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慶君が来て数日たった。この数日で私はみごとな親鳥になったと思う。
どこに行くにも私の後にトコトコとついて来る可愛い我が子(のような存在)。
本を読んでいるときは横で一緒によみ。遊ぶときは2人で。寝るときは大きなベッドにお父さんと私と慶君の3人で寝ているので私は殆どの時間を慶君と過ごしている。
そんな慶君と過ごしていて私はあることに気づいた。あれ?この子めちゃくちゃ頭いいんじゃね?四歳児にして分厚い本を読んでいる私が言うのもあれだが、この子はとにかく理解力が高い。遊び半分で教えてあげた平仮名をものの数時間でマスターし今はカタカナを教えている。
「これはなんてよむの?」
「これは"まっち"だよ。」
なんて平和な時間なんだろうか。私の隣で絵本を読んでいる美しいお子様が十何年後には美しいヤンデレになっているなんて想像もつかないだろう。
ちなみに今読ませているのはマッチ売りの少女だ。この次はごんぎつねを読み聞かせようと思っている。少しでも道徳心を子供の頃につけさせねば。
「ねぇ、このおんなのこは、おばぁちゃんとずっといっしょにいられるの?」
マッチ売りの少女の本を閉じて表紙を見ながら慶君は聞いてきた。え?どうなんだろう。
「わからないなぁ、でもどうせなら、いきていっしょにいたいよね」
「なんで?」
首を傾げる慶君最高です。
「だってしんだら、けいくんのあったかさわかんなくなっちゃうし」
そう言って握った慶君の手はやはり暖かい。流石子供体温!私に握られた手を見ながら慶君は少しだけ笑ってくれた。
かわええぇぇええ!!!!!!本当に綺麗な顔してんなぁ!!
「じゃあ、つぎはわたしが、よんであげるね。」
それから色んな本を読み聞かせたり一緒に読んだりした。慶君のお気に入りはどうやらマッチ売りの少女のようだ。何で好きなのかは教えてくれなかったけど。マッチ売りの少女がお気に入りとは男の子にしては珍しいんじゃないかと思う。
「けいくんはものおぼえすごいなー。」
「ひながおしえてくれたからだよ。」
「きっとすぐにわたしなんかいらなくなるね。」
「え?」
今日読んだ本の殆ど全てが読めるようになっているであろう慶君は恐らく小学生ぐらいになる頃には私を抜くだろう。精神的には成人している身として悲しいところもあるが子供の成長は少し楽しみだ。
四歳児の身体になってわかる親心。
「いやだ・・・。」
「ん?」
慶君は俯き何かをぶつぶつ言い始めたと思うと突然周りの本がバサバサと音を立てて暴れ始めた。うわ!すご!これ前世の心霊番組でやってた海外のポルターガイストそっくりだわ!あれだよ日本のポルターガイストはアメリカのポルターガイストに比べると大人しいらしいよ!!
「いやだぁ、ひないらなくないから!ぼくからはなれないでぇ!かしこくならなくていいから!」
「うわあ!」
念力で引き寄せた私に抱きつき震える慶君の背中を優しく叩く。
これは確か子供と親に絆が生まれ離れることに恐怖を覚えるやつか。
アタッチメント!!!!ってことは私と慶君には親子の絆が芽生え始めてるんじゃ!!
「けいくんがわたしより、かしこくなったらこんどは、わたしにおしえてよ」
「ぼくが・・・?」
「そうだよ」
「・・・・・」
宙を舞っていた本は床に落ち、慶君の震えは止り暫くすると私から体を離した。そして飛び切りの笑顔を向けてきた。
「ぼくぜったいかしこくなって、しょうらいはひなにとってひつようなひとになるね!」
笑顔が眩しいです!何か自分なりに納得したのか慶君はすごく子供らしい笑顔で笑っている。
「とりあえずおかたづけしよ」
「うん!」