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第27話「望まぬ再会」

ガキこと……子供の名前はメリム。

整合性のため、前話ちょっと修正しました。

「はい! では──筆記試験を終わります。これは普段通りに規則を守って冒険者をしている方なら、まず落ちることはありませんので、あまり気負わないでくださいね。……では、結果は昼食後に達します。お知らせ掲示板にてご確認くださ〜い」


 そういって、机の上の試験用紙を回収していくテリーヌ。


 試験官もいつの間にか増えて、彼女を手伝い試験用紙を回収していく。


「よー。クラウスー。な~んか拍子抜けだったなー」

「…………そうだな」


 さっきからやたらと馴れ馴れしいメリムが、試験終了と同時にクラウスに絡みに来る。


「へへ。これなら満点間違いなしだぜ。なぁ……よーよー、飯どうすんだ?」

「あ? 下で食うが……。家に帰ってもいいけど、時間が惜しいからな」


 そういって、さっさと二階の会議室を出ると、階下の酒場兼食堂に顔を出す。

 いつもは家で食べたりするのだが、試験結果や午後の動きが気になってそれどころじゃない。


「定食で」

「あいよー」


 古びた椅子に腰掛けると、当然のようにメリムが目の前に座る。


「あ、僕も同じ奴ね──」

「あいよー」


 …………おい。


「んー?」

 メリムのやつがなんだよ? って顔をしてやがるが、こっちがなんだよ!

「さっきからなんなんだよ?」

「へへ。言っただろ、仲間だって」


 はぁーー?


「何だお前知らないのか? 試験は別に仲間と一緒に受けてもいいんだぜ?」


 ……知ってる。


「で、僕も仲間と受けようとしたんだけどさ──ちょうどいいのがいなくてよ、」

 ちょうどいいの(・・・・・・・)って……おまッ。

「…………要するにボッチなので、同じボッチ臭い俺に目を付けたってわけか?」


「──へへ」


 へへ。じゃねぇ!!


「悪いが、俺は一人で受ける。……連携も訓練もしてないような奴と、即席のパーティを組んでもいいことはないからな」


 それに、【自動機能(オートモード)】はできるだけ一人で使いたいのだ。

 周囲に人がいた場合、無意識下の自分がどんな動きをしているのか、見られたくないし……。


 ──こう、白目をむいて、

 「あぅあぅー」とか、涎を垂らしながら資源を回収しているかもしれないし……。超見られたくない!


「なんだよー! ケチなこと言うなよ! 僕が手を貸してやるって言ってんだぞ!」

「いらねーよ。ったく、飯も一人で食え」


 クラウスは運ばれてきた定食をお盆ごと受け取ると、さっさと、カウンター席の隅に移動した。

 ここなら、邪魔されまい。


「なんだよーおい! っていうか、僕金持ってないぞ!!」


 だからなんだよ?


「おい、兄さん。お連れさんの分払ってくれよ」




 ………………は?




「定食。銅貨5枚だ。二人で10枚」

「いや、ちょっとまてよ。なんで俺が?」


 いや、ホント意味わからん。


「一緒に注文してたろ?」

「く……!」


 あのガキぃ……。



 渋々二人分の代金を払うクラウスではあったが、試験前からケチが付いたようで気分が悪い。


 しかも、大して旨くもない定食に銅貨を10枚……。


「なんなんだよ、もう!」


 黒パンに、スモークしたチーズ。

 水で戻した乾果に、塩漬け肉を骨髄でだしを取っただけの臭みの強いスープ。


(あー畜生。家に帰って食えばよかった)


 ガツガツと掻き込むも、リズのつくる飯と比べれば10ランクくらいはグレードが下がる味に閉口する。

 あのガキ──メリムは満足そうにがっついていたが、あれ、クラウスさんお金払ったんですよ?



 とほほ……。



 ※ ※



「ずずー……」


 はぁ………………まずッ。


 飯を食い終わった後、食後の──安~いお茶で時間を潰していたクラウス。

 相変わらずメリムがチョロチョロとまとわりついてくるがガン無視。


 いつもならさっさと依頼を受けて狩りに出ているので、手持無沙汰であった。


「は~い! 受験生のみなさ~ん、筆記試験の結果がでましたよー。掲示板にて確認して下さ~い」

 テンション高めのテリーヌの声に、受験生がぞろぞろとお知らせ掲示板に集まる。


 若干ドキドキするものの……。

 そこに名前のない冒険者など基本的おらず、皆喜ぶというより、小さく安堵している感じだ。


 受験料の銀貨10枚は決して安くはないのだから。


「──では、合格者の皆さんはこれより、実技試験に移らせていただきますね! それでは、ご説明するので、」




 そうして、午後の試験が始まる────。




 説明を受けた後、それぞれの仲間や協力者のもとに駆け戻る受験生を尻目に、クラウスも中級の昇級試験に臨もうとしていた。


 その時、



 カランカラ~ン♪



 ギルドのスイングドアを胸で押し開け、堂々たる風格のパーティがギルドにやってきた。

 一気にガヤガヤと騒がしくなる入口まわり。


「あーっはっはっは! 久しぶりに来たけど、やっぱりここは田舎臭いね」

「ちょっとちょっと、感じ悪いからやめなさいよー」


 と、よく通る声でギルドに入ってきたのは複数の男女。

 ……………………?!


「ッ! あ、アイツ等は……」


 驚愕に目を見開くクラウス。

 そして、ギルド全体もまるで生き物のようにざわめき動揺していた。



 どよよ!!

  どよっ!!



「おい、みろよ!」

「え? あれって……」

 人の波が揺れるように、ギルド中の冒険者と受験生が戸惑ったような声を上げ始めた。


 そして、さざ波のように動揺したような声が流れる。


「まさか、あいつ等って────噂の?」

「お、おう。間違いない。最近評判になってるクラン……特殊パーティだぜ」

「評判のクラン? その特殊パーティって……もしかして、例の『ユニークスキル持ち』や『高Lv冒険者』や傭兵ばかりで構成されてる例のやつらか!?」


 ざわざわ

  ざわざわ


「おいおい。そんな奴がなんだってこんな下級や中級どころしかいない田舎に……?」

「俺が知るかよ。本来なら上級ダンジョンや、未踏破フィールドの多い王都か国境、あるいは北の最前線付近で活躍しているんじゃないのか?」


 ざわつくギルドの様子に、クラウスも思わず顔を上げた。

 すると、遠目にも目立つ4人組の彼ら(・・)の姿を見つけ、嫌なものでも見つけたかのように顔を歪ませる……。




「な、なんであいつらが──……」




 視線の先にいたのは…………。そう、懐かしい顔だ。

 そして、できることなら二度と(・・・)会いたくなかった顔(・・・・・・・・・)で────かつては、嫌というほど顔を合わせた相手だった。


「……ん? そこにいるのはもしかして──」


 そして、クラウスの視線に気付いたのか、

 あるいは最初から気付いていたのか、薄く笑みを浮かべて歩み寄ってきた。


 ゴッゴッゴッ!

 

 固いブーツがギルドの床を叩き、

 自然に人の波が分かれ、クラウスと彼らが対峙する。


「よぉ、クラウス。……久しぶりじゃないか! 元気にしてたかぁ?」


 いかにも軽薄そうな男は、特徴的な赤髪をかき上げならなクラウスに挨拶をかましてくる。

(ち……)

 内心舌打ちをしたい気持ちでクラウスは、顔を僅かに歪めた。


 だが、

 次の瞬間には表情を消して相対すると、


「…………あぁ、久しぶりだな──ゲイン」


 心内(こころうち)を知られない様に即答すると、スゥ──と、無表情になるクラウス。

 もちろん……心は、痛いくらいにザワついている……。



 忘れもしない…………。

 あの数年前の記憶。



「ゲイン?!」

「ゲインだって?!」

「やっぱり、あの(・・)ゲイン・カッシュか!」


「「「特殊パーティ『特別な絆(スペシャルフォース)』のリーダーのゲイン……?!」」」


 ざわざわざわ!

 ざわわわ!!


 もう収拾がつかないほど騒がしくなるギルドに、メリムも目を丸くして驚いている。

「ええ? おい、クラウス。まさか、ゲインって──あの?! ユニークスキル持ちと高Lvの冒険者で構成された超有名パーティのリーダーの! し、しかも、たった3年でA級に上り詰めた上級パーティの『特別な絆(スペシャルフォース)』の……?!」


「あぁ」……説明ありがと。


 メリムも、他の冒険者と同様に目を丸くして驚いていた。



(…………あぁ、そうさ。コイツの名はゲイン。ゲイン・カッシュ)



 メリムの言う通り、

 極めて短期間でA級に上り詰めた異例の実力者パーティだ。


 そして、クラウスと同期であり、

 ……かつては同じパーティを組んでいたこともある──仲間、だった男。




 そう…………。クラウスの【自動機能(オートモード)】を、外れスキルだとあざ笑い、あっさりとクラウスを見限った奴────。








「奇遇だね、クラウス──────まさか、まだ(・・)ここにいたのかい?」



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