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王太子殿下は小説みたいな恋がしたい  作者: 紅花うさぎ


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97.お茶会は賑やかに

 春の暖かな日差しを感じる午後、庭園でのティータイム。目の前に広がる美しいマーガレット畑は今が見頃だ。白い花に青い空、緑の生垣……うーん、最高に素敵!!


 ティータイムには欠かせないお菓子の用意も万全だ。真っ白なテーブルクロスのかけられた丸テーブルの上には、フィナンシェやロールケーキなど様々なお菓子が並んでいる。


 これだけ最高の状況がそろっているにも関わらず、お茶の雰囲気は険悪だ。


「アリス様、これお食べになりました? 美味しいですわよ」


「そんなのよりアリー、これ食べてよ」


 ははっ。

 キャロラインとオリヴィアの間に挟まれ、もう笑うしかない。


「まさかオリヴィア殿下までいらっしゃるとは思っていませんでしたわ」


 ううっ。約束なしにお茶会の場に現れたオリヴィアに向けるキャロラインの作り笑顔が怖い。


「あら? 私はアリーの親友なんだし、参加するのは当然でしょ?」


「アリス様のことをアリーとお呼びになるのはお辞めになってはいかがですか?」


「別にいいじゃない。アリーは嫌がってないんだし。ねっ、アリー?」


「アリス様はお優しいですから、たとえ嫌だとしても嫌だとはおっしゃいませんわ」


 名前の呼び方よりも何よりも、今のこの微妙な空気が嫌なんですけど……なんてことを言う勇気はない。


 とりあえずこんな時は口を挟まず、お菓子に逃げるのがベストだ。うーん、美味しい。


「このいちごのタルト最高ですよ。二人も食べませんか?」


 美味しいものを食べて、このギスギスした雰囲気が少しでもやわらげば……なんて甘い期待はすぐに打ち砕かれた。


 今度はどちらが先にいちごタルトをとるかで揉め始めたのだ。正直言ってくだらなすぎてため息が出てしまう。


「ちょっとキャロライン! 私に対してその態度は無礼よ! 私は王族なのよ。お・う・ぞ・く! 分かってるの? 私は現国王の姪なのよ!!」


「失礼いたしました」

 冷静に頭をさげながらも、

「オリヴィア殿下の振る舞いが、あまりにも王族らしからぬものでしたので忘れておりました」

 含み笑いをするキャロラインにハラハラしてしまう。


 っと、突然……

「ブフッ……フッフ」

 誰かがこらえきれないというように吹き出した。


 えっ?

 私だけでなく揉めていた二人もキョトンという顔で、声がした方へ顔を向けた。


「今のまさか……アナベルじゃないわよね?」


「わ、私じゃありません」

 私達三人の視線を集めたアナベルは慌てて両手を振って否定した。


 そうよね。アナベルが変な音を出すのは興奮してる時だけだし。じゃあ一体誰が……


 声は間違いなくアナベルのいる方から聞こえてきた。アナベルの後ろには給仕の手伝いをしてくれるメイドが数人いるのだが、そのうち一人の様子がなんだかおかしい。顔を伏せたまま、肩を小刻みに震わせている。


「ちょっと、何笑ってるのよ!!」


「あ、あの……これは……」


 オリヴィアに怒鳴られたメイドより、何故かアナベルの方が慌てた様子だ。メイド本人はというと、一層肩を震わせながら、時折クックという音を立てている。


「……あー、もう我慢できない」


 おかしそうにクスクスと笑いながらメイドが顔をあげた。その顔を見たオリヴィアが驚きの声をあげる。


「お、お母様!?」


 あまりの驚きに立ち上がってしまったオリヴィアの椅子が、がたんと大きな音を立てて倒れた。


「あーあ、ばれちゃった」


 おかしそうに笑いながら舌をペロッと出した女性は、確かにオリヴィアの母であるジャニスだ。


「てへっじゃないですよ。一体そんな所で何やってるんですか?」


「何って覗きに決まってるじゃない」


 あれ? 何だろこの感じ……前にも同じことがあったような……

 悪びれることなく堂々と覗きだと言い放ったその姿に既視感を覚える。


 なんだったっけ?

 私が記憶を呼び起こす前に、今度はキャロラインが驚きの声をあげた。


「まさか、そこにいらっしゃるのはメイシー様ではありませんか!?」


「あら、キャロライン。よく分かったわね」


 ええー!! メイシー様?

 信じられない思いでキャロラインの視線の先を見ると、アナベルの後ろで何食わぬ顔をしていたメイドが眼鏡を外した。


 あぁ、そうだ。思い出した。さっきのジャニスの態度は、初めてウィルと庭園を散歩した時に会った、メイシー様にそっくりなんだ。


 覗きがばれた時に、慌てるわけでも恥ずかしがるわけでもなく、覗いて何が悪いという態度をとるのは王族あるあるなのかしら。


 メイドに扮して覗きだと言い放った母親に、破天荒なオリヴィア様もさすがに驚いたようだ。


「えっと……えっ? 覗き?」


「そうよん。あなた達がガールズトークするっていうから来ちゃった」


「その格好でですか?」


「あー、これは……うふふっ。これはお義姉様と変装ごっこしようって話になって……」

 話を振られたメイシー様が私を見た。


「昨夜アリスちゃんが上手に変装していたでしょう? それでわたくし達も変装してみようという話になったのよ」


「マリベルにお願いしてメイドになってみたんだけど、どう? 似合うでしょ?」


 スカートを掴み、くるりと回ってみせた母の無邪気な姿に、娘のオリヴィアの顔はひきつっている。


「後でアランに見せに行かなきゃ。この格好でお茶をいれてあげたら、あの人きっと泣いて喜ぶわ」


「お母様ってば……たしかに似合わないわけじゃないけど、父様だって何してるんだって呆れると思うわよ」


「あら、オリヴィアったら。男っていうのはね、多かれ少なかれ自分の恋人にこういう変装をさせたい願望があるものなのよ」


 それってコスプレとかそういうこと? たしかにメイドとかナースの制服の需要は結構あるとは聞いたことあるけど、この世界でもそうなのかしら?


 メイド服姿で父親を喜ばせる母親か……まぁラブラブなのはいいことだけど、娘としては微妙だろうな。

 オリヴィアとそのメイド姿の母親を見ながらなんとも言えない気持ちになる。


「それにしても、キャロちゃんってば結構トゲのあること言っちゃうのね。びっくりしちゃったわ」


 ジャニスに驚いたと言われたキャロラインの方も、いきなりキャロちゃん呼ばわりされたことに対して動揺している。


 それでも一瞬見せた動揺を見事に押さえ込み、

「メイシー様、本日はお見送り等でお忙しいのではありませんか?」

 いつもと変わらぬ感じで会話を始めた。


 例年ならば春喜宴の翌日は、招待客の見送りだの何だのと国王夫妻の出番が多くあるそうだ。今年もその予定だったが、カサラング公爵の騒ぎで招待客も泊まらずに帰ってしまったので仕事はないのだとメイシー様は言う。


「アリスちゃんも大変だったわね」


「あ、は、はい」


 メイド姿のメイシー様に労われると、なんだか変な感じしかしない。こんな感じで突然現れた二人はもちろんお茶会に参加することになった。


「ふーん……そっかぁ」 


「あ、あの、何かありましたか?」

 ジャニスに瞬きもせず見つめられて背筋が伸びる。


「あっ。ジロジロ見ちゃってごめんなさい。アリスちゃんと会うのは初めてじゃない。昨日までは、ほら、アリーちゃんだったから」


 身を乗り出すようにして上から下までじっくり眺められると、品定めされているようで居心地が悪い。


「うんうん。アリーちゃんの時より数倍可愛いわ」


「ジャニス、だめよ。アリスちゃんはウィルバートのお嫁さんなんだから」


「分かってるわよ。とったりしないって!! それより、私はキャロちゃんにラウルのお嫁さんになって欲しいのよね」


「えっ!? わたくしですか?」


 突然の指名に、キャロラインだけでなくオリヴィアも驚きの声をあげた。


「お母様はキャロラインをラウル兄様の嫁にしたいと思ってるの?」


「そうよん。キャロちゃんなら家柄よし、見た目よし、外面よしでラウルの相手にぴったりじゃない」


 これって一応褒めてるんだよね?

 でも外面よしなんて言われて嬉しいはずもなく、キャロラインは複雑そうな顔をしている。

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