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清廉勇者と外道ダンマスの物語  作者: ハル
第1章 二人の生き方
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魔人の章 四部 キノコ村

聖歴2017年 12月30日


迷宮ダンジョンから脱出した俺たちはあれから慌ただしい日々を過ごしている。


冒険者組合ギルドに新しい迷宮ダンジョンが生まれたと報告をした俺たちは見事Eランクの昇格を果たした。


冒険者組合ギルドはすぐさま腕利きの冒険者を派遣し内部を徹底的に調査をしたが不思議なことに最奥にあるという魔石の発見には至っていない。


しかし内部や近隣の森に生えているキノコ等の資源が豊富なことが判明しアルツール地方の領主はこの近辺を管理するダンジョン街の建設を決定した。


迷宮ダンジョンから魔物の氾濫を抑える防衛要員として冒険者の派遣を要請。

冒険者組合ギルドはアルツール地方に出張所の建設を決めた。


そして俺とミリィはその出張所に移ってきた。


人が移り住めば宿が要り、宿を建てる為にまた人が要る。

またその人が消費する食材や生活用品の為に商人は物を仕入れて売り捌く。

そうして今この地方は未曾有の建設ラッシュによる好景気の真っ最中だ。


そんな好景気の中、俺たちは良い年越しを迎えれそうだ。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



そうしてロイスは今日の日記を書き終え、まだ寝ているミリアムの部屋へ向かう。


「おいミリィ!いい加減起きろ!朝飯を食い損ねるぞ⁈」


扉をガンガンノックしながらミリアムに呼びかけるが……

「………………」


やはり返事は無い。まだ夢の中の様だ。

仕方ないとばかりにノブを回して部屋の中に入るロイスはとんでもない…………だがいつもの光景を目の当たりにする。


ベッドから上半身を投げ出し、上下は真っ逆さまであり後頭部は完全に床に着いている。

女性らしさの欠片も無く広げられた両脚。

上着は捲り上げられヘソはおろか胸の下半分を露出させながらも、まだミリアムは夢の中から出てこようとしていない。


(今日はいつにも増して強烈な寝相だな……)


ロイスも現在、思春期真っ只中の男子である。

しかも相手が意中の女子がこんなあられもない格好になっていれば胸がドキドキしてしまう。

脳内アラートは最大警報を鳴らしているが目線をどうにも外すことができない。主に上半身に……


見てはいけないと思いつつも彼女を起こさねばならない彼はとにかく服を整えてやろうとミリアムに近づく……


見るな見るなと思いつつも服を摘まんだその瞬間に…………

「…何してるの?…………ロイ君……」




(…………終わった………)



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



仮設 冒険者組合ギルド出張所内では依頼の受付、納品所、解体所、酒場と一通り必要なものは揃っている。

ロイスとミリアムは今日の仕事を受けようと中に入ると好景気の恩恵を受けて昨日、どんちゃん騒ぎをしていた冒険者が何人か転がっている。


饐えた酒の匂いに眉を潜め、鼻を摘まみながら受付まで辿り着き受付嬢のお姉さんに挨拶をする。


「おはようございます。今日はどんな依頼が届いてますか?」


「あら。おはようロイス君、ミリアムちゃん。って、あら〜……年の暮れにこんな鮮やかな紅葉が観れるとは思わなかったわ……何かあったの?」


もちろんこの季節に紅葉などは無い。

ロイスの顔に貼り付いている手の平型の痣を指しての言葉なのは言うまでもない。


「ロイ君に寝起きを襲われそうになりまして……これは正当防衛です!」


これにはロイスも抗議の声を上げる。

「自分の寝相の悪さを棚に上げて人のせいにするなよ!起きてこないお前が悪いんだろ!」


受付嬢はまたいつもの喧嘩か……と嘆息混じりに仲裁に入る。

「はいはーい。そこでストップねぇ。ロイス君……いくら幼馴染でも覗きはいけないわよ……ましてや襲うなんて以ての外よ。」


自分の弁論を全く信じてもらえないロイスはこれまで築いてきた好青年なイメージがガラガラと崩れ今後覗き魔、暴漢魔と呼ばれる自分の展望に絶望を感じた。


チラッとミリアムを見るとこれでもかという満面のドヤ顔をしている。これはこれで腹が立つ。


「見たいなら見たいと正直に言いなさい。ミリアムちゃんならきっとフルオープンで見せてくれるわ……そうでしょ?ミリアムちゃん。」


「み、見せませんよ‼︎私だって女の子なんですからムードってもんがあるんです!」


顔を真っ赤にして反論するミリアムだが受付嬢は言葉尻を捕まえて離さない。


「あら?良かったわねロイス君。ムードを重視すればフルオープンですって。言質頂きましたぁ。」


流石は並み居る冒険者達の誘いを躱し続ける歴戦の猛者である。小娘一人転がすなど造作も無いのであろう。

ここは乗っておくのが得策か……

「わかりました!ムード重視ですね。アドバイスありがとうございます。」


後ろでキーキー言っているがロイスはもう気にしない。この件はこれでお終いである。


「それで依頼の方は?」


「昨日と変わらないわね。キノコの採取に魔物の間引き、あとは迷宮ダンジョンで新たな情報が有れば重要度によって報奨金があるぐらいね。」


今は食用のキノコが飛ぶ様に売れているので、いくら採取しても引き取ってもらえる。

だが売ったキノコが毒キノコで食あたりなど起こせば責任問題である。それなりの知識は必要なのだ。


「う〜ん……じゃあ今日は森の方へ入ろうか。ミリィもそれでいいか?」


「別に私は迷宮ダンジョンに入ってもいいわよ?最近調子が良いから、もうあんなことにはならないわ。」


ミリアムの言う通り、彼女は今乗りに乗っている。

その理由は今使っている武器にある。

二ヶ月前の迷宮ダンジョンから出た杖を鑑定してもらうと材質はグリモアの木で出来ており杖の芯には聖鉄が使われている。

グリモアとは魔物 木人種トレントの身体から出来ており魔術師御用達の魔力親和性が高い材質である。

聖鉄にしてもミスリル程ではないが魔力伝導率が高く使いやすい。

極めつけに先端に埋め込まれた魔石は雷属性の親和性が高いとかなりの逸品と判明した。

雷魔法が得意なミリアムには打って付けの武器とわかったのである。

彼女はこの武器を使い出してから確実に一段上のステージに登っていた。ロイスはそれを頼もしくも思いながらも彼女に肩を並べる目標から遠のいて少し複雑な気分であった。


「うーん……じゃあ迷宮ダンジョンは明日の仕事納めに入ろうか。今日は森で採取な。」


「オッケー!じゃあ食堂に行って朝食にしましょう。」



二人はそうして食堂に向かい朝食を注文する。

そしてテーブルを探しているところで声をかけられた。


「おう!坊主に嬢ちゃん。お前らも今から飯か?」


「あっザバンさん。おはようございます。」


声をかけてきた男の名はザバン。

歳は三十代ぐらいであろうか正直、冴えない感じの男である。

事実、彼の冒険者としての腕前は大したことはない。万年Fランクの冒険者だと本人も言っている。

だが彼には一つだけ特技がある。

異常にキノコ採取が上手いのである。採取してきたキノコの状態も良く冒険者組合ギルドも重宝している。

またその知識も半端ではなくあらゆるキノコに精通、判別が可能とのことである。

ロイス達も彼にその知識を教えてもらい今の生計を安定させている。


「じゃあ一緒に食おうぜ。」

「いいですよ。ザバンさん、そろそろキノコの見つけ方の秘伝を教えて下さいよ。」


そう言って三人で世間話をしながら朝食をとることにした。



「流石にそれは出来ねぇよ。俺の唯一の飯の種だ。それにお前らは若くて才能もあるんだからもっと上を目指せ。

貧弱な俺と違ってキノコなんかで生きていこうなんて思うなよ。」


「いやぁ……ザバンさんだってまだまだいけますよ。」


これがお世辞なのはわかっている。三十代ともなれば脂も乗り切った年頃であるのに未だにFランク……戦闘の腕前は推して知るべしであろう。


「へっ、おべっかはいいよ。俺にはもう才能の天井が見えちまってる。お前らと違ってな……

しかしお前らがここを見つけてくれて感謝してるんだぜ?

ここは俺の唯一の才能を最大に活かせる土地だ。

ここなら俺は生きていける。」


そんな雑談をしながら朝食を取る。これも冒険者達の重要な情報交換の場である。

そしてザバンはある噂を耳にしたことロイス達に告げる。


「そういや商人に聞いたんだが、この土地はワインの醸造にチーズの製造、それに肉なんかの熟成にもめちゃくちゃ適してるんだってな……」


「へぇ、そうなんですか。だとしたらこの場所って物凄く栄えるかもしれないですね。迷宮ダンジョンに特産物だらけになりますね。」


「かもしれねぇな。これもあれなのかね?キノコの精霊様のお陰ってやつか?」


その話は今この街で真しやかに噂されている正に都市伝説と呼ぶに相応しい話である。


この土地には土地神なのかキノコの形をした精霊が居てその恩恵でここは資源が豊富だと言われている。

事実、その姿を何人もの人間が目撃したらしい。


「ザバンさんは見たことあるんですか?」


「おお!あるぜ!ちっこいキノコの形で手足を生やしててな。その後に松茸を見つけたんだ。有難い話だぜ。」


そうして情報交換ともいえない世間話は終わりロイス達は森へ出かける準備をする。


「じゃあ俺達は行きますね。ザバンさんはどうします?」


「俺は今日は休みだよ。お前らは頑張ってこいよ!」


そうして別れの挨拶を交わしてロイスとミリアムは外に出る。

外では冒険者同士が言い合いをして喧嘩をしている。

(全く冒険者ってのも荒っぽい奴等が多いよな……まっ何時ものことか……)


と一人感想を述べていると横にいるミリアムがなにやら元気が無さそうである。


「どうした?元気ないな。風邪でも引いたか?」


「いや……実は私、ザバンさんのことちょっと苦手で…………いい人だとは思うんだけど眼がいやらしいっていうか……たまにゾッとする時があるのよ。」



喧嘩をしている冒険者達はとうとう殴り合いに発展している。まぁ何時ものことである。


「そうか?まぁ女の子だからな………そんな眼で見られることもあるだろ。」


「あっ!そういえば私も見たよ。キノコの精霊!」


「本当か⁈じゃあ今日はいいことあるかもな!」


冒険者達はとうとう剣を抜いて斬り付け合っている。まぁ何時ものことである。


そうして二人は森へ出かけていった。



しかしこの街の誰も気付いていない。

ここには毒が蔓延していることに………………





ここはアルツール地方にできた迷宮ダンジョン街予定地…………今は通称キノコ村……




ここは迷宮ダンジョン第一階層……




毒は胞子に乗り、薄く…広く…静かに拡がっていく…………



毒の効能は脱力感、腹痛、嘔吐、幻覚、向精神作用。



毒は静かに……ゆっくりと……人を狂わせていく…………


ダークタグさんがアップを始めました。

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