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王太子殿下は小説みたいな恋がしたい  作者: 紅花うさぎ


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79/117

79.興味があるって!?

 興味? 私に? ラウルが? どうして?


「あっ、もしかしてラウル様も私とエドワード様の馴れ初めを知りたいんですか?」


 前にオリヴィアとその母親に聞かれたけれど、詳しい設定なんて決めてないから誤魔化しちゃったのよね。ラウルも私とエドワードの関係が気になるのだろうか?


「いや、それに関しては特に……」

 ラウルは一瞬戸惑う様な表情を見せたが、すぐにいつもの安心感を与える柔らかな笑顔に戻った。


「せっかく二人きりなのに、他の男の話は聞きたくないですね」


 じゃあ一体何の話がしたいのよ?

 何故だか無言で私を見つめてくるラウルを、私も無言で見つめ返す。


 うわぁ…ラウル様ってば、まつげ長いなぁ。綺麗にカールした長いまつげは、ラウルの美しい目元をよりミステリアスにしているようだ。


 まつげが濃くて長い人って顔も濃いイメージだったけれど、ラウルの顔は濃いと表現するには無理がある。かと言って、薄いわけでもない。

 

「アリー……」

 

 ラウルの甘い声が私の名を呼ぶ。ゆっくりと体を前に傾けるように動かし、ラウルの手が私の手に重ねられた。突然の出来事に、驚くより先に体がびくっと反応してしまう。


 な、なんで!?


 訳がわからず重なった手に視線を落として、思わず感嘆のため息が漏れた。


 はぁ。なんて綺麗な手なんだろう……


 ラウルのほっそりとした手は白くとても滑らかだ。爪も綺麗に整えられて光沢がある。見惚れるほど素敵な手の中でも、特に魅力的だったのは指だ。すらっとした長い指はなんだかセクシーで、見ているだけでドキドキしてくる。


 そんな事を考えながらラウルの手をガン見していると、ラウルが私の名を呼んだ。

 なんだろう。色っぽい手だなって思ってたせいか、声までセクシーに聞こえてくる。

 

「アリー……顔をあげてください」


 言われるがまま顔をあげると、私をじっと見つめているラウルと目があった。ラウルが私の手を包み込むようにして持ち上げる。


 この位置だと、さっきまでより手の形がはっきり分かっていい!! 今まで意識したことなかっけど、私って手フェチだったのかしら?

 

「アリー、わたしはあなたの事を……」

「ラウル様の手って、本当に綺麗ですねぇ……」

 

 ラウルが何かを言いかけたのと、私の心の声が口から飛び出したのはほぼ同時だった。

 

「えっ?」

「あっ、何かおっしゃいましたか?」


 これまた同時に顔を見合わせて、二人して首を傾げる。


 っと、遠くから誰かの叫ぶ様な声が聞こえてくる。見ると湖岸でオリヴィアとセスが私達を呼びながら手を振っている。


 その姿を見たラウルがはぁっとため息をつき、オールを手にとった。小舟は来た時とは違い、非常にゆっくりとしたスピードで岸へと向かっていく。岸にいるオリヴィアに手を振り返す私にラウルが言った。


「残念ですね。あなたを口説くつもりでしたが、邪魔が入ってしまいました」


 く、口説く!? 

 真面目な顔をしているラウルを見て、思わず笑ってしまった。


「ラウル様も、そんな冗談言うんですね」

 てっきり堅物なタイプかと思っていたけれど、思っていたよりもお茶目な人なのかもしれない。


 クスクスと笑う私に「冗談ではない」とラウルが告げる。


「わたしが誘惑していた事に気がついていましたよね?」


「ゆ、ゆ、ゆ、誘惑ですかぁ!?」

 驚きすぎて、おかしな声が出てしまった。

 

 ラウルは私を誘惑してたの?

 心当たりがなさすぎて、やっぱり冗談としか思えない。


「その様子だと、全く気がついてなかったみたいですね」

 そう言って、今度はラウルが声を出して笑った。


「てっきりわたしの誘惑をかわすための芝居をしているのかと思いましたが……そうですか、これがあなたの素なんですね……」

 

 独り言のようにラウルが呟き、岸へ着いた小舟から降りるため立ち上がった。ラウルに支えられる様にして私も立ち上がる。


 小舟から岸へと足を移動する私にだけ聞こえる声でラウル囁いた。


「わたしの従兄弟殿があなたに夢中な理由が少し分かった気がしますよ……」


 い、今、従兄弟って言ったわよね?

 

 聞き返そうと思ったものの、岸には私達の船が着くのを待ち構えていたオリヴィア達がいて、下手な事は口に出せない。


 もしかしてラウルは私の正体を知っているんだろうか?


 ここで私の事情を知っているのは、レジーナ様とマリベルだけだと思っていたけど……


 ラウルの言う従兄弟とはウィルバートのことだとしても、これが確信をもって言った言葉なのか、それとも単なる言い間違いなのかも判断がつかない。

 

 うーん……

 なんとも言えないモヤモヤしたものを抱えたまま、お昼ご飯のサンドイッチを口に運んだ。


「ほんっとラウル兄様ったらひどいんだから。置いて行くことないじゃない!!」


 オリヴィアがサンドイッチを両手に持ったまま、ラウルへの不満を口にする。どうやら私とラウルがオリヴィアを置いて湖に来たことが気に食わないようだ。


 次からは絶対自分にも声をかけるようしっかりと念を押したアナベルは、言うだけ言ってスッキリしたのか、手にしていたサンドイッチを食べ始めた。


 オリヴィアとは反対に、一言も発することなく食べ続けていたセスはすでに食べ終わり、湖の前で背伸びをしている。


 散々オリヴィアから文句を言われたラウルはというと、小舟から降りてすぐ用事があるとかでさっさと帰ってしまったのだ。その事もあってオリヴィアは愚痴がとまらないのかもしれない。


 ラウルが私の正体を知っているのか? 城に戻り次第ラウルと話をしよう。そう思っていたが、それはなかなか難しかった。


 毎日ラウルと顔も合わすし、一緒に食事をすることもある。それでも肝心な話ができないのは、常にオリヴィアが私の側にいるからだ。懐いてくれているのは嬉しいけれど、こうもべったりだと内緒話の一つもできやしない。かといって、オリヴィアの前で話すわけにもいかないし……


 もう我慢できない!! 

 数日ラウルと話すタイミングがなく、悶々としていた私は夜中にラウルを呼び出すことにした。オリヴィアが寝ている時間なら、ラウルと二人きりで話せるはずだ。


 前もって言っておいた時間ぴったりにやって来たラウルは、部屋に入るなり眩しすぎる微笑みを浮かべた。


「こんな時間に二人きりで会いたいなんて……あなたも悪い子ですね」


 意味が分からずキョトンとする私に、ラウルが近づき頬に触れた。


「わたしはあなたに興味があると言いましたよね? こうして誘ってくるということは、あなたもわたしに興味を持ってくれているという意味でいいんですか?」


 オリヴィアと同じスミレ色の瞳が私を見つめている。その恐ろしいまでの美しさに見惚れ、頭の中が空っぽになり、何も考えられなくなる。


 ガチャン

 

 食器の落ちる様な音と共に、マリベルの「失礼いたしました」という声が聞こえた。途端に我に返り、今にもキスされそうな状況にパニックになってしまう。


「ちょちょちょちょっと待ってください!!」

 慌てた拍子に両手でラウルを突き放してしまった。


 そんな状況でもラウルの表情は崩れることはない。「さすがマリベルですね。絶妙なタイミングでしたよ」っと優雅な笑みを浮かべたまま言った。


 本当に。マリベルがいいタイミングで邪魔してくれたおかげで助かった。じゃなかったらどうなっていたか……まだ心臓はバクバクいっている。


「マリベルがいるということは、わたしを部屋へ呼んだのは、一夜の恋のためというわけではなさそうですね」

 冗談とも本気ともとれる口調でラウルが言った。


「ごめんなさい」


 謝るのも変な気はしたが、ラウルと早く話したいとばかり思って、夜に部屋に呼び出すことの意味なんて考えてもみなかったのは私の落ち度だ。ラウルを呼び出したと言った時、どうりでマリベルが変な顔をしたわけだと今なら納得できる。


 とりあえずラウルには座ってもらい、仕切り直しといこう。


「この前ラウル様がおっしゃった事なんですけど……」


 小舟から降りる時に「従兄弟殿が……」と言ったのはどういう意味なのか? 

 そう尋ねてみても、ラウルはそんな事を言った記憶がないようだ。


 逆に、「どうしてそんな事が気になるんです?」と尋ね返されてしまった。

 

 本当にラウルは何も知らないのだろうか? もし知らないのなら、余計な事を言って私の正体をバラすとまずい。けれどなんとなく、ただの勘だけど、やっぱりラウルは私の事を知っている気がする。だっていつもと変わらぬ眩しい微笑みなのに、視線だけは私の反応を確認するみたいにギラついているのだから。


 一か八か、「ラウル様はご存知ですよね?」っと聞いてみようか? 私が悩んでいる間に、ラウルが先に口を開いた。


「わたしの従兄弟のウィルバートですが、デンバー家のキャロライン嬢との結婚話が出ているようですよ」

 

 突然の話に驚いてしまう。しかも「どうやらキャロライン嬢の方が非常に乗り気なようです」なんて言われたもんだから、余計にびっくりだ。


 キャロラインがウィルバートと結婚したがってるって、私がいない間に何があったの? 


「そ、そうなんですか?」


 動揺をさとられないよう平静を装って返事をする。そんな私を観察するようじっと見つめながらラウルは話を続ける。


「春喜宴ではカサラング家のグレース嬢をパートナーに選んだと聞いています。キャロライン嬢とグレース嬢、一体どちらが王太子妃になるのか楽しみですね」


「そうですね」っと答えたけれど、私にとっては楽しみではなく悲しみしかない。黙りこんでしまった私を見て、ラウルは静かに笑っていた。

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