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100話『退院祝い』

「復活!」

ベッドの上で上半身を起こしたマモルが笑顔を浮かべる。

俺とタツヤはマモルの伸ばした両手にハイタッチした。

赤崎守は高校1年生の頃から他の奴らと一緒に騒いでいた仲間の1人だ。

「やあ赤崎、もう大丈夫か?」

救護室のドアを開けてパーズ王国から転移してきたダイキが入ってくる。

「あ、ダイキも久しぶりだね。」

マモル笑顔で笑いながら手を振る。

今のマモルは魚の胃袋に入っていたせいか、ところどころの日焼けしていた皮膚が漂白されて、顔にもパンダみたいに左目の周りに白い跡が残っていた。

ただそれ以外の外傷はあまりない。

「よいしょ……ッと!」

赤崎がベッドから降りようとした瞬間、勢いよく前のめりに倒れ込む。

咄嗟に腕を伸ばして赤崎を受け止める。

「大丈夫じゃなさそうだな。」

「というか、3日位魚の胃の中にいたから、何も食べてない。」

赤崎の話を聞いて、なんとなくタツヤと顔を見合わせる。

「多分、栄養失調じゃないか?」

俺が尋ねると、タツヤが相槌を打つ。

「よし、じゃあうまいもん食いに行こう!金はあるから!」

ダイキはそう言いながらカバンから袋を取り出す。

明らかに俺やタツヤの財布の3倍はある。

「んで、どこに行く?美味い店がどこにあるかわからないぞ?」

「そこはもう頼んである。」

俺の質問にタツヤが指を鳴らす。

同時に救護室の扉を開けてサイアが入ってきた。

「こちらです。」

サイアはタツヤの元に歩み寄って、メモ帳を手渡してきた。

タツヤは渡されたメモ帳をペラペラとめくってマモルに見せる。

「なんだそれ?」

「女子メンが作ってたうまい店リストだ。見せてもらおうと思ったけど、ユリが見せてくれなかったからサイアに手伝ってもらった。」

俺にもメモを見せながらタツヤが自慢げに話す。

メモの中には絵だけでもわかるうまそうな料理が描かれていた。

「みんなはどんな店がいい?」

「やっぱ栄養つけるなら肉じゃないか?」

「スープついてる店とかもおすすめだよ。」

タツヤの質問に、俺とダイキが答える。

意見を聞いたタツヤはすぐにメモをめくっていく。

少しして、笑みを向けながらメモを俺たちに見せてきた。

「ピッタリな店があった。」


「おういらっしゃい!」

頭から光を放つマッチョな店主が大声で俺たちに叫ぶ。

店の中はとても騒がしく、それくらい大きくないと聞こえないのだろう。

横にいるサイアは無表情で耳を押さえていた。

「おっちゃん!5名で行けるか?」

「おう、さっき空いたばかりだ!案内しろ!」

店主が叫ぶと、店員がどうぞどうぞと空いている席に案内する。

ダイキの横に俺が座ると、反対側の席にサイア、タツヤ、マモルの順番に座った。

「よし全員何頼むか選んでこう!」

タツヤがノリノリで3枚のメニューの書かれた板をマモル、サイア、ダイキに渡していく。

俺はダイキと一緒にメニュー表を覗き込んで見ていく。

「俺はこのステーキにしようかな?めっちゃ美味そうだし。」

「じゃあ俺もステーキ、あとサラダとパンもつけよ。」

俺とダイキはすぐに決めて反対側の席を見る。

タツヤとマモルが話している横で、サイアがメニュー表を裏返していた。

「もう選んだのか?」

「お水で。」

サイアの返答を聞いた俺は同じように横で驚いているダイキと顔を合わせる。

「もうちょっと食べたほうがいいんじゃないか!?」

「カエデだって12歳の時はめっちゃ食べてたぞ!」

ダイキと俺で説得しようとするが、サイアは少し困惑したような表情を浮かべていた。

「5人分のパンとサラダとステーキ!あとこいつにスープも頼む!」

タツヤが人数分の注文をした後、席の横に立っていた店員が厨房へと入っていった。

周囲は騒がしいが、少しは緩んだ空気になった。

「まあ完治とまでは言わないけどマモルの退院祝いだ!」

笑いながらタツヤが言うと俺とダイキ、サイアがマモルに向かって拍手をする。

マモルは少し照れくさそうに笑いながら頭を下げる。

「まあ特に用意してないし、料理来るまでの待ち時間はこれでもしようぜ。」

タツヤは笑いながらカバンからトランプを取り出して、すぐさまシャッフルして5人分に分けた。

俺は10のペアだけ真ん中に置いてみんなが用意し終わるのを待った。

「そういえば、リズラス王国の牢獄に他の仲間がいるんだよな?」

俺はタツヤからカードを取ってもう1枚と共に真ん中に置いているマモルに話しかける。

マモルは頷きながら俺にカードを差し出す。

ジャックのペアを揃ったから真ん中におきながらダイキに持ってるカードを近づける。

「みんなは生きているのか?」

ダイキが揃った2枚を真ん中に置きながらマモルに尋ねる。

ダイキから引いたサイアは無言で一枚咥えたままタツヤにカードを近づけた。

「僕はヒロくんと後藤くんと同じ牢獄に入れられていた。」

マモルは俺たちの質問に答えながらタツヤから引いたカードを手持ちに加える。

引いたけど全く揃わないままダイキに近づけた。

「牢獄は男女で分かれていて、治安はだいぶ悪かった。んで、一番驚いたのは看守が明らかに人間じゃないことだ。」

「人間じゃない?」

タツヤが不思議そうに話しながらサイアからカードを引いていた。

「うん、なんか木製の鎧を着込んだやつが看守をしてる。抵抗する囚人と喧嘩しているのを見たけど、動きが人間じゃない。」

マモルが震えながら俺にカードを近づけた。

2枚揃ったカードを真ん中に置きながら話を聞く。

タツヤがサイアから受け取ったカードを真ん中に置きながらマモルに視線を送る。

「多分、植物系のモンスターか何かだと思う。詳しく明日話すよ。」

「なるほど、牢獄から脱出する時のルートも明日聞こう。今はこれに集中しよう。」

タツヤは少し安堵の息を漏らしながら安堵の表情を浮かべる。

少し真剣な表情のマモルカードを引くとジョーカーが回ってきた。

一瞬の表情で察したのか、ダイキが俺に伸ばす手が少し震えていた。

しばらく無言で手に汗握るババ抜きが行われた。

最初にダイキが上がり、次にサイア、俺の順番に上がって、タツヤとマモルの一騎打ちになった。

「さあ、どっちを引く?」

タツヤが震える声でマモルに2枚のカードを見せる。

マモルがどっちを引こうか考えていると、マッチョな店主が5枚のステーキを台車付きのトレーで運んできた。

トレーに乗った100グラムとかじゃなくて多分500グラムくらいあるステーキに、マモルとタツヤも呆然としていた。

「いや、流石にこの量はいけるのか?」

「お前ら、飯はしっかり食わねえとダメだ。」

マッチョな店主が笑いながらテーブルにステーキを次々と置いていく。

すぐに真ん中に置いてあるトランプをかき集めてステーキを置くスペースを作った。

「人間獣人、男性女性関係なく体を強くするためには食わなきゃならねえ。そういう鋭気を養えるのがこの俺の店ってわけだ!」

店主が笑いながら親指を立てる。

「獣人もなんですね。」

「おう、昔の話になるが、牛種の獣人は男女揃っていい体つきをしている。そらもうボンキュッボンよ。あの美しい肉体を見たら差別とかどうでも良くなるぞ。」

店主はそう笑いながら5枚のステーキの乗った皿を全て置いて厨房へと戻っていった。

「あ、勝った。」

少し呆気に取られているタツヤからカード引いたマモルが2枚のペアを俺に渡しながら呟いていた。

「よし、やけ食いするか。」

タツヤは俺にジョーカーを渡した後、すぐに分厚い肉にナイフを入れていた。

俺も続いて切り分けて肉を口に放り込む。

口の中にうまい肉の汁が広がっていく。

みんな口を動かした後、俺とタツヤとダイキとマモルは顔を見合わせた。

「味が……濃い。」

「濃いよ……。」

「濃いな……。」

「濃いね……。」

俺を含めた4人の感想が奇跡的に揃った。

「なんか、ジューシーで美味しいのはわかる。ただしょっぱ過ぎないか?」

「めっちゃしょっぱい……。」

ダイキとタツヤが困惑しながら肉を切って食っていく。

「ちょっとこれ食い切れる自信ないかも……。」

マモルが笑いながら机の上のスープを飲んだ。

「あ、このスープは普通に美味しい。」

マモルは笑いながらスープを飲んでいく。

サイアに視線を向けると、黙々とステーキを切っては頬張るを繰り返していた。

「とりあえず、食えるだけ食おう。」

タツヤが提案すると、各々目の前の肉を食べ始めた。

食べ終わる頃にはサイア以外はすでに吐きそうになっていた。

「結構多かったな。」

「俺……まだ18だぞ……あれくらい食べれるはず……。」

ダイキが完食し終わった皿を眺めながら呟く。

前を向くと、満足そうにお腹をさするマモルと必死で口を押さえているタツヤの姿があった。

「ダイキ、勘定たのむ。」

すぐに俺はタツヤを支えて周囲を見回す。

すぐにトイレらしき扉に近づいた瞬間、靴に何か流動系のものがかかり始めていた。

騒がしい店内に悲鳴が混じり、さらに騒がしくなった。

ここまで読んでいただ、ありがとうございます。もしこの作品を読んでいただいた後に感想を書いていただければ励みになります。また、どこか漢字や文法の間違いがあった場合、指摘していただけるとありがたいです。

描き始めてようやく100話に到達できたのは少し嬉しく思います。

また、作者の一身上の都合により、次に投稿できるのがいつかわからない状況ではなります。

楽しみにしてくれている方々には謝罪いたします。

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