春香の対応
杉谷をまいて、ことの事情を話してリビングに行く。
やっとの腹ごしらえ中に思わぬ出来事が...
俺のネガティブな発言で春香のテンションが
こんな時に回覧板を持ってくるタイミングの悪い杉谷
俺は玄関で春香とやり取りをした後、共にリビングへ向かった。
俺は買ってきたものを持って春香の目の前に座った。
机はしっかりとキレイになっていたし、春香がコンビニで
買ってきた弁当とチキンから湯気が出て、美味しそうであった。
「やれば、キレイになるじゃん」
この机の光景を見て典型フレーズを言った。
「私を見くびらないでよね!」
春香の無邪気な笑顔に口元が緩んでしまう。
「そうだ、洗面所どこ?」
「どうして?」
「手を洗いたいなぁと思ってさ
ご飯食べる前は当然だろ」
「そこのキッチンで石鹸あるから、そこで洗って」
「了解!」
「じゃあ、お先に頂きます!!」
手をあわせ、しっかりといただきますを言う春香が鏡越しに見えた。
俺はそれに感心する。
確かに、当然と言えば当然だが、俺は高校生になってから、
「いただきます」を言わない方が多くなってしまっていた。
「春香は偉いなぁ~」
キッチンで手を洗いながら俺はそう言った。
「いただきますくらい当然だよ!!」
「あっ、お箸がない!」
そう言って、春香はキッチンの方へ取りに来た。
「する前に気づけよ!」
「そうだね! 」
俺はこんな会話ができて嬉しかった。
心の中を見ずとも少し前から心臓の鼓動が異常なのを俺は感じていた。
春香は茶色の食器棚から箸を取った。
しかも、ちゃんと気が利いていて、俺の分も出してくれた。
「はい、これ桐谷君の!」
「ありがとう、春香は気が利くね」
「気づいてくれてうれしいよ!」
満面の笑みで否定などしないオーラしかなった。
「そこは謙遜しないとだめでしょ!」
「そうだね!!」
そんなことを言って、コンビニ弁当などが広げられた机の前に
二人とも座った。
この正面同士で向き合うのは初めてであり、
俺はテレにテレまくった。
やっぱり、なんといっても春香さんが可愛すぎた。
「じゃあ、気を取り直していただきます。」
「いただきます」
少し遅れて俺もそう言ってコンビニ弁当のパックを開ける。
少し、心が落ち着き、我に返る。
この時間何を話そう?
ふと、そう思った。
すると、春香から話がふられる。
「私って、かわいい?」
「うん、かわいいと思うよ」
俺の口元が少し緩んでしまう。
春香もそれを見逃さなかった。
「どんなところが?」
春香がもっと詳しく聞こうと深掘が入る。
「さっき、箸ないままご飯食べようとしたところとかかな」
「え~、そういうところはいいんだよ!!」
「目元がかわいいとか、なんかないの?」
俺はハンバーグを口に入れ、なくなってから答えた。
その間、春香は俺をじっと見ていた。
「笑顔がかわいいところ?」
「じゃあ、笑顔じゃないとかわいくないの?」
「そういうことじゃないけど」
「けど?」
春香も興味本位からか意地悪で、語尾に敏感になっていた。
「一番って言われたらそこかな」
「俺は春香の他人を笑顔にする笑顔に憧れてるよ」
「桐谷君にはできませ~ん!」
「どうしてさ?」
「私の専売特許だも~ん」
春香はテンションが上がっていた。
俺に止めることができないと悟らせるくらいに、
俺はミニトマトをつまみながらそう思った。
「意地わるだな~」
「私はそういう女の子なんです~」
「今更、後悔したって遅いよ~!」
「俺は後悔してないから、後悔するのは春香かもよ」
「傍から見たら俺と春香だと明らか釣り合ってないし」
「そんなことないもん!」
春香が声のトーンを変え、すぐさま強く否定した。
「そんなこと言ったらダメ、絶対!」
再び、春香は否定した。俺は空気を壊してしまったとすぐに感じた。
目の前の春香はさっきまでの生き生きとした春香ではなくなってしまった。
申し訳ない思いと、この空気をどうにかしなければならないという
責任が伸し掛かってくる。
ピンポーン、ピンポーン
ここで、インターホンが鳴った。
「桐谷君でてきてよ」
春香にそう言われ、ここは春香の家であるというツッコミを
心の中で入れるも空気を壊してしまった償いと思い、
インターホンの受話器を取る。
「はい、」
インターホンの受話器の映像を見る。
すると、杉谷が映っていた。
「本田さん、回覧板持ってきたよ!」
俺は咄嗟に受話器を戻した。
「春香来て! 杉谷が来た!」
「杉谷君が!」
「俺、はい、って言っちゃった(汗)」
「どうしよう!」
俺は焦っていた。
しかし、春香は受話器の映像を見てすぐに対応した。
「静かにしててね!」
春香はそう言って口元で人差し指を立てる。
俺はこの至近距離でのやり取りに思わず胸の音が大きくなってしまったのを感じた。
「どうしたの、杉谷君?」
「どうしたって、回覧板だって」
「わかったよ、じゃあ、悪いけどドアの前に立てかけておいてくれるかな」
「けど、取る紙とか説明しんなんことあるけど、いいのか?」
「うん、いいよ、取る紙は枚数でわかるから、今、手が離せなくてごめんね」
「わかった、じゃあ、おいていくけど、取り忘れるなよ!」
「うん、ありがとう」
淡々としたやり取りのおかげで、春香と俺は危機から切り抜けた。
春香も安堵の表情を見せた。
俺も本当に冷や冷やしていた。
至近距離にいた春香とバレるのではないかという思いのせいで、
「出る前にモニターくらい見てよね!」
「知らない人だったらどうするの?」
「いや、俺にとってはほとんど誰も知らねぇし」
「今の場合、知ってる人だからまずかったんだろ」
「確かに、そうだけどね...」
春香は言葉を詰まらせていた。
「まぁ、やってしまったことはしょうがいということで!」
「あの残り、食べよう!」
そう言って春香は机を指さした。
俺は頷いて春香と一緒に机に向かった。
少し長くなってしまいました。
読んでいただいて光栄です。
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