俺と春香
リビングのゴミの片付けが終わり、22時を超えていた。
ここで、玄関のゴミ袋を処理することになった。
春香のことを考える俺は最後に行動に出た。
やっと、リビングを片付け終えた。
その時、壁の時計は22時を回ったことを示していた。
俺はなんとか泊まる必要はなさそうであると思い安心した。
しかし、玄関を見ると大きなゴミ袋の数が9つあり、俺はそれを見てため息を漏らした。
「春香、可燃ゴミ出すのはいつ?」
「え~とねぇ...」
春香は頭に手を当て笑っていた、それが次第に髪を撫ではじめ苦笑いとなった。
「ゴミ出しもしてなかったからわかるわけがないのか?」
「ひどいよぉ、その言い方!」
春香は少し声のトーンを上げ反論した。
「俺の町会は明日だけどね、スマホで調べてみれば」
俺たちが日々持っているスマホは便利で調べようと思ったことは
すぐに調べることができ、春香はすぐに自分の町会を調べ始めた。
「私のところも明日だった」
「了解、じゃあ、ゴミ出してこよう」
春香はいかにも面倒くさいという顔で俺に訴えてきた。
ただここで、変な行動に出ないのが春香のいい所だと思った。
可燃ゴミの数を数えると7つが可燃ゴミであったため、
一度では到底運べないと思ったことと春香の駄々こねがあったことで
3回に分けて運ぶことにした。
「じゃあ、春香はなるべく軽そうなやつ持って」
「じゃあ、これで」
そういって、春香はプリント類が一杯入った重そうなものを取った。
春香が持ちあげる前に止めさせたおかげで後ろには倒れなくて済んだ。
俺はそれを見てわざとなのかというツッコミを入れたくなったが耐えた。
「春香はこれを持って」
そう言って俺が思った一番軽いゴミ袋を春香に預けた。
それでも春香はちょっとした愚痴を言っていた。
「じゃあ行きますか」
俺はドアのノブを開けようとした時、頭にうっすらと杉谷のことが浮かんできた。
22時を回ってるし、そんな時間に杉谷が外にはいないと確信してドアを開けた。
「ゴミステーションは左、それとも右か?」
「あっちだよ」
そう言って春香は右側を指さした。杉谷の家の反対方向で良かったと胸の中で感じた。
歩き出すと、俺は一応こういう時のお約束通り車道側を歩いていた。俺と春香の距離は重い荷物を持っているということもあり、離れたり近づいたりを繰り返していた。
少し遠いものの家から程ほどの距離にゴミステーションがあった。
「ここだよ」
少し先を歩いていた俺を引き留め、春香は指さしていた。
ステーションはゴミ1つなく空であった。
「俺たちが先着なのか」
「そうみたいだね!!」
春香は次の人のことを考え、律儀に一番奥にゴミを置いた。
「春香は偉いね」
俺の一言に春香は口元を緩ませて、当然というような顔をした。
「あと、2往復半か~、春香は大丈夫か」
「これくらいなら大丈夫だよ」
「じゃあ、戻るぞ」
「それにしても、ここら辺はちょっと暗いな」
「そうだね、街灯の数も少ないもんね」
ちょっとしたことを話しながら家に着いた。
春香の額の汗に何とも言えない感情が湧いてきた。
そんなことを心にとめつつ、同じ道を1往復し、残る可燃ゴミは3つとなった。
「残りはやっと3つか、けど、どれも重そうだ」
「もっと計画的に運べばよかったね」
比較的軽いものを持って2往復した春香がそう言った。
「まぁ、しゃあないし、どれか1つ持って、俺は2つ持つわ」
「え~、なんかもうしわけないよぉ~」
「あんまり、そう思ってなさそうだけどな」
「思ってるよ!」
そう言いながら春香は俺の肩を叩いた。
「少しは加減してくれよ、ちょっと痛かったぞ!」
「ごめ~んね」
春香は笑いながら一応の詫びをいれた。
俺はそれを横目にドアを開けて外に出た。春香も急いでゴミを持って外に出た。
もう慣れたと感じたのか、ゴミステーションに行くまでの道のりが短いと感じた。
俺はゴミステーションにつき、2つのゴミ袋を置いた。
「よし、終わったな」
俺は夜遅くなったということもあり、春香が聞こえるくらいの声でそう言った。
「私の家に着くまでまだ終わってないよ」
「先生が言いそうなこと言うなよ」
俺と春香はそんなことをいいながら笑いあった。
ふと空を見て見ると新月のせいなのか月が見えなかった代わりに
星がちらほら見えた。
俺が空を見ているのに春香も気づき、春香も空を見上げた。
「あんまり、見えないね」
俺が言ってしまいそうなことを春香が言った。
「そんなこと言うなよ、女子ならもっと言うことあるだろ」
「だって、満天の星空でもないし、月がある空でもないじゃん」
「なんか、春香って意外と男らしいところがあるのかもな」
俺は思ったことを春香にぶつけてみた。
「え~今更?」
春香は照れたような、やけているような顔をしたがほんのわずかな街灯の光と
星の光で詳細には判別できなかった。
「だって、学校だともっと...可愛らしいから」
俺は口にすることがはばかられているような言葉を言うように言った。
「じゃあ、今は可愛くないってこと?」
それに意地が悪い春香が攻撃してくる。
「なんかショック」
「そんなこと言ってないじゃん」
「なんか星の光でめっちゃ...可愛く見える」
俺は語尾に近づくにつれて声が籠っていき最後はほとんど声として出ていなかった。
「顔赤いよ!」
その短い言葉に俺の顔は沸点まで上昇した。
「夕日のせいだよ」
「夕日のない時間なんだけどな~」
「こういう時は、夕日があるのが定番だろ」
「夕日があるから赤かったっていう定番の!」
俺は考えもなしに抵抗したため余計に春香が攻勢になり、
余裕を見せた春香は女子らしくもなくお腹を抱え笑っていた。
「もういい、俺、先に帰ってる」
俺は分の悪さを考え逃げようとした。
「私の家なんですけど~」
春香にはもっともなツッコミを入れられたが、俺は顔が赤いことをこれ以上
見られたくなかったため春香と顔を合わせることができなかった。
春香は小走りで俺に追いつき、俺が歩くスピードを遅めたこともあり、
二人の歩幅は整った。
そのとき、俺と春香はどっちが先に話を振るかで
頭がいっぱいになっていたため嫌な沈黙が続いた。
そして俺は自分が男であるということを自分に言い聞かせて1つの行動に出た。
俺は無言で、
春香の手をそっと握った。
握った瞬間、温かく柔らかすぎる感触が俺の手を包んだ。
握ったときには春香の肩がピクッと上げたことはわかったが、
春香は拒もうとはせず受け入れた。
俺のちっぽけな勇気に結果が出た。
家の前に行くまでの数十秒はずっと手をつないでいて、俺は鼓動が早くなったが
この行動が最適解であったことを自負していた。
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