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103話『リズラス王国』

「指名手配犯の確保、感謝します。」

兵士たちがユリに礼を言って頭を下げている。

ユリは腕の包帯を押さえながら兵士たちと会話をしていた。

昨日の夜、男が取り出した爆弾で、みんな吹っ飛ばされた。

ユリが泡で爆発を軽減してくれたが、兵士を連れてきていたサイア以外は軽い打撲ができていた。

「あなたたちはこれからリズラス王国へ向かうのでしたっけ?」

「ええ、ろくに眠れてないけど……。」

「では、こちらに来る兵士に頼んで護送を頼んでみます。」

兵士はユリに言い終えると、門の方へと戻っていった。

「ユリ、話終わった?早く食べよ!」

向かいの席のカエデがハムサンドを食べながらユリを誘ってくる。

昨日脅されたとはいえ犯罪者を部屋に入れたことを謝罪して、店主が無償で作ってくれたものだ。

「このハムサンド、結構美味しいね。」

「わかる、レタスがめっちゃ新鮮だ。」

佐々木に適当な感想に答えながら手の持った残りのハムサンドを頬張る。

のんびりと朝食を食べていると、村の門が開いた。

次々と鎧を纏った兵士たちと2台の馬車が入ってきた。

1台の馬車は檻が取り付けられている。

「リッリズラス王国警備隊です!だっ脱獄囚を捕まえにきました!」

普通の馬車の中からオレンジ色の鎧を纏った赤髪の女性が震え声で叫びながら出てきた。

先ほどの兵士が何か話した後、捕えられた犯罪者を他の兵士に運ぶよう命じながら俺たちの元へ向かってきた。

「えっと……あっあなたたちが捕まえてくれたんですね。あっありがとうございました。」

赤髪の女性が震え声で俺たちに頭を下げてきた。

女性の全身を見て、マモルの話を思い出す。

「なあユリ、もしかして……。」

「聞いてみる。」

ユリは食べようとしていたハムサンドをさらに置いて女性の耳元に近づく。

女性の耳元でユリが何か囁くと、赤髪の女性はユリに赤い目を涙目にしながら激しく相槌を打っていた。

「そっそれではあなたたちの護送を私たちが担当します!」

赤髪の女性はそう言いながら男が入った檻付きの馬車に手を向ける。

「部隊長、こっちは囚人用です!」

「すっすみません!」

馬車に乗った兵士が若干驚いた声を上げると、赤髪の女性が涙をこぼしながら何度も頭を下げていた。

「大丈夫なのかあの人?」

「彼女が言っていた。赤崎の脱走を手助けしたのは私だって。」

こっちに戻ってきたユリが返事をする。

馬車の近くで赤髪の女性が馬車の近くで手を振っていた。

馬車に乗り込んで窓から外を眺める。

みんなが乗り込むとすぐに馬車が動き出し、村を出た。

宿屋の店主は村の門の前で見えなくなるまでずっと手を振っていた。

「あっあなた達の馬車は他の部下に持って来させますのでお気になさらず。」

赤髪の女性は震え声で話しながら髪をまとめる。

「そっそれでは自己紹介でもしましょうか?」

赤い長髪をツインテールにした女性は背筋を伸ばして俺たちに目を合わせる。

「私は夏川由梨、あとは右から早川楓、サイア、佐々木霞、蒼山翔です。」

「あっアオヤマさんはアカサキさんから存じ上げております。わっ私はリズラス王国の牢獄警備部隊33番隊部隊長のカアイ・カンランと申します。」

カアイは丁寧に頭を下げながら自己紹介する。

顔を上げた時にはすでに涙目になっていた。

「何か悲しいことでもあったんですか?」

「たっただの流涙症です。おっお気になさらず。」

カアイはそういうと鎧の中からハンカチを取り出して涙を拭っていた。

「それで、あなたが赤崎の脱走を手助けした人なんですね。」

ユリが話しかけると、涙を完全に拭い切ったカアイが静かな表情で頷いた。

「はっはい。かっ彼の脱走をサポートして、彼の神器を渡して逃しました。」

カアイは少し涙を潤わせながらハキハキと話す。

「いくつか聞きたいんですが、なぜあなたは赤崎を助けたのですか?」

ユリが尋ねると、カアイは難しそうな表情を浮かべる。

「わっわかりやすく言うと、おっ王国の判決に気に入らなかったんです。」

カアイが一生懸命頬を膨らませようとしているが、一向に膨らむ様子はなかった。

「罪の内容がやっぱりおかしいってこと?」

「はっはい、王国の近くに住むワイバーンを殺して牢獄なんて納得いきません。ぜっ全力で協力します!」

カアイは目を潤わせながら首を必死に振っていた。

信頼は出来そうだが、頼りにはならない感じがしてくる。

「そろそろリズラス王国に到着します。」

馬車を操る兵士が俺たちに向かって叫ぶ。

窓から外を見るとアサハラ王国よりも高い壁が聳え立っていた。

馬車が門の前にたどり着くと、兵士たちが近づいてきた。

「けっ警備部隊です。もっ門を開けてもらってもいいですか?」

カアイが入り口から顔を出して、兵士に話しかける。

兵士は頷いた後、門の近くにいた兵士に合図をした。

門が開いていき、リズラス王国の中が見えてきた。

馬車が門をくぐり、賑やかな声と笛の音が聞こえてきた。

『ようこそ、リズラス王国へ。』

カアイが静かに、つまらずに呟いた。

ふと窓に視線を向けると、見慣れた鎧の人間が門に近づいてきていた。

「あれ、夢野じゃね?」

俺は近づいてくる夢野に手を振る。

「私たちはここで降りていいですか?」

「かっ構いません。でっでは我々は囚人を連れて行きます。うっ後ろの馬車の人に馬車を返すように言って。」

馬車を操っていた兵士が馬を止めて後ろの俺たちの馬車を動かす兵士に向かって叫ぶ。

俺はすぐに馬車を降りると、夢野の方へ向かっていった。

「2週間ぶりくらいか?」

「そうだな、お前たちの分の宿も予約しておいた。着いてきてくれ。」

「私たちは馬車を置いてから向かうね。」

後ろを向くと、馭者台に乗った佐々木とユリが馬車に乗ったまま道を進んでいった。

馬車を降りてきたらしいカエデとサイアに手を振る。

視線を夢野に戻すと、夢野の背後に小さなローブがいた。

小学生くらいの子供よりも少し小さいくらいだ。

「なあ、後ろのやつ……。」

後ろのローブを指さそうとすると、小さなローブを身に纏った者が俺たちを見ていた。

気になってよく見ようとすると、小さなローブはすぐに路地裏へと入って行った。

「何かいたか?」

後ろを見た夢野が不思議そうに話しかけてくる。

「いや、なんでもない。」

「そうか、じゃあ行くぞ。」

返事を聞いた夢野が案内するように歩き出す。

俺は後ろから来たカエデとサイアと一緒に道を歩いていく。

路地裏に近づいた時に軽く見たが、小さなローブの姿はなかった。


「入るぞ。」

扉をノックされる音と同時に頭の声が聞こえてきた。

俺とゲラは慌てて鞭と弓を置いて立ち上がる。

遅れてパッジが立ちあがろうとしたところで扉が開き、頭がシュピーゲルを担いで入ってきた。

「な、何か御用でしょうか?」

起き上がったパッジが両手をあげて立ち上がる。

数日前、脱走した囚人を逃して軽く叱られたばかりで警戒してしまう。

「落ち着け、説教を連日でするはずないだろ。」

笑いながら頭が椅子に座る。

「まあこの前脱走した囚人関連だろうことは間違いないな。」

頭が笑いながらポンチョの中から水晶を取り出し、机の上に置く。

水晶玉は『アルフ・ワイルズ』と一瞬映ったのち、ローブの映像へと変わった。

「シャクジャ、報告の内容を。」

『先ほど正門より馬車が入りました。板で補強されているようですが、過去にウィーク様が戦ったことのあるサフィア王女の馬車で間違いないかと思います。そしてリズラス王国の警備部隊の馬車から白髪の狼種の獣人と、雷竜の槍使いが確認できました。』

フードをとったシャクジャが少し疲れた表情で報告をする。

汗が頭から滴って若干色気を感じるが今は抑えておく。

「よくやった、速やかに戻ってこい。」

頭が労うと同時に水晶玉からシャクジャの姿が消える。

「おそらく逃げた囚人から情報を聞いてやってきたかもしれない。全員用意を怠るな。」

それだけ言うと、頭は扉を開けて出ていった。

ここまで読んでいただ、ありがとうございます。もしこの作品を読んでいただいた後に感想を書いていただければ励みになります。また、どこか漢字や文法の間違いがあった場合、指摘していただけるとありがたいです。

あと投稿遅刻してしまい申し訳ございません。

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