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第2章 一日目 014

 磨き上げられた厚い木板の階段を登り、ペンションいさり火の二階へと出る。どうやらこの建物は横に長い長方形で、階段はその中央付近にあるらしい。出たところが廊下になっていて、右と左へ続いていた。角から覗いてみれば、左右どちらも同じつくりで、廊下の両隣にそれぞれの部屋のドアが並んでいる。

「俺らの部屋は202やったな」

 登ってきた階段の正面のドアには207のプレートが張られ、その右隣に見えるドアには206、左に見えるドアには208のプレートが張られている。

「じゃあ、こっちですかね」

 廊下を右に進んでいくと突き当たりの部屋は、201と204だった。

「あれ違ったみたいですね」

「ああ、階段側が若い数字やったんやな」

 二人して回れ右をし、来た道を戻ると、階段側の部屋は201、そして洗面場と階段を通り過ぎ、 我らが202号室があり、203号室、そして突き当たりに外階段へ出るドアがあった。203の真向かいは高遠さんの209号室だ。

「僕たちの部屋は2階の202ですね?」

 わかり切ったことを改めて確認すると、三輪さんも重々しくうなずき、くじらのキーホルダーがついた鍵を鍵穴へと差し込んだ。右へ捻ると「カチリッ」と思いがけず大きな音が廊下に響き渡る。


「うわあ」

 宿の部屋に初めて入る時は、いつも子供じみた歓声が出てしまう。部屋の大きさは十二畳ぐらいだろうか。木材をふんだんに使った床と壁に、白い木製サッシの大きな窓が、とても明るく清潔な雰囲気を醸し出していた。

 部屋の入り口横にトイレと作りつけのクローゼットがあり、室内設備は二つのシングルベッドと、窓際の木製テーブル、藤製の椅子が二脚に、小さな冷蔵庫が一つと、シンプルかつ実用的なつくりで、居心地は良さそうだ。

「気持ちの良い部屋ですね!」

 僕はレースのカーテンを開けてみたが、残念ながら、そこにバルコニーはなかった。木製サッシの窓の外には、緑豊かな深く大きい山の連なりが見える。どうやらこちらの並びの部屋はペンションの裏側、オーシャンビューとは反対の方角で、バルコニーも設置されていないらしい。少し残念……。

 ふっくらと整えられたベッドの上に倒れ込む。白くパリッとしたシーツの触感が心地よい。今の時刻は何時だろうか。夕食まで一眠りすることにしよう。気がつけば、隣のベッドから三輪さんのゴーっというイビキが響いている。スマホのアラームを午後五時三十分に合わせたところで、僕の意識はあっという間に途切れたのだった。


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