THE TEAM!(番外編)〜義臣が泣いた日〜
「あら、何してるの?」
ふんわりした笑顔で夢乃は快に尋ねた。
「ああ、母さんの高校のアルバムがあったから何となく見てた。
やっぱり今より若いな、あまり変わってないけど」
実に素直な感想だった。知ってる顔もある性か、夢乃は美人なままだ。大人っぽさは加わっているが。
「そう? だけど父さんの写真見た?」
「ああ、自分の馬鹿面見せられてるみたいで見たくないがな」
思い出の数々に刻まれている義臣は全て笑っていた。
個人写真に至ってはよく許可されたであろう、コロッケパンと牛乳を持ってニッコリだ。
「まあまあ。だけどね、任務の時は今の快以上に格好よかったのよ。まっ、子供にのろけたくはないからここまでにしておくけどね」
ほんのり朱くなってるあたり説得力には欠けるが、義臣なら納得は出来る。なんせ夢乃を口説き落とした男だから。
「はいはい。だけどさ、一体父さんのどこが良くて結婚したわけ?」
何となく興味はあった。子供の目から見ても夢乃は相手を選びたい放題だったに違いない。しかし、義臣と結婚したのだ。
「そうねぇ、父さんが泣いたからかな」
快は凍り付いた。涙なんてものとは生まれてこのかた無縁だとしか言いようのない男が泣いたという。精々バカ笑いのついでに涙が出てきたぐらいしか思い付かない。
「快、父さんはね、バスターとしてはおそらく掃除屋界最強だろうけど優しい人でもあるの」
それは義臣が夢乃と結婚する前の任務だ。
「隊長! 夢乃が銃弾を受け重傷! すぐに戻ってあげてください!」
まだ戦闘隊長として活動していた義臣のもとに夢乃が重傷だという知らせが入った。しかし、義臣は首を横に振った。
「任務が優先だ。すぐに別の治療兵をこっちに回せ。夢乃チームは援護に入れ」
掃除屋という職業ならば当然の命令だった。しかし、義臣の部下は猛反発した。
「隊長! あなたの奥さんになる人でしょう! 早く戻ってください!」
「そうですよ! 夢乃さんは重傷なんでしょう!」
「そうだ、重傷だ。それを助けられるのは俺じゃないだろう。医者だ」
冷静な判断だった。それは隊長としては当然のこと。しかし、夢乃が自力で治せないほどの怪我なら、本当に命に関わる可能性が高いということでもある。
「ここは戦場だ。バスターなら私情を優先させるな。死ぬぞ!」
凄みの効いた声だった。それがバスターとしての義臣だった。
だが、任務が終了したとき、義臣はすぐにTEAM本社に戻った。そして夢乃から離れなかった。夢乃が目覚める二日間片時も……
「う……ん、義臣?」
朦朧とする意識の中に映る義臣。いつもなら笑顔を向けてくれる男がすっと涙を流していた。
「泣いてるの?」
手をすっと伸ばす。義臣の頬に流れていた温かな水は確かに涙だった。
「……銃弾なんか喰らうなよ。俺をいきなり一人にする気か?」
夢乃の手をぎゅっと握りしめる。心地良い温度がお互いに伝わる。
「……ごめんなさい」
「……だったら早く治せ。結婚するんだろ、俺達は」
それを聞いた快は完全にフリーズした。
「快ちゃん? 大丈夫?」
生気を感じられない息子に夢乃は治療魔法まで使う羽目になったが、やはり頭の回転が速いのか快は一言で片付けた。
「母さん、今のは聞かなかったことにしよう。俺のために」
そう言って快はアルバムを閉じて去って言った。
「さて、出て来たらどうですか社長」
「ばれてた?」
「とっくにね」
義臣は相変わらず無邪気な笑顔で現れた。
「やっぱり快は思った通りの反応をしめしたな」
「仕方ないでしょう? あなたが泣いたのは十六年前に見たきりよ」
義臣が人生で心から泣いたのはあと二回。その一つが快が生まれたとき、もう一つが後に語られる物語に続く……
久しぶりの番外編です。感想をいただけると嬉しいですね☆




