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王太子殿下は小説みたいな恋がしたい  作者: 紅花うさぎ


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番外編 ウィルバートの作戦会議

本編112の前半と後半の間の頃のお話です。

「皆そろったことだし、そろそろ始めようか」


 執務室に集まった者達を前に、わたしが口を開くやいなや……


「おい、ウィルバート!! 俺は今誰かさんの結婚式の準備で非常に忙しいんだ。くだらない話はさっさと終わらせてくれよ」


 不機嫌丸出しのアーノルドがドンっとテーブルを叩いた。


 珍しい事もあるものだな。こういった身近な者が集まる時には必ず自分でいれた茶を振る舞いたがるアーノルドが、今日はどっしりと椅子に腰掛けたまま動こうとはしない。


 わたしの結婚式の警備計画でここのところひどく忙しいとは聞いていたが、よほど休めていないのだろうか?


「殿下、申し訳ありませんが、私も他に仕事がたまっておりますので……」


 同じく式の準備で忙しいルーカスも、できれば今すぐにでも部屋を出て行きたそうに見える。


 全く二人して部屋に来て早々帰りたがるとは薄情な。確かに式の準備が忙しい中呼び出した事は申し訳なかったが、少しくらいわたしに付き合ってもいいだろうに。


「アリス様はいらっしゃらないんですか?」


 一刻も早くこの場を去りたい二人とは違い、いつもと同じようにゆったりとしているのはキャロラインだ。アーモンドチョコレートをつまみながら、アナベルのいれた紅茶を優雅に飲んでいる。


「アリスは今、母の所に呼ばれているんですよ」


 自分がアリスのお披露目会用ドレスを作るのだと言ってきかない母に呼び出されてアリスが不在の今は、この秘密の会議を開くのには絶好のタイミングだ。しかも都合がいいことに、おしゃべりなオリヴィアもアリスにくっついて母の所に行っている。


「あのウィルバート様……」


「何だい、アナベル?」


「本日のお話はアリス様に内緒なのでしょうか? もし内緒なのでしたら、オリヴィア様がお戻りになる前に早くすまされた方が良いのではありませんか?」


 確かに。アリスはドレス作りに時間がかかるだろうが、オリヴィアは飽きたら戻ってくる可能性がある。私達がここにいるのがバレたならば、誤魔化すのは厄介だろう。それではわたしがこの秘密の会を開いた意味がなくなってしまうではないか。


 今日ここにアーノルドやキャロラインを集めたのは、アリスにサプライズをしたいと思ったからだ。プロポーズでは失敗してしまったので、結婚式の日に何かアリスを喜ばす事がしたい。


「サプライズ!? お前婚約の時、めちゃくちゃなサプライズかましてんだから、もういんじゃねーか?」


「わたしはサプライズなんてしていないよ」

 

 だからこうやって何かアリスの記憶に残る結婚式サプライズを計画しているんじゃないか。


 なのになぜかキャロラインはアーノルドに賛同している。


「確かにあのサプライズは、わたくしにとっても衝撃でした」


「だからわたしはサプライズなんてしていないよ」


「いいや、しただろ。アリスに婚約した事を気づかせないまま婚約祝いの夕食会に連れて来たじゃねーか」


 ……それはサプライズではない!!


 思い出したくもない事を思い出させてくれるものだ。その話はわたしにとって笑い話ではなかったが、キャロラインとアーノルドにとってはおかしい話なのだろう。キャロラインは口元を隠しながら笑っている。


 もういい。さっさと話すべき事を話してしまおう。


 サプライズについて相談とは言っても、もう内容は決めてある。それでも念のため、わたしが考えたものについて客観的な意見や感想を聞かせてほしくて皆を集めたのだ。なんせ今回は一生に一度の結婚の日におけるサプライズなのだから、絶対に成功させたい。


「それで、殿下はどのようなプランをお考えなのでしょうか?」


 早くこの作戦会議を終わらせたいとは思いながらも、わたしの失敗をわたし以上に不安視しているルーカスは真剣な顔をしている。


「お披露目会が終わって部屋に戻ったところで、自作の歌をプレゼントしようかと思ってい……」


「歌!?」


 わたしの言葉を遮ったのは誰だったのか? もしかすると部屋にいた全員かもしれない。驚きの声がいくつもあがった。


「自作の歌って……冗談だよな?」


「冗談なわけないだろう。歌詞はもうここに書いてあるよ」


 わたしの手から歌詞を奪い取り、アーノルドは読み始めた。ざっと目を通すと無言で歌詞をキャロラインへ手渡した。


 気になってたまらない様子のアナベルがキャロラインの後ろから歌詞を覗きこんでいる。歌詞は最後にルーカスへと手渡された。


「リズムは分かりませんが、ラブソングなんですよね?」


「ああ。しっとりと歌いあげるつもりだよ」


 わたしのアリスへの愛を最大限に盛り込んだ歌詞には我ながら自信があった。


「そうですか……しっとりもいいですが、わたくしはラップの方が意外性があって面白いと思いますよ」


 ラップかぁ……それは考えてもみなかったな。確かに意外性としてはラップの方が上かもしれない。


「さすがキャロラインだね。有益なアドバイスをありがとう」


 どうかしたのだろうか?

 にっこりと笑うキャロラインの肩がわずかだが小刻みに震えている。


「キャロライン様、殿下を揶揄うのはおやめください」


 ルーカスが読み終えた歌詞をわたしに戻しながら大きなため息をついた。


 揶揄う? わたしはキャロラインに揶揄われていたのか?


 たまりかねたように笑い始めたキャロラインにあっけにとられてしまう。キャロラインとは長い付き合いだが、こんなに大きな声で笑うのを見たのは初めてだ。


「ウィルバート様は、お顔と身分がよくてよかったですわね。そうでなければ、ただのゴミ男でしたわよ」


 キレイな顔に似合わない言葉を吐きながらも、なおもキャロラインはおかしそうに笑っている。


「おい!! ねっとりだろうと、こってりだろうと好きなように歌えばいいだろ。こんなくだらない話に付き合うくらいなら、俺は戻って寝るぞ」


 一方アーノルドは不機嫌マックスだ。イライラしているのが、組んだ足を貧乏ゆすりのように震わせている事からも見てとれる。


 なんなんだこの反応は? 


 笑いすぎてハンカチで目元を押さえているキャロライン、イラつくアーノルド、困ったように目を閉じて何かを考えこむアナベル、そして憐れむような瞳をむけてくるルーカス……


 4人の反応をどうとればいいのだろうか?


「……何か歌詞におかしな点でもあったかい?」


「歌詞にじゃねぇよ!! 自作の歌が最悪なんだよ」


 そんな馬鹿な。とは思うが、皆一様に頷いているのを見ると、自分の自信が崩れてくる。


「歌をプレゼントしても、アリスは喜ばないだろうか?」 


 わたしの質問に苦笑しながら答えたのはアナベルだ。


「さすがのアリス様も、ブリザードには対処できないかと思われます」

 

 ブリザードって……それはわたしの歌が寒いと遠回しに言っているのか?


 なんにせよ、全員に不評ならやめるしかない。初めから考え直しだ。


 ここで皆に案を求めれば楽なのだが、それではわたしからアリスへのプレゼントにはならない。わたしが自分で決めたものでアリスを喜ばせたいのだ。

 

「それよりウィルバート様、わたくしもウィルバート様にお聞きしたい事があるのですが……」


 何が聞きたいのか知らないが、キャロラインは何故だかペンとメモ用紙を取り出した。


「ウィルバート様は、セクシー系と清楚系のどちらがお好きですか?」


 セクシー系?

 キャロラインの口からまさかそんな言葉が発されるとは!?


「おい、キャロライン……お前一体何考えてんだ?」


 さっきまで不機嫌でイライラしていたアーノルドも、いきなり想定外な事を話し出した妹に驚いたようだ。


「何をって……アリス様への結婚プレゼントを考えているのですが、ウィルバート様の好みが分からなくって」


 アリスへのプレゼントと、わたしの好み……全く話が繋がらないのだが?


「ですから、ウィルバート様の好みの物をアリス様にプレゼントしようと思っているんです」


 やっぱりよく分からない。


「私の好みの物をというのはありがたいけれど、アリスへのプレゼントならばアリスの好みの物をプレゼントした方がいいんじゃないのかな?」


「それは普通の時にしますわ。今回はお二人の結婚祝いですから」


「キャロライン嬢、一体アリスに何をプレゼントするつもりなんだい?」


「結婚初夜に着るナイトドレスですわ」


 だからセクシー系か清楚系かと聞いていたのか?

 納得したとは言え、これは答えにくい質問だ。


「アーノルド兄様は小悪魔系が好きですわよね?」


「はぁ? 俺が好きなのは不思議系だ」


「……分かりました。それも候補に入れておきます」


 いや……キャロライン、それメモしなくていいから。だいたい不思議系のナイトドレスって、何だそれ?


「それでウィルバート様の好みは?」

 皆の視線がわたしに集中している。


 せっかくの申し出なのだから、ここは正直に好みのスタイルを言うべきか? いや、やはり自ら恥をかくことはない。


 しばし葛藤したが、アリスがわたし好みのナイトドレスを着ている姿を想像するとたまらなくなってしまった。


「し、白のミニでヒラヒラのやつが……」

 

 って、恥ずかしすぎるだろ!!

 それよりサプライズ! アリスへのサプライズを考えなくては。


 結婚式まで後少し。果たしてアリスを満足させるアイデアは浮かぶのだろか。


 結局その日、わたしの頭の中は可愛いアリスのナイトドレス姿の妄想にのっとられ、何一ついい考えは浮かばなかった。

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