電燈の国
夕暮れの平原を一台の車が走っていた。車の中には少女と灰色の猫がいた。
「サクラ、本当に行くの?」
猫が聴くと、サクラと呼ばれた少女が返答する。
「もし噂通りに悲惨な国だと言うなら…そこから抜け出す手伝いがしたい、シロは思わないの?」
「ここで思わないって言ったら思うって言うまで断食だよねはいそう思いますー」
灰色なのにシロと呼ばれた猫が返した。
そして、サクラとシロは国を訪れて意外な表情をすることとなった。街の中は電灯に照らされており、人々の表情も明るかった。噂とは打って変わり、暖かい雰囲気が場を包んでいた。
「凄いね、電気を使える国はこれまで数えるほどしかいなかったのに」
「助かるわ、夜の奇襲を怖がらなくて良い」
「何言ってるんだよ、どうせサクラは襲う人を襲われる人に変えるんでしょ?」
「…シロ?」
「何でもなーい」
その後、彼らはホテルに行き、部屋に泊まった。
部屋に入ると、大きなテレビ、大きな布団、明るい照明など豪勢な空間が姿を表した。
「大きな布団…ふかふか…気持ち良いよぉ…」
「サクラ、キャラ崩壊してるけど大丈夫なの?」
「大丈夫だよぉ………ふにゃぁ…」
「駄目だこりゃ…」
そのままサクラは寝そうになっていたが、ふと何かを思い出すと慌てて起き上がった。
「そう言えばシロ、この国が悲惨だと言われている理由分かったわよ」
「えっ?」
シロが驚くレアシーンを見たからかにこやかなサクラが話す。
「電力元が理由だって」
「…成程、そういうことか…“人間”だね?」
「シロも分かったみたいね。そう、人間を使って発電しているの。元々この国の電力は水力発電所があって、そこから供給されていたんだって。でも、ある時その発電所がトラブルで止まってしまった。理由は不明。でも、その当時から既に電力は生活に浸透していたから、重大な事態になった」
「だから、技術的には可能でも非人道的として使われなかった人力発電が採用された…」
「大正解。この国は表向きは明るくても、裏はドロドロってこと」
その国を出た後、シロはサクラに聞いた。
「あのままで良いと思う?」
サクラは少し考えた後返答した。
「彼ら自身が決めたことだから、私なんかが口を挟むべきでは無いわよ」
車は静かに走っていた。
国の中では、泣き声が響き渡っていた。