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16.運命の恋人


 ソフィアは救出部隊に救出されていたが、エルウィンの姿を見つけると、感動の再会と言わんばかりに涙ぐみ、彼の名を叫びながら走り寄ってきたのだ。

 突然の乱入者のため、振り上げていた剣の軌道をむりやり変える。結果、攻撃は精彩を欠いてしまい、魔獣をいたずらに刺激しただけになってしまった。


 救出部隊が、ソフィアを安全な場所へと移動させようと近づくが。

「いやっ! 放して! エルウィン様! エルウィン様!」

 ソフィアはなぜか彼等から逃げ、エルウィンにまとわり付く。

「危ないので、早く避難してください!」

 エルウィンがそう叫んでも、ソフィアは聞く耳を持たない。


 ソフィアがまとわり付いてくるため、エルウィンは思うように剣を振るうことができない。いい加減、彼女を強制的につまみ出してやろうとして、その手を伸ばしかけたが、獣の咆哮(ほうこう)に魔獣へと向き直る。

 魔獣の標的が一瞬、エルウィンからソフィアへ移る。鉤爪(かぎつめ)が振り上げられ、ソフィアはその瞳を恐怖に見開きながら、悲鳴を上げてエルウィンへ抱きつく。


「きゃあああっ! エルウィン様ッ!」

 ――クソッ! 何がしたいんだ、この女ッ!!!


 ソフィアがしがみついてきたことで、またエルウィンの重心がずれた。重心がずれてしまえば、剣技に攻撃力は宿らない。

「ソフィア! いいから放――」


 ソフィアの身体を自分から引き離すため、彼女の肩にエルウィンが手を乗せた、その瞬間――――ソフィアとエルウィンの身体を包み込むように、光が集まりはじめた。


「なんだ……これは……ッ?!」

「エ、エルウィン様!!」

 驚きながらも魔獣から視線をそらさないエルウィンと、いきなりの変化に(おび)えて再び強くエルウィンにしがみつくソフィア。


 魔獣が光に(おび)えたように身をすくませるのを、エルウィンは見逃さなかった。

 光の正体も因果関係も分からないが、敵が(ひる)んでいる今、とどめを刺すには絶好のタイミングだ。


 ――彼女を引き離し、剣を構え直し、あの獣の足下へ回り込み、高く飛んで頭上から切り落と――――なにっ?!


 エルウィンが討伐手順をシミュレートしている間に、エルウィンとソフィアを包んでいた光が、どんどん明るさを増す。やがて、臨界点を超えたように、光は爆発を起こした。



 まぶしさと爆風に視界が塞がれる。

 その中で、エルウィンは魔獣の気配を追い続けていたが。

 ――見失った?!

 いきなり全てが消えたように感じ、エルウィンは混乱から目を開ける。



 先ほどまで、辺り一面に獣と血と木々や様々なものが焼け焦げた匂いが充満していたというのに、今はそれらを何一つ感じないのだ。それどころか、清涼な水や青々とした緑の匂いまで感じる。

 エルウィンは慌てて周囲の状況を確認すべく、目を開いた。


 爆発し霧散した光が、焼け焦げた村や怪我人を修復し、土へと(かえ)っていく。


 ――なんだ、これは……?!



「奇跡だ……!」

 エルウィンが連れてきた私設兵の一人がそう呟くと、それにつられたように、兵のみならず、村の住人まで口にし始めている。

「これはまさか……」

「ソフィア様とエルウィン様が『神の奇跡』を……!」


 ――何を馬鹿なことを……!


 ソフィアとセットにされて、エルウィンはようやく自分がまだソフィアにしがみつかれたままであるということを思い出した。

 彼女を引き()がそうとして、その肩に触れた瞬間に事が起こったのを思い出し、躊躇(ちゅうちょ)してしまう。


「エルウィン様……」

 ソフィアが何を考えているのか、エルウィンには分からない。

 ただ、エルウィンの心境を的確に把握しようとさえしないソフィアは、彼に受け入れられていると、固く信じて疑わなかった。




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