炭鉱の国
熱苦しい砂漠の中を、一台の小さい車が走っていた。その車の運転席には少女が乗っており、助手席には灰色の猫がいた。
「サクラ、一攫千金のチャンスだよ!もっとスピードあげられないの!?」
灰色猫がそう言うと、サクラと呼ばれた少女が返す。
「シロ、これ以上速度を上げたら止まるわよ。砂漠を徒歩で横断したいの?」
「…サクラ、安全運転で行って。お願い」
シロと呼ばれた灰色の猫は、前言を撤回してそう言った。
「貴方も一攫千金を狙って来たんですよね!?そうですよね!?」
妙にハイテンションな入国審査官に対して、サクラは淡々と答える。
「お金になる、と聞いたので。しかし、そんな上手い話があるんですか?」
「おや、そんなことも知らずに来たのですか?」
入国審査官は嘲笑うような訳でも無く、純粋に驚いていた。しかし、内容を説明出来ると分かったのか急に笑顔になると説明をした。
「我が国の地下で、無数に鉱山資源が取れるんですよ!鉄や金は勿論、プラチナにコバルト、果てにはダイヤモンドも出ますよ!」
「成程ー。それ、どうやって取るの?」
シロが聞くと、
「地下に入る穴を一箇所掘り、そこから真横に掘っています!もうザックザックですよ!」
入国審査官がこれ以上無いというほどの満面の笑みを見せる。しかし、サクラは一転して表情が硬くなった。
「それは…その内国が崩落しませんか?」
「大丈夫です、心配ありません!」
サクラの疑問に、入国審査官はハイテンションを崩さないまま答える。
「これまで大きな崩落は一度も起きてませんから!」
サクラは遠慮すると言い、その国を後にした。
国を出てから、シロはサクラに問いかけた。
「サクラ、なんで言ってあげなかったの?いつか崩落して死傷者が出るよって」
「言っても仕方ないでしょ。
あの人達は目の前の事しか見えてないから。自業自得よ」
サクラはそう返した。そんなサクラにシロは一言。
「昔のサクラみたいだね」
サクラは何も言えなくなった。車は砂埃を上げながら砂漠を走っていた。