2時間目 理科
はあ、化学とかは好きなんだけどな。生物分野は苦手だ。
本日はお手やわらかにお願いします。
「じゃあ前回の復習からだな。浅間、胃液中の消化酵素を答えてみろ」
げっ、ウソでしょ。いきなりあてられた。
昨日せっかく神社でお参りしてきたのに!(一円だけだったけど)
もう神は信じないことを誓う。
「はやくこたえろよ」
大哉が小声でせかす。
えーと、えーと。
「Pepusi と胃酸ですか?」
クラスメイトから笑いがもれる。あれっ、違ったか?
「浅間、なんだPepusiって。英語っぽくすればいいってものじゃないぞ。どうやって覚えたんだ。
あと、胃酸は胃液の成分だ」
正解じゃないの?
「しかし、消化酵素ではないからな。勘違いしないように」
ありゃりゃ。そうだったか。
さっそく心の中で唱えて覚える。胃酸は消化酵素じゃない、遺産は消化酵素じゃない。カン違いしないでよねっ!
これでカンペキだな。
「答えはペプシンだけで、タンパク質にはたらく消化酵素だ。消化酵素はテストで必須だからきちんと覚えておくこと。わかったな」
反省します。
「では金本、男の人生に必要なものはなんだ。」
おい、理科の質問じゃないだろ。
金本はいつになく真剣な表情で質問に答える。
「金と女です」
率直な欲望を堂々と言うなよ。ただの下衆じゃないか。
「その通りだ。おれもそう思うぞ。」
二人は力強く握手をした。
なんでこの人教師やってるの?
「今日は養分の吸収からだったかな…って大丈夫か佐々木」
突然佐々木が口を押さえてビニール袋を取り出した。
そして
吐いた。
あまり朝食を食べなかったのかひどくはなかった。しっかし、さっきの話のせいで気持ち悪くなったんじゃないのか?
正直少しにおいます。
「お、おい大丈夫か?取りあえず保健室行って来い。清水、付き添ってやれ」
「い、いや、大丈夫です。それに、これも捨てなきゃいけないので」
そう言って佐々木がビニール袋を示す。
「そうか?それならいいんだが。無理はするな」
ダサッ キモッ 信じられない
さっきのおれのときとは違う笑いがおこる。
高美のグループだ。
「お前なに吐いちゃってんの?まじ臭っ、あー臭あー臭」
さらに金本がわざとらしく鼻をつまみながらはやし立てると、佐々木は顔を真っ赤にしてそそくさと教室を出て行ってしまった。
「こら、おまえら静かにしろ!」
先生が注意して、授業を続けようとする。
しかし、なおも続くクスクス笑い。
嫌な空気だ。
大哉が目配せをしてくる。この空気を同じように感じているようだ。
別に笑うことじゃないだろ。
そう思って怒鳴ろうとしたそのとき。
「うるさい。授業のじゃま。人として恥ずかしくないのか」
平坦な声で。しかし、毒のある言葉で制したのは上野だった。
「ただの体調不良だろ。それを笑うとかどうかしてる」
その言葉に教室がしんとした。
おれは胸がキュンとした。かっこええ。
あ、ホモじゃないから。誤解しないでくれよ。念のため。
「上野の言うとおりだぞ。さあ、授業に集中しろ」
そうは言うが、全く集中できない。
上野が言いたいことを全部言ってくれたが、佐々木は本当に大丈夫だろうか。
はあ。なんでこんな人たちと一緒のクラスになってしまったのだろう。大哉と同じクラスだったことが救いか。上野もいい人だけど。
そしてなぜこの世にピーマンというものが存在しているのだろう。
そんなことを延々と考えていると、いつの間にかチャイムが鳴っていた。
まったく頭に内容が入ってこなかった…
え? もちろん世界遺産が消化酵素ではないことは覚えてるぞ。当然じゃないか。




