プロローグ2 聖剣降臨
農業大国オースリン
農業、畜産、海産と食料を産業とする国である。
その首都ブルームは一流の料理人が集まり己の腕を競い合う正に食の都と呼ぶに相応しい街である。
しかし全ての国民がその恩恵を受けられる訳では無い。どの時代、どの国でも貧富の差は有り、人を雇う側の人間が富を独占し雇われる人間が割りを食らう。
いや、雇われるだけまだマシなのかもしれない。
貧しくとも今日の食事には有り付けるのだから。
それすらも溢れた人間は一日の命を繋ぐ為に生ゴミを漁り僅かな食料を奪い合う。
そんな住人が集まるスラム街で、ある青年が身ぐるみを剥がされて倒れていた。
私刑でも受けたのか身体中痣だらけ顔もパンパンに腫れ上がっている。
彼の名はルクス。とはいえここ最近ではその名前で呼ばれることはない。その見た目からヒョロやらガリなど不名誉なあだ名でしか呼ばれていない。
彼の17年の人生は決して幸せとは言い難い。
先ず彼は生まれてすぐに孤児院に捨てられた。
生来、気弱な彼は院の兄弟達からイジメの的にされ泣かされてきた。
そんなときはいつも院長先生が泣き止むまでずっと抱きしめてくれる。そのときだけ彼は細やかな幸せを感じられた。
院長先生は口癖の様に彼に諭す。
「いいかいルクス?やられたことをやり返す事はいけないことなの。そんなことをすれば永遠と繰り返すことになるわ。それは神が最も悲しむ事」
ギリアム教のシスターでもある彼女はルクスに神の教えを伝える。
『神は耐え忍ぶ者を見捨てはしない』
『神は恥じぬ行いを見逃しはしない』
「ルクス?真面目に生きなさい。人を貶めることを恥と思いなさい。そうすれば神はいつも貴方の傍にいてくれますよ。」
院長先生が大好きだった彼はその言葉通りに生きてきた。
(でも先生……いいことなんか一つもなかったよ?)
簡単な読み書きと計算ができた彼は12歳のとき商人の見習いとして働き出した。
オースリン王国では奴隷制度を禁じている。しかしその生活は奴隷そのものであった。
給金など無く与えられる食事も僅かなものでしかない。いつも腹を空かし寒さに震えていた。
それでも彼は耐えた。院長先生の言葉通り仕事も真面目にこなしてきた。しかし残念ながらこの世界では真面目とは褒め言葉ではない。不器用とイコールであり生きにくいということである。
同僚は彼に横領の罪を被せた。
結果、店を追い出され路頭に迷った挙句スラム街の住人に捕まり身ぐるみを剥がされた。
(なぁ神様とやら?僕の傍にいるのかい?今の僕をみてるのか?それとも見逃してるのかい?助けてくれるなら今以外ないんじゃないか?)
ポツポツと降り出してきた雨は殴られて熱くなった身体を急激に冷やしていく。
(あっ……ダメだ………死ぬなこれは…………)
このままでは凍死してしまう。しかし彼に生きる気力はもうなかった。
(そういえば死ぬときは光が差し込み天使が降りて来るって本当かな?)
そう思ったとき本当に雨雲に隙間が出来、一筋の光が彼を包んだ。
「え⁉︎……………マジ………で?」
しかし降ってきたのは天使では無く一本の剣であった。
勢いよく降ってきた剣は彼の足元に突き刺さり神々しい光を放っていた。
ルクスはその光に暖かみを感じながら意識を失った。




