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第25話「リズとクラウス、それぞれの事情」

「よし、魔石も少し買えたし。あとは武器や装備を新調して────」

 そして、いよいよ……!


「うぉぉおお! 俺は昇級試験に挑むぞぉぉお!」

「うるさいッ!」


 カコーン♪


「ぬぉぉ……脳天にぃぃい」


 いい音がして、金属製のトングの握り部分(・・・・・・・・)がクラウスに直撃する。

 こんなことをするのは世界広しと言えど……。


「り、リズ。持ち手側で殴るのは反則」

「夕飯までに帰ってこないお兄ちゃんが悪い!」


 ビシッと、腰に手を当ててぷんぷんしている。

 うん、バリ可愛い。


「わ、悪かったよ……。き、今日のメニューは」

「ふんっ! 冷めたお芋のポタージュに、冷めた小麦の御粥、冷めたサラダに、そして、デザートの冷めたアップルパイだよ!……あと、冷めた私の視線ッ!」


 おっふ。冷めたのを強調しなくてもいいのよ。

 あと、サラダは普通冷めてます。そして、YOUの冷めた視線は癖になっちゃう──。


 ギロッ。


 おっふ……。

「ご、ごめんごめん。ちょっといいことあって舞い上がってたよ」

「いいこと?……ふーん、お夕飯よりいい事なんだー」


 う。

 そうですとは言い難い……。


「あ、あとで話すよ。さ、暗くなると外は冷えるし、ご飯にしてくれよ」

「冷めたので良ければ―」


 プクゥと頬を膨らますリズが可愛らしく、怒られるとわかりつつも膨らんだほっぺを突いた。


 ぷしゅー。


「ぶふー!! プシューだって」

「お兄ちゃん!!」


 カンカンに怒った義妹に、金属製の焼き(ごて)でこっぴどく怒られたのは言うまでもない。


※ ※


「ぷぃー……ごっそさん。超旨かった!」


 あーうまかった。


 冷めた、冷めたと強調していた割にしっかりと温めなおしてくれたリズ。


 メニューも上記の物以外に、シャキシャキのサラダに、焼きたての薄パンがついていた。

 薄パンは小麦粥に浸して食べると、ドロリとした粥がスープのように染み込んで実にうまい。


 ハチミツで軽く煮込んである御粥は胃に優しくて、少し塩気のあるパンにマッチしていた。

 それに、アップルパイはサクサクで、お芋のポタージュの味に負けず劣らず味わい深く滋味深い。


「はい、おそまつさま」


 ちゃんと食事にお礼を言えば少し顔を赤らめたリズがまめまめしく世話を焼いてくれる。

 直後のお茶に、大きく切られた梨。


 うむ……最高。


「それにしても、随分道具が揃ってきたな?」

 今日ぶん殴られたトングも、昨日今日と使っていたであろう調理道具が木製から金属製に変わりつつあった。

「ん? うん。お兄ちゃんが頑張って稼いでくれるから、いいものが買えてうれしいよ」


 ニコニコと機嫌よさげな義妹に、クラウスもご機嫌になる。

 何より、仕事が認められたようでうれしい。


「おう、リズが望むならミスリル製にしてもいいぞー」

「もー。そんな高いの買えるわけないじゃん。鉄製だって十分だよ」


 そういって、嬉しそうに梨を剥いていくリズ。

 先日まではよく切れる石製の安いナイフだったはず。


「お、おう。まぁ、いつかもっと軽くて丈夫なミスリル製を買ってやるからよ」

「ん! 期待しないで待っとく!」


 そこは期待してよ……。


「でも、そう遠くないかもよ」

「ん~? 食事中に言ってた昇級試験?」


 おうよ。


「そーそー。昇級して中級冒険者と認められれば、活動範囲が増えるし……────」


 アイツ等だって……。


「増えるし?」

「あ、おう。もっともっと稼ぎやすくなるんだ」

「ふーん」


 あまり乗り気でなさそうなリズ。


「私は、あんまり無茶してほしくないかなー」

「そういうなって。おふくろの療養費もあるし……。活動範囲が増えれば親父の情報だって」

「やめて!」


 ぴしゃりという義妹に、クラウスの口が紡がれる。


あの人達(叔父さん)のことで、お兄ちゃんが無茶するのはやめて!」

「う……ゴメン」


 行方不明(死亡扱い)になったクラウスの父親はあまり家庭を顧みる人ではなかった。

 すでに故人となったリズの父のことを想えば、彼女が義理の父親のことをよく思っていないのは明白だった。


「わ、私こそゴメン……。お世話になったのに、こんないい方しちゃって」

「いや。当然の反応だと思う」


 リズにだってリズの人生がある。

 無責任な親同士の約束で引き取られなければ、別の人生だってあったかもしれないのだ。


 血の繋がらない母親の世話に、血の繋がらない兄の世話……。

 毎日毎日、遅くまで帰りを待つのだって気が休まらないことだろう。


 それに────。


「ごめんね。私もう寝るね」

「あ、おう……」


 しょんぼりとしてしまったリズがササっとお皿なんかを片付けると、トボトボと寝室に入ってしまった。


「しまったなー……」

 

 ──リズ……彼女ももう15歳。

 スキルが開花するまでもう幾何(いくばく)の時間もない──。


「……リズに健やかに育ってもらうためにも、もっともっと頑張らないとな」


 リズはクラウスが冒険者をやっていることに諸手(もろて)を挙げて賛成しているわけではない。

 むしろ、危険な仕事を「自分のせい」でさせていると思っている節がある。


(だけど、それは違うぞ、リズ────……)


 リズのためというのももちろんある。

 だけど、それだけじゃない。


 ユニークスキルを手に入れた時、クラウスは冒険者こそが天職だと思ったのだ。

 そして、当時は散々もて(はや)され、期待された……。


 だが、現実は──……3年たってようやく昇級試験を受けることができるほど、落ちこぼれてしまった。



「違うんだ、リズ……」



(だからさ……。だから、見せてやりたいんだ──【自動機能(オートモード)】を笑ったやつ。使えないと見限った奴らに……)


 だって、男の子なんだぜ、俺はさ────……。





 ならば、

 ならば────……。


 誰よりも強く、強く強く、最強として成り上がりたいだろ?


 そんな目的じゃ、ダメか?

 



 なぁ、リズ────。




 クラウスは、灯りの落ちたリズの部屋をジッと見つめていた。






※ クラウスは購入した魔石を使用した。 ※



 ※ ※ ※

 

 クラウス・ノルドールのレベルが上昇しました(レベルアップ)

  クラウス・ノルドールのレベルが上昇しました(レベルアップ)

   クラウス・ノルドールのレベルが上昇しました(レベルアップ)


 ※ ※ ※


 ※ ※ ※

レベル:44(UP!)

名 前:クラウス・ノルドール


スキル:【自動機能(オートモード)】Lv4

Lv1⇒自動帰還

Lv2⇒自動移動

Lv3⇒自動資源採取

Lv4⇒自動戦闘

Lv5⇒????


● クラウスの能力値


体 力: 317(UP!)

筋 力: 199(UP!)

防御力: 170(UP!)

魔 力: 105(UP!)

敏 捷: 200(UP!)

抵抗力:  71(UP!)


残ステータスポイント「+58」(UP!)


スロット1:剣技Lv4

スロット2:気配探知Lv3

スロット3:下級魔法Lv1

スロット4:自動帰還

スロット5:自動移動

スロット6:自動資源採取

スロット7:自動戦闘


● 称号「なし」


 ※ ※

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