18.婚約解消?!2
母親の発言にルイーゼは露骨に眉をひそめ母を睨むが、父親は感情を隠すようにうなだれたままだ。
「お前にふさわしい婚約者は、わたくしが新しく用意します。エルウィンとお前のとの婚約は、今、この時をもって破談といたします。よろしいですわね?」
メーベルト伯夫人はルイーゼに背を向けながら、静かに、しかし威圧的にそう告げるが、当然ながらルイーゼはそれに大人しく従おうとはしない。
「――全然よくありません! お母様!」
「議論をする気はありません。……お前達! ルイーゼを部屋から出しては駄目よ!」
「え?」
執務室入り口に向かい、メーベルト伯夫人が叫ぶ。
ルイーゼがその可能性に気づいたとき、全ては遅かった。
執務室入り口から現れたのは、使用人ではなく私設兵。
彼等はあらかじめメーベルト伯夫人の命を受けていたのか、実に手際よくルイーゼの退路を塞ぐと、決して彼女に無礼を働かない範疇で、彼女の動きを素早く押さえ込んだ。
「しばらく部屋で食事を摂りなさい。部屋から出ることは許しません」
そう言い残し執務室から出て行くメーベルト伯夫人を、ルイーゼは壁のように立ちはだかる私設兵の肩越しに見た。
申し訳なさそうにしている私設兵へ自室へ戻るよう促され、ルイーゼは容易に外へ出ることができなくなってしまった。
さすがに室内にまで私設兵が居座ることはないが、部屋の外には兵が昼夜問わず、常時監視モードで立っている。
――これじゃあ、エルウィンに連絡を取ることもできない……!
このまま黙ってエルウィンとソフィアの婚約成立を待つなんて、絶対無理!
軟禁生活を強いられているルイーゼの下へ、牧師と元・聖女がやってきたのは、閉じ込められてから一週間後のことだった。
どのような事情があろうとも、週に一度の神への祈りを欠かしてはならない。それはこの世界の常識だ。
「マルグリート様!」
いつもの装束で現れた元・聖女マルグリートに、ルイーゼは一筋の光明を見いだした。
「……貴女は変わりませんね」
ルイーゼの目を見て、まだまだ諦めていないことを悟り、マルグリートは痛ましげに微笑んでいた。
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マルグリートのために紅茶と焼き菓子を用意し、雑談を一通り楽しんだ後――。
「ルイーゼ様、私は今日、貴女を説得するために来ました」
「え?」
マルグリートは強い意志を宿した瞳で、静かにそう言った。
「ルイーゼ様もうかがっていらっしゃると思いますが、妹君とエルウィン殿はソフィア様の番いです。今回発動した魔術は、番いにのみ許される特殊魔術。ルイーゼ様、悪いことは言いません。傷つく前に、ご自分から別れを告げるべきです」
「どうして……!」
「ルイーゼ様は、もうお分かりだと思いますが……あのお二人は、間違いなく番いと呼ばれる存在なのです」
――だから、なんだと言うの?
「今までも、何度も感じてきたのではありませんか? お二人を結び付ける強大で偉大な意思を」
――知らない。私はそんなもの、知らない。
「妹君とエルウィン殿は創造神に認められた運命の恋人なのです」
――そんな噂、私は信じない。
「無理にエルウィン殿の傍に居続けようとすれば、ルイーゼ様が傷つく結果となります」
――エルウィンも、そう、思っているの……?
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