十四歳だから恋がしたい!
「私、恋がしたい」
「俺に言われても」
中学二年生の半分は性欲でできている。俺はそう思う。残り半分は何かって? そこはいわゆる個性って奴が発揮される部分だ。人によって構成成分は違う。俺の目の前に立つ女子、高梨にとっては、どうやら残り五十パーセントは恋愛欲求だったようだ。
「だってあんたにしか言えないもん。ね、キスしよ」
「今ここで? 急だな」
やれやれ、と言わんばかりに首を振ってみるが、突然の提案に心臓が飛び出そうなほど驚いている。男というのは常にハードボイルドを気取って生きているのだ。少なくとも、俺はそうありたい。
「私だって十四歳だよ? キスくらいしたい!」
「なら初めに彼氏を募集するところから段階を踏んでだな……」
この女は俺の煮え切らない態度に堪忍袋の緒が切れたようで、無理矢理唇を合わせてきた。嘘だろ、俺の初めてがこんな形で? 嬉しいのかそうじゃないのか、よくわからない。恐らく、俺の半分は喜んでいることだろう。
「……」
「高梨。俺のこと、好き?」
真っ赤な顔を離して俯く彼女に、俺は尋ねた。現在の最重要確認事項だ。高梨はすぐには答えなかった。そのまま暫く時間が経った。よくわかんない、という回答が聞こえた。俺が好きでしてくれたんじゃないんだな。俺の半分以上、いや、俺の全てが、悲しい感情に支配された。