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王太子殿下は小説みたいな恋がしたい  作者: 紅花うさぎ


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最終話.私は幸せ者ですね

「腹直筋の綺麗な男だよ。好きだったよね?」


 やっぱり聞き間違いじゃなかったぁ!! 好きだろう? って、そりゃ嫌いじゃないけど、別にそこまで筋肉に興味は……


「わたしの腹直筋もアリスに気に入ってほしくてね。これでもだいぶ鍛えたんだよ」


 ウィルはすっごく嬉しそうな顔して話してるけど、どうして私が腹筋フェチみたいな話になってるの?


 しかも、「後で触っておくれ」って、内緒話みたいに耳元でささやくのはやめてぇ。なんだかめちゃくちゃいやらしく聞こえちゃうじゃない。


 腹筋フェチ疑惑を晴らすべきか、そのまま秘密にしてウィルの腹筋を触らしてもらうか……


 くだらないとは思いつつも頭を悩ませていると、甲高い声が私を呼んだ。姿は見えずとも声の主は分かる。人前でこんなに大きな声を出すのはオリヴィアしかいない。


「アリス!! おめでとう。とっても綺麗だったわよ」


「オリヴィア様、ありがとうございます。ラウル様も……来てくださったんですね」


 はぁ……今日のラウル様も最高に輝いてるわ。


 ラウルに会うのはいつ以来だろうか? 

 久しぶりに会うラウルは相変わらずため息が出るほど美しい。このお披露目会の主役はウィルと私だけど、ラウルの方が主役なんじゃと思うくらい目立っている。


「ラウル様が来てくださって、とても嬉しいです」


 城に帰ってから一度も王宮には来ていなかったラウルが私達のために来てくれたことが素直に嬉しかった。


「……あなたは本当に……」

 ラウルがふっと笑った。


「ウィルバート、結婚おめでとうございます。とてもいい女性を見つけましたね」

 

 ラウルの笑顔があまりにも柔らかくて美しかったからだろうか、その場がしんと静まり返った。ウィルでさえ一瞬のみこまれていたようで、お礼を言う表情がとてもかたかった。


「ねぇ聞いて二人とも。ラウル兄様もね、しばらくこっちにいることにしたんですって」


「しばらくこちらに滞在して色々勉強してみようかと思っているんですよ」

 そう言ったラウルの顔は、なんだかスッキリした表情だった。


 ウィルとラウルはお互いに色々複雑な思いもあるだろうけど、このまま仲良くなれればいいな。


「やっぱりラウルは人気者だなぁ」

「本当ですね。ふふっ。オリヴィア様も嬉しそう」


 私達が立ち去るやいなや、待ってましたとばかりに大勢に囲まれているラウルは、やっぱり私達より主役っぽい。


「あそこにも、人気者がいるみたいだよ」


 ウィルの示した方には、なるほど、確かに人がひしめいている。


「どなたがいるのでしょうか?」


「おそらくアリスの友達とその兄だろうね」


 っていうことは……私の友達と言われて思い浮かぶのは一人しかいない。


「今日はエドワードも騎士団長としてではなく、デンバー家の長男としてこの会に参加しているからね。令嬢達からのアピールがすごいんだろう」


「これではキャロライン様にご挨拶するのは無理そうですね」


 残念。キャロラインに会いたかったのに。全く、エドワードなんて顔がいいだけの悪魔なのに。騙されてる令嬢達が気の毒よ。なんて余計なお世話かな。


「あらぁ。アリスちゃんにウィルバートじゃない」

 声をかけて来たのはウィルの両親である国王夫妻だ。


「なんだお前達、まだこんな所にいたのか?」

 ロバート様は相当酔っているのか、ずいぶんご機嫌だ。


「父上……少し飲み過ぎじゃありませんか?」

 ウィルは心配しているけれど、ロバート様は気にすることなく笑っている。


「結婚初夜なんだし、さっさと部屋に戻って二人きりになったらどうだ?」


 ガーハッハって、楽しそうに笑われても困ってしまう。そんな風に言われたら部屋に戻れるわけないじゃない。


 なのにウィルったら、

「……そうですね。ではそろそろ二人きりにさせてもらいましょうか」

 って、そういうわけにはいかないでしょ。


「でもまだ皆さんに挨拶が終わってないですし……」


 キャロライン達は無理だとしても、まだデンバー公爵夫妻にも挨拶してない。それこそ名前も知らない人なんて、まだまだたくさんいる。


「あらぁ。挨拶なんてまた今度でいいのよん」


 あらら。これはロバート様だけじゃなく、メイシー様も相当酔ってるみたいね。いつもの上品なマダム感が今日は全く感じられない。


 ウィルも同じ事を感じているらしく、私を見て困ったように笑った。


「聞いたところによると、ウィルバートは何かサプライズプレゼントを用意しているらしいじゃないか」

「素敵な夜になるといいわねぇ」 


 サプライズプレゼント?


 なんだろうと思ってウィルを見ると、片手で頭を抱え、首を横に振っている。ウィルの口から大きなため息が漏れた。


「行こう、アリス」


「あっ、ちょっと待っ……」


 早足で歩くウィルに連れ去られるように会場を後にする。


「会の途中で抜けちゃっていいんですか?」


「母達も言っていたろう? 挨拶の残りはまた次の機会にしよう」


 一応披露宴なんだから、私達が途中で抜けるのはダメな気がするんだけど。でもまぁウィルがいいって言うなら、いいのかな。


「そうそうアリスには内緒にしていたことがあるんだ」


 それってサプライズプレゼントの事?


 ロバート様がサプライズと口にした時の態度からして、ウィルが何かサプライズを仕掛けてくるのは確かだろう。


 サプライズ……一体ウィルは何を計画しているんだろう? 嬉しくないサプライズでも喜ばなきゃ失礼だし、できれば私の受け止めきれるものでありますように。


 ワクワクというより、ビクビクしながら廊下を進む私の前でメイドが立ち止まった。


 まさかフラッシュモブ!?

 

 ビクッとする私の前で頭を下げたメイド達は、再び忙しそうにお披露目会の会場の方へと向かっていく。

 

 よかった……

 ウィルにバレないように安堵のため息をついた。


 それを数回繰り返して案内されたのは、いつもと違う部屋だった。


「アリスに秘密にしていたのはね、この部屋の事なんだ」


 わぁ、可愛い!!

 今までより広い部屋の中はピンクと白の丸やハートの風船でいっぱいだった。カラフルな花もたくさん飾ってある。


「これからはいつでも二人でいられるようにと思ってこの部屋を準備したんだよ。ここがアリスの新しい部屋で、この扉を開けると……」


 ジャーン!! っという感じでウィルが開けた扉の先は広々とした寝室だった。部屋に置かれた大きなベッドの白いカバーの上には、赤い薔薇の花びらでハートが描かれている。


「ここが二人の寝室だよ」


 二人のっという事は、私とウィルということ? それはつまり……


「一緒に寝るんですか!?」


「もちろん。わたし達は結婚したんだからね」


 そ、そうだよね。分かってたけど、実際に大きなベッドを見ると何か急に変な汗が出てきちゃった。


 二人で寝るベッドを意識していることを悟られたくなくて、さりげなく話をそらした。

 

「ロバート様がおっしゃっていたサプライズプレゼントっていうのは部屋の事だったんですね」


「えっ!?」

 

 あれ? なんでウィルは驚いてるの?


「そうだよね……やはりサプライズがあることは分かっていたよね?」

 

 そりゃさっきロバート様がサプライズがあるってはっきり言ってたからね。


「残念。アリスを喜ばせたくて作ったんだけど、サプライズにならなかったな」


 作ったって何を? 

 座るよう促されたって事は、立ったままじゃまずいって事よね?


 ……まさか……


 前にウィルは自作の歌で愛をどうのって言ってたけど、今から歌いだすんじゃ……

「マイハニー」みたいに寒い歌詞だったら、きちんと喜べる自信がない。


 平常心よ!!

 とにかく何が飛び出しても心の準備さえあれば、動揺せず乗り切れるはず。


 変に気合いを入れる私にウィルがプレゼントしてくれたのは、自作の歌ではなくサンドイッチだった。


「……えっと……サプライズプレゼントってこれですか?」


 たしかにこれはある意味サプライズかもしれない。プレゼントにサンドイッチというのは考えてもみなかったもの。

 

「きっとお腹が空いているだろうと思ったからね、アリスに食べて欲しくてわたしが作ったんだよ」


 今日は結婚式とお披露目会で一日忙しく、きちんと食事がとれないのではと心配したウィルが作ってくれたようだ。


 ウィルのいれてくれた甘いミルクティーと一緒に食べるアボカドとエビのサンドイッチは最高においしかった。これは間違いなくサプライズプレゼントだわ。


 こんなに嬉しいプレゼントをもらったんだから、私も何かお返ししたい。あー、こんな事なら前もって考えておけばよかった。


 ウィルの喜ぶこと、ウィルの喜ぶこと……


「あの、よかったらベッドに移動しませんか?」


 ガチャン!! ウィルが手にしていた紅茶のカップをテーブルの上に落とした。


「大変!! 火傷してませんか?」

 

 ミルクティーはまだ温かい。体にかかっていては大変だ。


「そんな事より、アリス!! 今ベッドに行こうって言ったよね?」


 こぼれたミルクティーが広がらないよう、急いでテーブルの上を片付ける私を見るウィルの瞳は、大きく見開かれている。


「はい。今日は一日お疲れでしょうから、サンドイッチのお礼にマッサージでもしようかと思ったんです。と言っても初めてなので自信はありませんが……」


「……あぁ……なんだマッサージか……」


 あれ? なんか微妙な反応……

 

 ボソッと呟いたウィルはなんだかがっかりしたような、ホッとしたような微妙な表情をしている。私的にはいい考えだと思ったんだけど、ウィルには刺さらなかったみたいだ。


「ごめんなさい。マッサージなんか嬉しくないですよね?」


「そんな事ないよ」

 ウィルがにっこりと微笑んだ。

 

「アリスがマッサージをしてくれるなら、とっても嬉しいよ。でもそのドレスじゃ難しくないかな?」


「あっ」


 そうだった。私はまだヒラヒラドレスのままだった。たしかにこれじゃ動きにくい上に、下手に動いたらレースが破れちゃいそうだ。


 じゃあ他にドレスのままできてウィルが喜んでくれるようなお返しは……


 あれでもない、これでもないと、一生懸命頭を働かせる私の事など全てお見通しとでもいうように、ウィルは私の頭をぽんぽんっと優しく叩いた。


「ありがとう。アリスのその気持ちだけで嬉しいよ」


 ウィルは本当に嬉しそうな顔をしているけど、私は不満だ。私だってウィルを喜ばせたい。


 頬にキスは……この前したよね? 

 この前は喜んでくれたけど、また同じ事するのもイマイチな気が……


 ちゅっ!!


 あれ? ウィルの頬にキスするかどうか悩んでいたら、私の方がキスされてしまった。

 

「考え事をしているアリスの顔も可愛いけど、そろそろわたしの相手もして欲しいな」


 再びウィルが私に口付けた。


 優しく愛おしむように……

 私の体を抱きしめるウィルの愛情が全身から伝わってくる。


 ウィルみたいに格好良くて、優しくて、立派な人が私を好きになってくれるなんて……私はなんて幸せ者なんだろう。


「ウィル……私と結婚してくださってありがとうございます。私、ウィルの隣にいるのに相応しい人間になれるよう頑張りますね」


「アリスは今のままでいいんだよ。世界一可愛いくて優しくて……アリスに相応しい人間にならなければいけないのは、きっとわたしの方だ」


 ウィルが私を見て目を細め、まるで壊れ物を触るかのような優しい手つきで私に触れた。


 本当に私は幸せ者ね。

 

 瞳を閉じてウィルのくれる溢れるほどの愛情を受け止めながら、これ以上ないほどの幸せをかみしめた。

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