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「なるほど………。では対価が必要になりますかな。
私1人の魂では、足りませんか?」
クーガーは一歩前に出て跪く。悪魔=対価が必須と考えている以上魂で支払うつもりなのでしょうけど―――
「魂など必要ありません。そんなもの、私には砂粒ほどの価値もありません。
私が求めるのは貴方達の知識、あとは今後活動する上で拠点が欲しいと考えていたので住むところ。
それが対価です」
そう言いきると二人は再び目を丸くした。
魂なんて集めたところで私にとって価値がない。それよりも、この獣人達を見守る方が重要である。
この世界の、小さな輝きの1つを見つけたのだから。
「いえ、それは、それで良いのであれば………ありがたいですが………」
戸惑っているようだが安堵もあるのか、表情は明るかった。
「では交渉成立です。
私がここに居る間は外敵の駆除などもある程度は請け負いましょう。
これから、よろしくお願いします」
こうして私は活動拠点を得た。ここまで落ち着く暇も無かったので、漸く一息つける。
今後はどうするか。それも考えなければならないが先ずは―――
「それなら今日はリンネ様の歓迎会をしましょう!今夜はご馳走です!」
「それはありがたいですが、まずは弔いをしましょう。
被害も出ているのです。その後でも良いでしょう?」
忘れようとしていたのか、逃げていたのか。私に諭されレイリーの表情が曇る。
隣にいるクーガーは心が痛まないわけではないが、恐らく覚悟はできているのだろう。頷くと住民に指示を出し、片付けを進めた。
その日は弔いと片付けで1日を費やし、デスレックスの肉を焼いて簡単な歓迎会が行われた。