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清廉勇者と外道ダンマスの物語  作者: ハル
第1章 二人の生き方
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魔人の章 五部 仕事納めの探索

迷宮ダンジョン最奥にあるコアルーム、その一つ手前に白黒のモノトーンを基調にしたプライベートルームがある。

そこに赤いソファーに深くもたれながら下品な男が宙空を見て、これまたニタニタと下品な笑みを浮かべていた。


「全く毎日毎日精がでるねぇ。そんなに覗きが楽しいのかい?サバト」


そう皮肉な言葉を吐き出すのは緑の毛玉。名前はマリモ。

毎日の辛辣な言葉にも慣れたものでサバトは覗きを続行しながら適当な返事を返す。


「何言ってんだ。これは監視だよ。か・ん・し。

家畜の状況を把握するのもマスターの立派な仕事だろ?」


ダンジョンマスターの能力の一つ。自己のエリア内で有ればどの場所どのアングルからでも脳内にその映像を映すことができる。

それを利用して出来ることといえば…………下衆な男性諸君ならばお分かりだろう。


「確かにそうだが受付嬢の水浴びを毎日欠かさず見る必要なんてあるのかい?全く……品性の欠片というものが有れば煎じて君に飲ませてやりたいね。」


「品性なんてもんでマスターとして成長できんなら幾らでも飲んでやるさ。よし、もっとアングルを下から舐め回すようにっと…………しかしどうよ?俺の華麗な策謀は。見事にハマって家畜共がウヨウヨと舞い込んできてるだろ?恐れ入ったか!」


サバトの策は資源で人を呼び込み迷宮ダンジョンに街を造らせてそこに住まわせる。そして魔力を少しずつ頂戴していくというものである。


「恐れ入りはしないが感心はするよ。こんな迷宮ダンジョンをよく考えつくものだ。」



「ふふん。しかも此処の迷宮ダンジョンは実入りは程々にして難易度もそこまで上げない予定だ。そうする事によって熟練冒険者は他所へ行き、冒険者組合ギルドは新人冒険者達の教育の場に利用するはずだ。ならこのコアルームへ到達する奴らは居ないって寸法よ」




一見、低難度の迷宮ダンジョンに思えるが実はコアルームへ到達する為には光るキノコの宝物部屋からある手順を踏まねば立ち入る事が出来ずその罠も凶悪を極める。

熟練高ランク冒険者ならいざ知らず、新人冒険者にはとてもではないが攻略できるような代物ではない。


「へぇ。サバトにしてはよく考えたね。でも強い冒険者が居なければ君が強くなるのも時間がかかってしまうよ?良いのかい?」


「時間ならかければ良い……肝心なのは此処を攻略されない事だ。これが元人間の知恵ってやつだよ。全ては俺の思う通りよ。」


「流石の僕もここまで上手くいくとは思いもしなかったよ。更に毒を使って精神のアッパーダウンを繰り返し揺さぶる……なかなかに効率的じゃないか……やることがエグいねぇ…いや下衆いと言い換えておこう。」


「ひゃっひゃっひゃっ‼︎お褒めに預かり光栄でございますマリモさん。」



ここで普段は無感情なマリモだがある不安を感じていた。

そのことは当人であるサバトにも告げておくべきであろう。


「だがこのやり方はかなり際どいね……もしも神に見つかったらどうする?消去デリートされても文句は言えないよ?」


「神がなんなのか知らねぇが静かにやってりゃバレねぇよ。俺がそんなヘマをするかってんだ。」


もう彼には何を言っても無駄であろう……

マリモは呆れたような口調でサバトに話しかける。


「まぁ。君がいいならもう忠告はしないよ。好きにすれば良い。

別件だが例の作戦はどうする?その為に大分と仕込みをしてきたんだろう?」


その言葉を聞いてサバトは覗きをやめてマリモの方を向いた。

その顔はいつになく真剣である。


「明日だ……年末の明日に決行する。ここが踏ん張り所だな……そこが俺のターニングポイントだ。」


「せいぜい頑張ってくれ……死なないことを祈ってるよ。」


そう言ってサバトは日課の覗き……もとい監視に戻っていった。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


聖歴2017年 12月31日


今日は今年最後の日だ。


年が明ければ俺達は15歳になる年だ。

女の子なら結婚を意識しだしてもおかしくない年齢になる。


だから決めた。今日の新年の鐘が鳴るときにミリィに俺の想いを告げる。


まだ肩を並べるという目標は達成していないがこのままでは後何年かかるか、わかったもんじゃない。


今から考えるだけで手が震えてくる。

フラれちゃうかな?そんな事意識した事も無い。とか言われたらどうしよう。


それがキッカケでペアを解散されたら俺は死ぬかもしれない……


やっぱりやめようかな?……いやでも男が決めた事だ。どんな結果でも受け入れよう。


願わくば来年から新しい二人の関係が始まりますように…………



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




ロイスは、ふぅっ。と息を吐いて日記を閉じる。

新年の鐘のときを考えると気が重いが今は今日の仕事を無事にこなさないといけない。


怪我をして告白が出来ませんでした。では話にならない。

ロイスは気を引き締めて自分の頬を、パンッ!と叩いた。


「よし!行くか。」


ロイスはとりあえず朝のミッションに取り掛かる。

これが恐らく今日の最大の山場であろうミリアムを起こすミッションが待っている。

昨日のような事で喧嘩になれば夜のイベントが台無しになってしまう。

緊張した面持ちで部屋を出ようとすると……


「おっはよ〜!ロイ君。起きてる〜?」


ミリアムは先に起きてきてロイスの部屋の扉を開けてきた。

ロイスよりミリアムが先に起きてくる……それは年に片手の指で数えても余裕で余るほどの珍事である。


「あ、ああ……おはよう。ミリィが俺より早いなんて今日は雨でも降るんじゃないか?」


「今日は迷宮ダンジョンに行く日でしょ?

だったら雨でも関係ないじゃない。今日は興奮しちゃって早く目が覚めちゃった!」


やはり採取も悪くはないが迷宮ダンジョン探索には比ぶるべくもない、実入りは段違いである。

ミリアムは探索を楽しみにしていたようだ。


高難度のミッションを軽々と乗り越えてしまったロイスは今日は幸先がいいな。と思い探索の準備に取り掛かった。


「一応、食料なんかは多めに持って行くけど夕方には村に戻るぞ。冒険者組合ギルドの方で年越しのパーティをするみたいだからな。」


「オッケー!今日は食いまくってやるわよ!」


ミリアムの気合が空回りせぬよう祈りながらロイス達は朝食を取った後に迷宮ダンジョンへと向かった。



迷宮ダンジョンの入り口である洞穴の周りは砦と言わんばかりの柵が設けられていて、何人かの衛兵が立っている。


これは魔物が氾濫したときに村へ被害が出さぬ為の防波堤であり、中に潜る冒険者達の管理も請け負っている。

これにより今何人の冒険者が中にいるのか……また未帰還者は誰なのかを把握する為である。


ロイス達は入り口へ向かい衛兵達に自分達が中に潜るよう告げた。


「Eランク冒険者のロイスとミリアムです。迷宮ダンジョンに今から潜りますが良いですか?」


「はいよ。ロイスにミリアムね。オッケーだ、今日は年末だからな。無茶して年越しできないなんて事がないようにな。」


笑顔で挨拶を交わして二人は中に入る。

既に何人かの冒険者は先に入っているようで遠い位置であろうか戦闘音が微かに聞こえる。


「ミリィ。作戦と言ってもいつも通りだけど後ろの警戒は頼むぞ。前は任せておけ。」


「了解。それで今日ボス部屋はどうするの?できれば入りたいんだけど……」


ミリアムの提案にロイスは少し怪訝な顔をする。

ロイス達は初探索のときより迷宮ダンジョンに潜ってはいるがボス部屋には入っていない。やはり以前のトラウマのようなものがあり敬遠したいところではある。

しかし、今のミリアムは以前とは違う。前回のような失態はしないだろうとも思う。なのでロイスは……


「今日はボス部屋前までは探索する。その時の体力、魔力の残量で判断しよう。まぁ空き状況にもよるけどな……」


調査により、ボス部屋へは1パーティしか入れない事も判明している。入室すると入り口が閉まってしまいクリアするか全滅するまで開く事はない。

これは他の迷宮ダンジョンでもよく見られる現象である。


二人は慎重に奥へと進んでいく。

魔物や罠にも注意は必要だが他の冒険者とのバッティングにも注意は必要である。

迷宮ダンジョン内は基本的に冒険者の自己責任とされていて生きるも死ぬも本人達の責任である。


その為、恐喝や手に入れた財宝の強奪など諍い事も頻繁に起こり自分の身は自分で守らなければならない。

下手に死にそうだからといって手助けをすると後々頼んだ頼んでない、などと揉め事に発展してしまうので基本、近づかないに越したことはないのである。


ロイスはルートを選びながら奥へと進む。


「しかし不思議だな……以前より規模は広くなってきてはいるけど、出てくる魔物や罠の凶悪さは変わっていない。ミリィはどう思う?」


迷宮ダンジョンは成長する魔物と言われ時間が経つ毎にその難易度も高くなるものだがこの迷宮ダンジョンではそういった兆候は一切見られない。

たかが二ヶ月と言われればそれまでだがロイスは何か意図的なものがあるんじゃないかと疑っていた。


「別にいいんじゃない?成長しないなら、それはそれでこの迷宮ダンジョンが間抜けってことでしょ?私達にとっては良い訓練にも稼ぎ所にもなるんだから都合が良いじゃない。」


「俺達を強くする為の迷宮ダンジョンねぇ」


ロイスはまだ最奥にあるという魔石も見つかっていないと言われているこの迷宮ダンジョンに意図的なものを感じ少し不安になる。

まぁそんなものを自分が考えても仕方がない。

今は探索中である。気を張り直してさらに奥へと進んでいった。




それから幾時間か経ち、二人はそこそこの魔物を倒し討伐証明とされる部位を剥ぎ取っていく。

採取にしても今日はなかなかの物を取ることができたので一日の稼ぎとしては十分過ぎる成果といえよう。


そして今、二人はボス部屋の前まで到達している。

「ミリィ。魔力の残量はどうだ?稼ぎとしては今日は十分なものが取れたしキツイなら切り上げてもいいぞ?」


「まだ全然余裕よ。前回のミリィちゃんとは違うのですよ!前回とは!」


うーんと唸りながら思案するロイス……自分も体力的にはまだまだ平気である。前回のヒュージスライム程度ならばもうあんな事にはならないだろう。

しかしここのボスは毎回、変化するらしい……

ゴブリンロード、将軍ジェネラルオーク、ヒュージマタンゴ、それに小山程ある虫型の戦車タンクヘラクレスが出たとの報告もある。

ここにいる雑魚達より一段も二段も上の魔物である。考え無しではやられる危険性もあるが……

しかし今のミリアムならば……とも思う。


「とりあえず開けて見ましょうよ。魔法が効きそうにない奴なら引き返しましょ。」


「そうだな。対策はボスを見てからにしようか。」


そうして納得したロイスはボス部屋の扉を開ける。


そこには信じられない光景が映っていた。


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