告白~confession~
「実はね、高校1年の冬から両親がアメリカに行ってて、今は私が1人で住んでるの それでね、最初の方はお母さんとお父さんに私だって1人で出来るよって言ったからしっかりとやってたんだけどね、春休みの中盤くらいからなまけちゃって、自炊もしなくなったし、ゴミ出しも行かなくなったんだ」
「最初の方はしっかりとしてたのか、お父さんとお母さんは帰ってこないのか?」
ふと出てきた疑問を春香に言ってみる。
「一度だけ夏に帰ってくる予定だったのに帰ってこれなくなってさ、そんな感じでこんな感じなの」
「どうして、両親とアメリカに行かなかったんだ? 俺だったら喜んでついていくけどなぁ~」
春香は真剣な眼差しでこっちを見てくる。
「それは桐谷君が何も考えていないからだよ。アメリカに行ったら真理加ちゃんたちと今みたいに遊べてないんだよ! それに、今、留まったからこうやって桐谷君ともいられるじゃない?」
春香はなんでそんなことを言うのかと言わんばかりの顔を見せる。
「そうだな」
俺はすまないと思いつつ、そう言う。
「それに、それに、私、筆記の英語は大丈夫だけど英会話なんて無理だし、あっちに行ったら絶対周りからのけ者にされちゃうよ」
「どうして、そんなこと言い切れるんや?? 春香はかわいいからモテると思うけどな」
「だって、私、細身だし、料理だってうまくないし、髪だってストレートじゃないもん」
俺は春香が思う自分の短所の半分は取り柄ではないかと思うのだが、
「アメリカ人と日本人の好みは違うんだよ! そんなわけもあって行きたくなかったの!」
「へぇー そうだったのか」
俺が知らないことを春香はよく知っていて、驚いてしまう。
「私だって今、好きでこんなだらしない生活してるんじゃないし、桐谷君にはお父さんとお母さんがいて、普通に目標持って部活して家に帰ってっていう感じの当たり前の生活してると思うけど、両親がいて当然じゃないんだからね、そんなこと当たり前じゃないんだよ。」
「そうだね、このあり様を見ると深くそう思うよ」
俺はこのゴミであふれたこの状況を見て、俺が当たり前だと思って過ごしている日常が当たり前ではないと改めて感じさせられる。そして、春香のこの生活するための最低限もできていない状況から推察するとどうすればいいか自ずと答えが出る。
「俺、今日泊まるわ」
「はっ、な、何考えてるのよ。親がいないからって、そんなことダメに決まってるじゃない」
「何って、何だ」
「は~ぁ、惚けてもダメなものはダメなんだからね!昨日から付き合い始めたばかりなのに早すぎるのよ!」
「何を勘違いしてるんだ?」
春香はどうやら勘違いをしているらしい。俺は春香のこのあふれたゴミを片付けようと言ったつもりだったのだが、春香は脱線してしまっているらしい。
「俺がこのゴミの山、片付けてやるって言ってるんだよ」
「あっ、そうなの、それならそうと言ってくれればいいのに、いきなり桐谷君が泊まるっていうから私、勘違いしちゃった」
「春香はどう勘違いしたんだよ」
俺は大体こうだろうという予想が付いている上で春香に聞いてみる。
「どうって、どうもこうもないよ」
春香は恥じらいながら顔を赤らめる。その姿は桜のつぼみのようだった。
「んー、じゃあ俺が何をすると思っとったんや?教えてくれん!」
「もう、しつこいよ。 桐谷君のそういうところ嫌い」
形勢が逆転してしまう、そう思った俺はつい、いつも心に秘めていたことを言ってみる。
「じゃあ、俺の事を誠也って呼んでくれるなら許してやるよ」
「えーと、今はまだ無理かな」
何故か、拒む春香に対して、俺はもっと聞いてみる。
「どうして、じゃあ許さんよ」
「まだ、時期じゃないっていうか、タイミングじゃないっていうか、じゃあ、この家をキレイにして、また、真理加ちゃんたちと遊べるような感じになったら誠也って呼ぶよ」
どうしてか、ゴミの片づけに対して強制的な感じが加わってしまった。
「わかったよ」
「但し、俺1人でやるわけじゃないからな」
俺は条件付きの了承という形で春香に言う。
「ありがとう」
春香は赤い顔のまま語尾を強くそう言った。
ちょっと微妙なところで終わってしまいましたが、分量的にここまでで一区切りということでお願いします。
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