春香とのお昼休み
楽しくお弁当を食べ終わるとタイミングを見計らったようにこの教室に向かう者が現れた。
いったい、俺と春香はどう切り抜けるのか?
俺はお弁当を食べ終わり、程なくして彼女も食べ終わった。
ごちそうさまと食事を終わったことを伝え、席をゆっくりと立ち、背伸びをする。
その時、俺は斜め横の彼女のボディーラインに見とれてしまった。
数秒で視線を外し、見とれていたことに彼女にはバレてないことを願った。
春香は教室内をゆっくりと回りながら俺に質問した。
「桐谷君は今まで、何人とお付き合いしたの?私、気になるなぁ~」
唐突な質問であるが、俺は平然を装った。
「それを聞くのか、まぁ、1人だけだよ。中2の頃に勢いで」
俺はその頃のことをかすかに思い出す。
中学校の頃は部活の面でも、勉強の面でも何でも一通りうまくいっていた。
調子に乗った俺は席でたまたま隣になった女子に「おはよう」としか言っていなかったが、告った。今、思うと羞恥心があふれ出しているし、春香も同じだったことを今更に思う。
「春香と同じかな!」
「私と同じだって!? 恋愛経験多い風にみせてるのになぁ なにが同じなの??」
春香は失礼なやつだというような下目遣いでこちらを見ている。
それを見て俺は思わず続けた。
「俺の場合は少しの予兆しか見せずに告ったし、春香の場合は、俺に告る前に何も
予兆を見せなかっただろ?」
「例えば、声かけてくるとかさぁ」
つい、俺が中学生のころを思い出して言った。
「そういえば、そうだったね」
「桐谷君の場合の予兆がそれだったの?」
春香は鋭く突いてくる。
「みたいだね!」
どうやら図星がバレバレであったらしい。
春香は微笑していた。
「けど、私は違うよ!」
俺の考えを正面から「なぜだ」と返せないほどの勢いをもって否定した。
しかし、俺は立ち向かった。
「どこが違うんだ?」
春香はスカートを揺らしながら近づいてきた。
俺の正面から左横へ移動する。
そして、少し、しゃんで俺の耳元で言った。
「ヒ・ミ・ツ~!!」
言葉を発するごとに間をおき、俺の心臓の鼓動を確かめるかのようにそう言った。
俺は何事かわからない圧に負け動くことができず、春香が動くのを待つしかなかった。
すると、春香が立つ。俺はなんとなくだが安堵した。
春香は左横から俺の真後ろへ歩みを進める。
真後ろに来るとそこで止まった。
俺が振り返ろうと思った時、
「絶対に前向いててね!」
春香に制止されてしまう。
思わずしっかりと前を見た。
「どうしたんだ?」
「そういえば、さぁ~」
「ちょっと、静かに」
またもや、春香に制止される。
春香はゆっくり1歩踏み出す。
両手を前に出し、双方の手を俺の首元を沿わせ、
ゆっくりと手を組み、俺によしかかった。
春香の分の思いが俺に加わったせいか、普通は重いと感じるはずだと思っていたが、まるで重力が無くなったかのように感じ、額が熱を帯びている。
春香の吐息が聞こえたかと思うと、春香の顔が俺のこめかみをコツンとついた。
「このままね」
今までにないほどの距離間に俺は思わず、蛇ににらまれているねずみのように微動だにしなかった。
その時、足音が廊下から聞こえてきた。
この足音のスパンから察するに走っていることと、複数人いるということがわかった。
春香もそれがわかったらしく慌てて廊下の方を向いた。
「こっちにくるのかな?」
春香は控えめにというか小さな声で俺に聞いた。
「昨日、杉谷を振り切ったんだから、大丈夫だろ?」
「昨日とは全く別だよ」
「もしかしたら、入ってくるかもしれないよ?」
「私たち追い込まれてるんだよ?」
「そんなことわかってるよ」
どんどん足音が近くなってくるとともに足音のスパンが短くなる。
俺は多分この教室に入るのだろうと察した。
だが、しかし、全く俺は焦らなかった。
それとは対照的に春香はとても焦っているのを感じた。
「どうしよう??」
春香が思わず、声を出し、袖を掴んできた。
「大丈夫だから、静かにしてればいい」
今度は俺が春香の耳元でそう言った。
ドアを開けようとする音が聞こえたが、ドアは開かなかった。
1人の男子生徒の声が聞こえた。
「あれ? 開いてないぞ!」
「じゃあ、後ろのドアは?」
春香は更に強く袖をつかんでいる。
このままの状態を見られれば、気まずくなること間違えなしだと感じた。
少しの間の足音の後
「こっちもダメだ」
後ろのドアが開くかどうか確認した後、閉まっていることに気が付いたらしい。
春香は100%の安全を確信したらしく、袖を離した。
外から何か聞こえてきた。
「これがほんとの内側のオートロックってやつだな」
「なんだよそれ、ずっと開かねぇじゃん」
どうやら教室の外ではつまらん会話に発展しているらしい
「鍵あれば別なんだけどな」
「鍵をもらって来ましょうか?」
「いや、後藤君その必要はない」
「放課後、また集まることにするから、一時解散だ」
「わかりました」
どうやら、外の連中は解散したようだった。それを聞いて春香はしゃべりたがっているらしい。
まだ、確実にいなくなったわけではないため、
それを見て俺は口元に人差し指を持ってきた。
なぜか春香は首を横に振った。
「待て!」
春香に聞こえるか聞こえないほどの声で聞こえた。半ば口を読んでくれれば助かると思って言ったところもある。
数秒後、3人の足音が聞こえなくなった。
「いいぞ、どうした?」
「なんで、ドアが閉まってたの??」
春香は俺に崖を滑る勢いで問い詰めてきた。
「私聞いてないよ!!!」
俺は「閉めたよ」なんて言ってなかった。
「いつ閉めたの?」
頬を膨らませ、少し怒っているように聞いてきた。
俺は流石に悪いことをしたと思い始めた。
「えっと、椅子並べ終わった後かな、邪魔されたくなかったし」
「念のため」
「誰かが来ること知ってたの?」
「知らんかったけど、春香の大丈夫が信用できなかったし」
「それひどいよ」
「私ハラハラしたんだよ、それならそうと言ってくれてもいいじゃない」
「ひどいよ」
不機嫌そうに春香は同じことをもう一度言った。
「春香なら俺のこと見てただろうし、閉めてたのも見てたかなと思って」
俺は本人が納得しそうなことを言っておいて、落ちつかせようとか考えた。
「見てないよ!」
春香は納得せず、不機嫌さが増した。
俺は頬をかいた。
春香の不機嫌さは昼休みの間中続いた。
読んで頂いてありがとうございます。
少し日が開いてしまい申し訳ありません...
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