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清廉勇者と外道ダンマスの物語  作者: ハル
第1章 二人の生き方
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魔人の章 六部 英雄の覚醒

ロイス達が扉を開けそこで見たものは……


「ぐっ……あっ……ぼ、坊主に…嬢ちゃん?どうやって入ってきたんだ?」


「ザバンさん!」



ザバンがシルバーウルフ三匹を相手に戦っている現場だった。

ザバンはシルバーウルフにマウントを取られ、今まさに喉笛に嚙みつこうとしているのを手持ちの槍で防いでいるところだった。


「す、すまねぇどうやって入ったか知らねぇが助けてくれ……礼ならするから…俺だけじゃ手に負えねぇ……」


「わ、わかりました!行くぞミリィ!」


「う、うん!」


本来なら1パーティしか入れないはずのボス部屋だが何故か普通に入れてしまった二人は一瞬、呆気に取られたが今はそれどころではない。

恩を受けた人物が命の危機に瀕しているのだ。考えるのは後にして救助に向かうことを決心する。


「ミリィ!援護を頼む!」

「了解!」


ロイスはザバンにマウントをしているシルバーウルフに向かって駆け出した。

そしてミリアムは他の二匹のシルバーウルフが向かってこないように牽制の為、雷矢サンダーアローを放つ。


シルバーウルフ二匹は雷矢サンダーアローを躱す為に後ろに飛び退くが足止めの役割は十分こなしている。


「そこを退けぇ!」


ロイスはマウントを取っていたシルバーウルフ目掛けて剣を振り抜いたがそれに気付いたシルバーウルフが寸でのところで身を躱す。


救出に成功した二人はザバンの身の安否を確認した。

「ザバンさん!大丈夫ですか⁈怪我の具合はどうですか?」


「すまねぇ……助かったぜ。まだかすり傷程度だ。俺もまだやれるぜぇ。」


ロイスもザバンの身を確認するが強がっている風でもないので本当のことのようである。


「それにしてもなんでザバンさんがここにいるんですか?」


ロイスはシルバーウルフからは目を離さずに思った疑問をザバンに問いかけてみた。


「ひゃっひゃっひゃっ!お前達を見てるとな……昔の熱かった自分を思い出しちまってな…………

こんな歳だがもう一回挑戦してみたくなっちまったのよ。」


「ザバンさん……そうだったんですか……」


「だけだよぉ……やっぱ想いだけじゃ力の差って奴は引っくり返らねぇな……お前達が入ってこれたのも、もしかしたら迷宮ダンジョンが俺を敵とすら思ってないってことかもなぁ……」


哀愁漂う背中を見せるザバンにロイスは思う所があるのか励ます言葉を投げかける。


「そんなことないですよ。向こうも三匹、こっちも三人。ここからですよ!一緒にアイツらをやっつけましょう!」


「坊主…………ありがとよ……付け焼き刃の連携になっちまうがお前がリーダーだ!今は歳は関係ねぇ!遠慮せずに命令してくれ‼︎」


自分の倍以上の年齢の人間が信用する。と言ってくれた。

これにロイスは少し嬉しくなり、そしてやらなければ。という使命感に満たされていく。


「わかりました!ではフィニィッシャーはミリィです。シルバーウルフを彼女に近づけないように立ち回って下さい。」


「オッケー!嬢ちゃんにゃ指一本触れさせねぇぜ!」


「ミリィ!普通に撃ってもシルバーウルフには当たらない!無駄撃ちは極力控えろ!俺とザバンさんで隙を作るから自分のタイミングで撃ち抜け!」


「了解!二人共頼んだわよ!」


シルバーウルフ。

外見は普通の狼に酷似しているが立派な魔物である。

通常の狼よりもふた回りは身体が大きく銀色の毛に覆われている。その毛は氷系魔法に強く保温性に優れている為、毛皮は重宝され高値で取り引きされる程人気の高い素材である。

シルバーウルフは俊敏であり身体能力は高いが慣れてしまえばそこまで強い魔物ではないが討伐難易度はそこそこ高く設定されている。その理由が連携力の高さにある。

シルバーウルフはほぼ単体では動かず常に複数で行動することで知られている。

そしてテレパシーで意思疎通を行なっているのでは?と思わせるほどの連携で敵を攻め立ててくる厄介な魔物なのである。


「おらぁ!」


ザバンはミリアムに近づこうとしているシルバーウルフに対して槍を振り回して牽制する。

その技量はお世辞にも高いとは言えないが自分も役に立とうと必死なのは二人にも伝わってくる。


しかし振り回す程度ではシルバーウルフにはかすり傷一つ負わすことはできない。

だがロイスはそれでいいと思っている。傷を負わす必要はない、自分達には強力なアタッカーが後ろに控えているのだから……


「ザバンさん!いい調子です。当てる必要はありません。隙を作ればミリィが一撃で決めてくれますから!だろ?ミリィ。」


「と〜ぜん‼︎天才魔女っ子ミリィちゃんにまっかせなさい!」


「ひゃっひゃっひゃっ。頼もしいねぇ!俺も若い頃にこんなパーティに恵まれたかったぜ!」


そんな会話を挟みながら戦闘を続けていく。

そこへ飛びかかってきたシルバーウルフの爪を皮一枚のところで躱す。そして空中で身動きの取れないシルバーウルフに体当たりをかました。


「ミリィ!今だ!」


「了解!サンダー……ちょっとザバンさん!射線に入らないで!当たっちゃうよ!」


「す、すまねぇ嬢ちゃん!」


ロイスが作った隙をミリアムは狙い撃とうとするがそこに丁度ザバンが射線に被り発動を中断する。

ザバンはすぐに飛び退くがシルバーウルフは既に体制を整えており好機を逸してしまった。

やはり付け焼き刃のパーティでは上手く連携が取れず四苦八苦してしまう。


「今のは仕方ない。俺が飛ばす方向も悪かった。

ザバンさん!気にせず次のチャンスを待ちましょう!」


ロイスはリーダーとしての能力を遺憾なく発揮しているが正直なところ連携力は向こうのほうがずっと上手である。

なかなか攻めきれずに戦いは長丁場に差し掛かろうとしていた。

ミリアムにしても牽制の為に何発か魔法を放っており、このままでは魔力切れを起こしてしまう。

魔法を撃てない魔導師などただのお荷物でしかない。形勢は一気にあちらに傾くだろう。


ここでロイスはある決断をする。


「ザバンさん!一匹なんとか抑えて下さい!俺が飛び込みます!」


「おい坊主!なにす…」


言うや否やロイスはシルバーウルフが二匹固まっているところに走り出す。

シルバーウルフは二手に分かれて左右からロイスに飛びかかった。


左手の小盾バックラーで受けようとしたがシルバーウルフは身を捩りロイスの肘に噛み付く。

牙は深々と突き刺さりロイスは苦痛に顔を歪める。

しかしここまでは想定内。右方向から飛びかかるシルバーウルフの口にロングソードを深く突き刺した。


「ロイ君!」


「坊主…無茶しやがって。嬢ちゃん!こっちの奴の牽制を頼む!」


ザバンは噛み付かれているロイスを助ける為に彼の左手側に駆け出した。



「この!坊主から……」

ザバンは持っている槍を大きく振りかぶり……



「離れろ‼︎」

横薙ぎに振り抜いた…………



そして…………




ロイスの脚が宙を舞った。





(えっ?)

ミリアムは自分の目に映る光景に理解が追い付いていない……

(なんで……ロイ君が?…………ザバンさん…えっ?なに…これ?)



ザバンは倒れ込むロイスに近づき縦に槍を振りかぶる。

「おらぁっ!もう一丁!」


勢い良く振り降ろされた槍はロイスの残った右脚を易々と切断した。

そして持っている槍を地面に深々と突き刺し……


「よっし!作戦成功!さっすが俺様だな。」



遅れてやってきた激痛にロイスが叫び声をあげた。


「ガアアアアァァァァァ!!!!」


ミリアムはその声に我に返り大声をあげる。


「あ……あ…あんたなにしてんのぉぉ!!」


「ん?ああ……そっか…このままじゃ死んじまうな……止血してやらねぇとな」


素っ頓狂な声で返事をしたザバンは両手に二つの火球を灯す。


「ほれ。火球ファイアーボール。」


撃ち出された火球はロイスの切断面に当たりジュウジュウと肉を焼き焦がしていく。


気絶寸前の激痛に更なる叫び声をあげるロイスにザバンは語りかけた。


「んん?よし。血は止まったな。おおい……まだ気絶すんなよ…こっからが見ものなんだからよ」


そう言ってロイスが落としたロングソードを遠くに蹴飛ばした。


「ロイ君‼︎今助け……」

ミリアムが駆け出そうとするとシルバーウルフが行く手を遮り唸り声をあげる。

「うっ……あんた‼︎一体どういうつもりよ‼︎」


ミリアムは怒髪天を衝く勢いで怒り狂ってザバンに問いただす。


「ぷぷっ…お前ら……まだわかんねぇのか?もしかしてアホの子ですか?もうちょっと頭回せよ…嵌められたんだよ……俺が嵌めてやったんだよ!あーひゃっひゃっひゃっ‼︎ああ…お腹痛い。こりゃ傑作だわ」


大声で笑い狂うザバンに意識朦朧のロイスが声を上げた。


「あんた……何者だ……ザバンさんじゃ……ない…のか?」


「おお?まだ話しかける余裕があんのか……すげえな坊主。しゃあねぇなぁ……教えてやるよ…

ザバンなんて男は元からこの世に居ねえよ。俺のこの顔に覚えはあるか?」


そう言ってザバンは両手で顔を覆いゴシゴシと擦り始める。するとそこには先程とは違う顔に変わっていた。


「あ、あんた前の冒険者組合ギルドにいた浮浪者じゃない。」


「た……たしか……サバトって……言ったか……」


「なんだ!覚えてくれていたのか!そりゃ光栄だねぇ……期待の新人君……」


ロイスは覚えていた。前の冒険者組合ギルドでいつも自分に恨みがましい目を向けて睨んできた男が確かにこの男であった。

「な…んで……あんたが……行方…不明に……」


サバトはロイスの身体を踏みつけ高らかに笑い語り出す。

「よく聞け雑魚ども!お前らがこのボス部屋に入れた本当の理由はなぁ………………このサバト様がボスだからよ!ひゃっひゃっひゃっ!」


「………………」

ミリアムは必死に理解しようとしているのか押し黙ってしまっている。

サバトはさらに説明を続ける。


「俺様は行方不明になってただろ?実は俺はこの迷宮ダンジョンの最奥にある魔石の番人……ダンジョンマスターになってたんだよ!」


「ダンジョン……マスター?」


「いい…そういうのはいいから……懇切丁寧に説明するつもりはねぇ。お前らがわかっていいのは俺が捕食者でお前らが網にかかった獲物だってことだけだ。

俺はなぁ……お前らがここに来るのをずっと待ってたんだよ。」


「な…んで……俺達に……」


ロイスの問いにサバトはまた狂ったように笑いだす……ひとしきり笑った後、急に真顔になり返事をしてやる。


「決まってんだろ?お前が気に入らねぇからだよ。」


「……はぁ?……それ……だけで?」


「なぁロイス君よぉ……俺とお前で何が違った?

冒険者になった歳は同じ……動機だって似た様なもんだ。お前にあって俺になかったもの…それはあの嬢ちゃんだ……

あんな可愛い天才魔導師を連れてるだけでお前は期待の新人と呼ばれて片や俺はクズ以下の扱いを受けてきた。不公平だとは思わねぇか?

俺はなぁ…………お前のことが…ず〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っと前から……」


サバトはロイスの眼を覗き込む様にして呟く。


「憎かったんだぜぇ〜……」


ロイスはその眼を見て戦慄が走る。

信じられない様な眼をしている……憎悪、憤怒、怨恨、嫉妬、羨望、そのどれでもない様であり、それら全てをごちゃ混ぜにした様な……そんな眼をしていた。


(なんだこいつの眼は……人間がする様な眼じゃない。こいつは……化け物だ……)


「……れろ…………ロイ君から……離れろ!さっさと……離れろよぉ!!」


ミリアムはブツブツと言い出したかと思うと途端に大声を上げてサバトに威嚇し出した。

どうやら理解の限界を超えて切れてしまった様である。

身体から魔力が漏れ出し空気がチリチリと音を立て始める。


「駄目……だ…ミリィ…………こいつから……逃げろ……」


(あともう一押しだな…………)


サバトはミリアムの威嚇を無視してシルバーウルフたちに命令を下す。


「おいお前ら。このガキの左手嚙み砕いとけ……

変な邪魔されちゃ興醒めだ。右手は残しといてやれよ。ズリズリする手も無くなったら流石に不憫だわ……俺ってば優しいねぇ〜、あっ!褒美だから切った脚は食っていいぞ。」


「やめろぉぉぉ!!あんたらぁ!ブチ殺すぞぉぉぉ!!!」


ミリアムは完全に我を失って吠えだす。

そして彼女に異変が起こり始めた。ポニーテールにくくっていた髪留めが弾け飛び赤い髪がうず高く舞い上がり身体が仄かに発光し始める。

周りの空気が電界を帯び始めバチバチと音を立てだした。

剥き出しの魔力がサバトに突き刺さり彼は後ずさる。


(なんちゅうプレッシャーだ……だが完全に来たな……)


「ミリィ……一体……なにが……」


「決まってんだろ。覚醒したんだよ……英雄様がな…………」



次回はちょっとグロ&胸糞入ります。

耐性のない方は………………訓練だと思って頑張って下さい。

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