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15.龍神の奇跡4


 その話を聞いて、エルウィンは共同教会を後にしたのだが、それはソフィア・メーベルトを探しに行くためではなかった。

 行方不明者の捜索は、その道のプロに任せたほうがいいとエルウィンは考えていた。だから、領内巡回の任へ戻っただけなのだが、教会騎士の目には、『ソフィアの危機を知って、血相を変えて飛び出した』ように見えたのだ。

 まるで、何かに思考を操作されたかのように。


 己の意思で巡回ルートを決めているように見えて、エルウィンは確実に()()()()()()に導かれて、その場へと足を運んでいた。




 ――日が傾いてきたな……。


 周囲が徐々に暗くなりはじめ、エルウィンは焦りを感じていた。

 松明(たいまつ)の準備はしてきたが、明るいうちに移動だけでも終わらせておきたかった。

「林道を抜けた先にある小さい村は、警備に当たれる者がいない」という情報を事前に仕入れていたから。

 教会騎士が追いかけていた中級の魔獣が、他にもいたらシャレにならない。

 なので、馬を急がせて林道を駆け抜けていると、前方に()()()()が見えてきた。


 ――遅かった!?



 平時であれば、のどかな農村だったのだろう。


 刈り取られた沢山のわら、木造の家、木製の農耕道具、それらのほとんどが今は燃え上がる炎の温床となっている。

 赤い村の中に見えるのは、逃げ惑う村人と、犬のような熊のような燃え盛る魔獣。

 魔獣を追い払うために火を放ったが、魔獣は燃え上がりながら村中を駆け回り、それでも仕留めることができなかったのだろう、と推察していると。


「きゃああっ!」


 ――()()声……どうして…………。


 周囲は喧噪(けんそう)であふれていて、よほど大きく特殊な声でもない限り、遠くに響く誰かの叫び声など判別できるはずがない――のだが、エルウィンには分かってしまった。

 ――ソフィア・メーベルトの……声だ。クソッ!

 誰の声が聞こえようが聞こえまいが、村を走り回る魔獣を始末しなければならないことに変わりはない。


 エルウィンは私設兵を救出部隊と魔獣討伐部隊に分け、救出部隊には臨時隊長を設け、自分は魔獣討伐部隊を率い村の中へと入った。


 小さな村ではもう隠れるところもなく、突っ込むと同時に魔獣が襲いかかってきた! 強さは初級から中級程度というエルウィンの見込みは当たっていて、さほど苦戦することはなかった。喧噪(けんそう)の中、瓦礫(がれき)の下にいる虫の息でいる村人を見逃さず、救出しなければならない救出部隊のほうが難易度が高いだろう。


 あらかた片付けたかと油断した不意をつき、巨大な熊のような魔獣がエルウィンの背後から襲いかかる! 紙一重で魔獣の鉤爪(かぎつめ)(かわ)し、反撃に転じ――――、


「エルウィン様ッ!」

 ――なにッ?!


 反撃に転じようとしていたその時、ソフィアが躍り出てきた!

 彼と魔獣の攻撃ライン上に。




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