る。

兵舎の前では自警団が松明を持って周りを照らしながら騒いでいた。

「理由なき投獄をされた者を解放しろ!」

「罪なき人を自由にしろ!」

「嫁を返せ!」

自警団たちは必死に声を荒げながら騒いでいると、次々と兵士が自警団のもとに集まり始めていた。

「夢野、どうだ?」

『兵士らしき人間はだいたい自警団への対応に追われてる。上を見ている見張もいない。おかげで楽に上から屋上に入れた。』

水晶玉から夢野が呆れた声を上げながら返事する。

「ユリ、夢野の方は準備が出来た。」

俺は横にいるサイアの手の中にある水晶玉に話しかける。

水晶玉の中には王城近くでタツヤと一緒に映るユリの姿があった。

『わかった。『転移書簡』!』

ユリが詠唱すると同時に、ユリが手渡してくれていた魔法陣の書かれた紙が起動する。

「よし、行くぞ!」

俺はサイアとダイキに作って貰った槍を持ったマモルと一緒に魔法陣の中に入り込んだ。

顔を上げると、風が勢いよく吹いてきた。

「風強いな。」

「というか、屋上に入り口なさそうだけど、どうする?。」

夢野が周りを見ながら話しかける。

「強行する。」

俺はすぐに雷竜の槍を手に取って少し離れた屋上の床に突きつける。

「放たれろ。」

俺が静かに呟くと同時に、雷竜の槍から派手な轟音を立てながら床に直撃して爆発した。

床の瓦礫が崩れて、人が入れるくらいの穴が空いた。

中を覗き込むと、通路に繋がっていた。

「よし、入口できた。」

「兵士たちも来る気配ないな。壁で音が遮断されたか?」

「なんにせよチャンスだ!行こう!」

俺はそう言って床に開いた穴をさらに大きくする。

「蒼山、俺は少し壁の近くでやることをやってから行く。あとから合流するから先に行っておいてくれ。」

そういうと、夢野は鎧の羽を広げて東の壁に向かって飛んでいった。

「よし、2人とも行くぞ!」

俺はそういうと、床に開けた穴の中へと入る。

中は松明で照らされていて、牢屋の中がよく見えた。

「マモル様のご友人はどこにいらっしゃいますか?」

後ろに穴から入り込んできたサイアがマモルに話しかける。

「勇者ってことになってたから、危険人物判定でこの階にいると思う。」

「おい、君たち!」

マモルたちの話を聞いていると、すぐ近くの牢から手が伸びてきた。

奥には涙目の優しそうな表情の男性がいた。

服装からしてムンクらしい。

「僕たちをここから解放してくれないか?」

ムンクらしい男は今にも泣きそうな目で話しかけてくる。

「魔法陣を使うか?」

マモルが不思議そうに話しかけてくる。

「いや、俺たちが探しているやつじゃないし……。」

「勇者を探しているのですよね?場所を教えます!」

檻を捕みながらムンクらしい男は涙を流す。

ユリが用意した魔法陣は2種類ある。

1つは夢野が持っている何度も使えて転移先の魔法陣も選べるがユリの詠唱がないと使えない魔法陣。

もう1つは俺が持っている既に転移させる箇所が決まっていて1度しか使えないが誰でも使えるようにした魔法陣だ。

夢野はいま別の事をするためにいないから一度のやつ5枚しかない。

ユリにどうしようか尋ねようと思って水晶玉を取り出そうとしたところで、サイアが服の裾を引っ張ってきた。

「あの人を出しますか?」

「出来れば出したいけど……。」

「わかりました。」

サイアは俺が答えるより先に檻の扉へ近づく。

サイアは檻の鍵穴に手を伸ばすと、鍵穴から氷のつまみが出てきていた。

時計回りに捻ると、かちりと音がすると同時に檻の扉が開いていた。

「お前すごいな。」

「褒めても氷しか出ません。それよりもその人、ご友人について知っていらっしゃるのですか?」

サイアが尋ねると、扉から出てきたムンクらしい男は笑顔で首を縦に振っていた。

「勇者様はここから北西側の端にいます。できればその道中の檻の鍵も開けてください!」

ムンクの男は必死にサイアにしがみついていた。

「サイア、道中の檻開けて行ってくれ。俺とマモルは先に北西の端の方に行く!」

サイアが軽く頷いたのを確認して、俺とマモルは西の端へと向かう。

必死に走っていくと、壁が見えてきた。

「ここか?」

壁の端から横を見ると、俺より少し背が小さいくらいの青年の姿があった。

「助けに来たよ!ヒロくん!」

牢屋の中に向かってマモルが話しかける。

青い髪が上がり、顔が持ち上がる。

そこにいたのは間違いなく俺たちのクラスの学級委員、水橋英雄の姿があった。

ここまで読んでいただ、ありがとうございます。もしこの作品を読んでいただいた後に感想を書いていただければ励みになります。また、どこか漢字や文法の間違いがあった場合、指摘していただけるとありがたいです。

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