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僕は犯人じゃない  作者: 霜雪 雨多
8/8

放課後

これで完結となります。一応推理ものなので、最初から読むことを推奨します。

ピーンポーンパーンポーン

いきなりですがお知らせです。

5時間目・6時間目は進展がなかったので省略します!


では早速本編へ入っていきましょう。

本日の授業は終了し、もうすぐ放課後になる。


田中先生が話している。


「宿題のプリントを教卓に置いておくので各自忘れずに取っておいてくださいね。では終わります。」


「それでは作用なら。」


日直よ、まだ懲りてなかったのか。作用てクスリでもやってるのかよ。


『さようなら!』


それに対抗するように、クラスメイトはまるで小学生のようにあいさつをした。

お前らもノってるんじゃねえよ。


「大哉、今日は先に帰っててくれ。」


「いいのか?」


いつもなら一緒に帰っているところだが、今日は用事がある。

そして高美のもとへ向かおうとすると、


「頼んだわよ。」


高美がおれとすれ違うとそうとだけ言った。

向こうから来るとは、聞きに行く手間が省けたな。


「ちょっとまってくれ。確認しておきたいことがあるんだ。」


「…何かしら。」


不機嫌そうだな。ボールペンがダメになったなら当然っちゃ当然だが。


「そのボールペンは今日学校に初めて持って来たのか?」


「…? そうだけど。」


よし。予想どおりだ。


「見せたのは、1時間目の休み時間のときだけ?」


「そうね。3時間目が体育でゆっくりできる時間はなかったし。」


その言葉を聞いて、おれの推理に確信が持てた。


「助かったよ。ありがとう。」


おれは教室を跳び出した。

ガッ

文字通り跳び出したおれは、その拍子に鴨居(ググれ)に頭をぶつける。

ちくしょう。推理が宇宙の彼方へとんでいったらどうすんだよ。

痛みでうずくまるおれを見下ろして言った。


「せいぜいがんばるのね。でもそのなりで、どうやって犯人を捕まえるのかしら。」


わかってないなあ。


「現場百編だよ。」


●●●●●●


「探しものはそこにないよ。」


誰もいない教室で、彼女はそこにいた。


「やっぱり佐々木、きみが犯人だったんだな。」


そう。保健室にいるからといって、僕たちは無意識に犯人の候補から佐々木を外していた。

彼女がクラスメイトの中で唯一、授業中でも自由に動けた人間だ。

彼女はこちらを向き、目をぱちくりさせる。


「犯人?わたしは荷物を取りに来ただけなんだけど。

あの、私がいない間に何かあったの?」


「えーと、かくかくしかじかタイム。」


あ、『』をつけ忘れた。


「ふーん。そんなことがあったんだ・・・」


うんうんと頷く。

今なんで概要理解できたんだよ。ほんとにかくかくしかじかタイムって言ってたんだぞ。


「でも、どうして私がその犯人になっちゃうの?」


しらを切るつもりらしい。よろしい。ならば戦争だ。


「じゃあ、その結論にたどりついた推理を聞かせてあげよう。」


どこから始めようか。


「おれはまず、この事件を脳内探偵ホームズに解かせてみたんだ。」


「脳内探偵?」


「あ、そこはあんまり気にしないでいいから。ともかく彼は、ボールペンを入れ替えたという推理を披露してくれたんだ。」


「それでいいんじゃないの?」


「それがだめなんだ。高美は今日初めてそのボールペンを持ってきたんだ。つまり、準備する暇がないんだよ。」


かわいく首をかしげる。


「犯人には予知能力があったってことじゃだめ?」

だめです。


そんな推理小説があったら、たぶんその本燃やされるぞ。


「僕はそれに気づいて、事件を一から考え直してみたんだ。」


ホームズは今回限りでクビになったけどね。


「すると、最初に不思議だと思ったのは高美の席の床の近くに、雑巾で拭かれた跡があったことなんだ。」


「そんなものがあったの?」


「あった。普通に考えて何かをこぼしたのだろうと思うんだけど、昼食はランチルームだったし、こぼしたものが見当たらないんだ。つまり、やはり薬品はあったと推測される。」


「理科室から盗み出した濃硫酸のことね。

でもそうすると、盗み出せるのは授業のあった3年生だと思うわよ。誰とも知れない3年生に目を向けて、そこから犯人を絞るべきであって、私を犯人とするのは筋違いじゃないかしら。」


「それはありえない。」


「なんでよ。」


「ほか濃硫酸では鉄を溶かせないからだ。」


「何言ってるの。硫酸よ。溶かせないわけがないでしょう。」


「じゃあ知識のないきみに教えてあげよう。硫酸は希硫酸と濃硫酸があって、濃度で特徴が異なるんだ。

希硫酸に鉄は溶けるけど、()()()()()()()()()()()。要するに、鉄の表面に溶けないためのバリアが貼られるってことだ。」


「あなた常識はないのになんでそんなことは知っているのかしらね」


うっさい。


「でもそうなるとボールペンを溶かす方法が無くなってしまったわよ。そうなると浅間くんのハンドパワーで溶かすしか方法が…」


まるで僕を一般的な人間として認識していないような言い草だな。」


「まあ、行き詰まったのは事実だ。


「きみを特に怪しいと思ったのは、嘔吐したとき、ビニール袋を用意していたことだ。」


「何? 浅間君は床に吐くタイプなの? 違うよね。そんなの普通でしょ。」


「一見自然な行為のように思えるけどそれは違うんだ。学校で普通、ビニール袋を持ってなんかいないだろ。ましてや授業中、手の届くところにあるわけがないね。」


「たまたまよ。」


「まあ、そういうことにしておこう。でもそのあと、吐しゃ物をトイレに捨てに行っだろ。でも本当は捨てずに用具入れなんかにかくしておいたんじゃないのか。」


「そんなことしたとして何になるの? 保健室に行くことで容疑を逃れようとするならそんな必要ないでしょ。」


「いや、必要なんだ。あることをするのにね。」


「あること?」


最初、思いついたときは冷静になるにつれて、がちでやるわけないと思っていた。しかし、この方法しかない。


「そうだ。きみは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。胃液には塩酸が含まれているからね。」


「なるほどね。でも机上の空論じゃない? 可能な気はするけど、実際に溶かせるのかしら? それに嘔吐したのは偶然よ。都合よくその日に出来るはずもないわ。」


「そう。偶然嘔吐するというのはできすぎてる。それなら意図的に、嘔吐するよう自分を仕向けたらどうだ。」


「できるわけないじゃない。」


「そんなことはない。石鹸を食べるんだ。1~2時間で嘔吐するらしい。ノンフィクションの小説で見たことがある。その代わり、石鹸はアルカリ性だから少し酸が弱くなっちゃうけどね。」


それが溶けたのが表面だけだった理由だろう。


「それだけのために、石鹸を食べるなんてことやるわけがないでしょ。それにもし、中和されてしまったらどうするの?」


咎めるように反論してきた。

「なら最初の状態に戻せばいいだけだ。ボールペンに多少はにおいがつくかもしれないが、何も問題はない。次の機会にまわせばいいだけだ。」


「なるほど。それで薬品の問題は解決ってわけね。」


「犯行の流れはこうだ。まずは朝、石鹸を食べて嘔吐の準備をする。そして嘔吐すると、ビニール袋に入れた吐しゃ物をトイレなんかに隠す。そして3時間目が始まるのをじっと待ち、授業が始まった時間を見計らってビーカーに吐しゃ物とボールペンを入れる。ここまでで質問はない?」


保健室はしんと静まり、佐々木は神妙な顔でおれの推理に耳を傾けている。

「じゃ続きをはなそう。ランチ終了ギリギリになったら、隠し場所からビーカーを取り出す。そして吐しゃ物を処分しようとしたそのとき、犯人にハプニングが起きたんだ。」


「なにかしら。」


「誤って吐しゃ物をこぼしてしまったんだ。」


「それがさっき言ってた雑巾で拭いたあとにつながるのかしら?」


その通りだ。


「でも、そんなの拭けばいいだけじゃない。」


そう。それだけのことだ。拭くものくらいなら教室にも普通にある。だが、犯人にとっては緊急事態だった。


「すぐに処理しないとランチからクラスのみんなが戻ってきてしまうから、相当焦っただろうね。そのままにしておいたら、私が犯人ですと言っているようなものだし、ビーカーに入れた吐しゃ物を捨てるだけの予定だったろうから。床を拭いたもの・・・つまり雑巾だけど、そんなもの持って廊下にでて見つかったら言い訳できない。」


「…」


「だから教室のどこかに、雑巾を一時的に隠しておいて、みんなが帰った後に回収することにした。」


おれは自分のリュックの中に入れておいた雑巾を取り出す。動かぬ証拠である。

佐々木は嘆息し、おれを見やる。


「浅間君、リュックの中汚れてるんじゃない?」


リュックを開けて確認する。

よしっ、現実逃避しよう。

教科書やノートがあれな状態になってたけど、すべて夢だ!

一連の動作を見て彼女は笑いだす。


「まさか、ドジでまぬけで馬鹿であんぽんたんでとんちんかんな浅間君に見破られるとはね。」


「今日のみんな、異様におれのこと嫌ってますよね!」


あんぽんたんと、とんちんかんって古すぎるだろ。よく使おうと思ったな。


「でも訂正する点があるわ。石鹸のほかに、炭酸飲料も胃液を出しやすくするために飲んだの。まあ、これは分からないでしょうけど。訂正すべき点は、容器に使ったのはビーカーじゃなくて試験管だということ。イメージすればわかるでしょうけど、そのほうが確実で、より少ない量で溶かせるわ。」


あっそうか。ビーカーだとどうしても吐しゃ物に触れない部分ができてしまう。でも試験管なら全体を確実に溶かせる。


「だからね、試験官は落として割っちゃったの。片付けるの結構大変だったのよ。」


犯行には人知れず苦労があったようだ。


「あと指摘させてもらうけど、ボールペンを今日初めて持ってきたってことは、すり替えができないのと同時に、私もビニール袋とか石鹸の下準備ができないわよ。」


あっ。


「仮にボールペンを持ってきていることを予測できていたとしましょう。その場合は濃硫酸を薄めて希硫酸にすれば鉄は溶けるのではないかしら。よって濃硫酸説は否定できないのよ。」


あーあー聞こえなーい。


「推理が穴だらけなのはなんだかあなたらしいわね。しかし、こんな穴だらけの推理でたどり着かれるとはつくづく悔しいわ。あなた一体なんなのよ!

でもうまい考えだと思ったんだけどなー。」


そのまま佐々木は語り続ける。


「白状してしまえば、この前、あのボールペンは高美に買わされたのよ。私は逆らえなかった。弱みがあるわけではないけど、今後の学校生活を考えると命令に従わざるをえなかった。

ボールペンを溶かしたのはその憂さ晴らしみたいなものよ。ざまあみろってかんじよ。

あーあ。これであしたから私の中学校生活は終わりか。」


何を言っているんだ。


「え? なんで終わるの?」


「は?」


佐々木はポカンと口をあけ、間の抜けた声を出した。


「え、でも犯人を見つけないと浅間くんは社会的に死ぬでしょ。もしかして私を庇ってくれるのかしら。」


「いや、普通に明日いうよ。」


庇うだなんて。しかるべきむくいをくらわせてやらねばならんのにそんなことをするわけがない。


「たぶん私はいじめられるわよ。」


「それはないね。だってさ、動機を聞いてみれば、それ明らかに恐喝じゃないか。その事実が露呈して困るのは高美の方だろ」


「高美に真っ向から意見できるような人がいるとは思えないけれど…」


「まあいじめられそうになったらその時はその時だ。運が悪かったと思って諦めてね。」


「諦めてねって何よそれ」


「そういう展開になってもぼくがきみに対して擁護したりはしないよ。ぼくが犯人でないことは証明されたんだから、その後起こることにまで関わる義理はないね。」


「浅間くんって、優しいのか厳しいのか薄情なのか結局よくわからない人ね。」


佐々木はそう言った。

僕は自分の思うままに生きているだけなんだが。


さ、帰ろうか。

残業を無駄に引き延ばす必要性はどこにもない。

僕はやはり犯人じゃなかった。懸念は何もない。安心して明日を迎えることができる。


教室を出ようとすると佐々木が背後で何かを言っているような気がしたが、耳を傾ける必要はない。

そのまま帰った。



残された佐々木は、一人教室で呟いた。


「浅間くんは、宿題のプリントを持って帰ったのかしら」

いかがだったでしょうか。

主人公がなんだか突飛なやつになってしまいましたが、笑えるシーンをそれなりに入れたつもりです。楽しんでくださると嬉しいです。


感想やご意見、質問等をぜひお寄せください。執筆のやる気が出ます。

もしも推理に穴があったり、考察に不備があれば指摘してくださるとありがたいです。

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