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清廉勇者と外道ダンマスの物語  作者: ハル
第1章 二人の生き方
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勇者の章 六部 年末祭 2

ルクスはセルフィアと様々な屋台の料理を食い歩きながら祭りを楽しんでいる。


色んな出し物に感嘆の声を上げ、露店の商品を見ては物珍しげに眺めている。


そんな愉しげなルクスを見守る度にセルフィアは徐々に憂いを帯びていく……

(いかんな……こいつと居ると、どうしてもフランツのことを思い出す……)


片時も忘れることはないが、ルクスを見てると今は亡き弟のフランツとの楽しかった思い出がフラッシュバックしてしまう……同時にあのおぞましい事件も…………

(あの時なぜ私はあんなことを…………あんなことさえしなければこんな後悔と自己嫌悪の人生など……)


思いに耽るとドンドンと気持ちが沈んでしまうセルフィアに気付いたルクスが

「セルフィアさん……大丈夫ですか?気分でも悪くなりました?」


「あ、ああ大丈夫だ。少し考え事をしてただけだから心配するな。」


ハッとするセルフィアを見てルクスは察する……

(多分、家族の事を思い出してるんだろうな……僕といるからかな……)


他人の機微を読むのに長けているルクスはセルフィアの憂いを感じ取っている……だが自分には何もできないことに苛立ちも感じ始めている。


「お前は気にせずに祭りを楽しめばいい。私に遠慮などしなくていい。」


セルフィアがそう告げたとき二人から少し離れた場所で諍いの声が聞こえてきた。


「なぁ姉ちゃん。ちょっと俺らに付き合えよ。一緒に年明けの鐘を聞きながらしっぽりするだけだからよぅ」


どうやら酒をしこたま呑んだ三人組の男達が街の女性を無理矢理ナンパしようとしてるらしい。

祭りともなれば羽目を外し過ぎて乱暴狼藉を働こうとする輩は何処にでもいるようだ。


絡まれている女性は相当な美人で酔っ払いに眼を付けられたのだろうが、本気で嫌がっている。

周りに助けを呼んでいるが相手の男達はかなり体格が良く腕回りなど細めの女性の胴ぐらいはありそうだ。

皆は助けてやりたいが怖気付いてしまっている。


「なぁ姉ちゃん……周りの奴らは俺らにビビっちまって助けてくれねぇとさ。観念して俺らと楽しもうぜ。文句ねぇよな!皆様方!」


周りを恫喝し萎縮させる三人組のさらに後方には実は黒幕が潜んでいた。


華蝶仮面ズである。


「あれも作戦なんですか?プリ……あ、いや……モンシロ華蝶さん。」

「そうじゃ!スコルフスキーモルフォ華蝶よ。あの三人組は妾の手の者じゃ。名付けて『彼奴らをルクスに蹴散らさせセルフィをキュンキュン言わせちゃうぞ』作戦じゃ‼︎」

「そのまんまですね!モンシロ華蝶さん!」

「ちなみにあの女性は我が国で一番の暗殺者アサシンじゃ!暗殺、密偵、潜入に房中術まで極めた凄腕よ!万が一にも失敗はありえん‼︎」

「役不足ここに極まれりですね‼︎モンシロ華蝶さん‼︎」

「うむ。正しい意味で役不足じゃ!スコルフスキーモルフォ華蝶よ‼︎」



ルクスの名誉の為に伝えておく……彼は確かに作戦通り、助けに向かおうとした。しかしそれより疾く……まさに疾風の速さでセルフィアは三人をほぼ同時に空に舞わせてしまっていた。


頭から落ちた男達は完全に気絶してしまう。

周りの見物人達はセルフィアに万雷の拍手喝采を浴びせている所である。



「作戦失敗です‼︎セルフィが男前過ぎます‼︎モンシロ華蝶さん‼︎」

「ぬぅ……こうなっては作戦変更じゃ!次は『セルフィの嫌いなものでビックリさせルクスに抱きつかせて、吊り橋効果でドキドキ大作戦』で行くぞ!スコルフスキーモルフォ華蝶よ!セルフィの嫌いなものはなんじゃ⁈」

「そうですね……私は陰からコソコソと人を付け回す人達は大嫌いですね…………殿下……それにシス……」





「「ハッ」」



セルフィアに見つかったプリマとシスは滝の様な冷や汗を流す。

((セルフィの背後に般若が見える))


何か言い訳を探すが見つからず二人はシラを切ってみることにした。


「殿下とは誰のことかのぅ?スコルフスキーモルフォ華蝶よ」

「ええ…シスなんて人の名前は初めて聞きましたよ?モンシロ華蝶さん」


それを聞いてセルフィアは段々と顔から感情を無くしていき能面のような顔つきになっていく。

((ヤバい…………一番怒っているときのセルフィだ))


ルクスはそれを遠目でみている。

(ああ……このお説教は長くなりそうだな……)

そう思っていると先程の女性アサシンが近づいてきた。


「ふふ。作戦失敗しちゃったね。でも貴方も助けに向かおうとしてくれてたね。ありがと」

そう告げてルクスの頬にキスをした。


ビックリして後ろに飛び退いたルクスは

「えっ?あ……あの…えっ?なんで?」と、しどろもどろになっている。


「あはは。照れちゃって可愛いなぁもう。そうそう、これはアタシの勘なんだけど。貴方達はきっと上手くいくわ……でもね、あのセルフィアって人は心に物凄い闇を抱えてるのは貴方も勘付いてるでしょ?

その闇を祓わないと、あの人は身動きがとれないの……難しいでしょうけど貴方ならできるかもね……頑張ってね。勇者様」


そう言ってウィンクをした彼女はスタスタと去っていった。

(闇を……祓う…か)




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




セルフィアのお説教は小一時間ばかり続き、プリマとシスは真っ白になりながら、衛兵に護送されていった。


ルクスはその間、露店などをブラブラして時間を潰しており、頃合いを見計らいセルフィアの元に戻っていった。


「すまない。待たせてしまったな。」


「いえ。全然大丈夫です。退屈はしてませんでしたから」


「なら良かった。レストランを予約してあるから夕食はそこで取ろう。」


二人は予約している店に向かうが着いてみればやはり高級店……ルクスには一抹の不安がある……

テーブルマナーを一切知らないのである。


「あの……テーブルマナーなんてわからないです。……セルフィアさんに恥をかかせることになります……」


「ん?そういえばそうだな……まぁ、いい機会だ。教えてやるから早く入るぞ。」


店内に入った二人は丁寧なお辞儀で出迎えてくれたウェイターに上着を渡しクロークで預かってもらう。

ルクスはセルフィアに倣って同じ動作をしようとするがガチガチのロボットのような動きになってしまっている。


ウェイターの案内でテーブルに着くとセルフィアが……

「テーブルとイスの間は開けすぎると姿勢が猫背になるから気をつけろ。このナプキンはソース等の飛散を防ぐのに使うから胸の前にかけておけ。」


「わかりました。…………あの…セルフィアさん。」


「どうした?ルクス。」


「あの……今日は一日ありがとうございます。これは、さっき露店で見つけたもので……お礼代わり?みたいなものです。」


そう言って包みに入ったプレゼントをセルフィアに差し出した。


「私にか?気を使わなくてもいいんだが……まぁ折角、買ってくれたものだ、有り難く頂こう。

開けてみてもいいか?」


「あ、はい。どうぞ……安物なんで気に入らなかったら捨てて下さい。」


「そんなことはしないさ。ん?これはネックレスか?」


ルクスが買ってきたものは青い魔石の着いたネックレスである。魔石と言っても魔術的価値は殆どなく、かといって宝石の代わりになるような物でもない。

安物のイミテーションのような代物である。


「あの……その魔石の色合いが聖剣の宝玉の色に似てるなって思って……御守りみたいなものになるかな?って……」


「そういえば似てるな…………これは御利益がありそうだ。」


安物ではあるがルクスからすれば、なけなしの金をはたいたのだろう。

セルフィアはその気持ちに嬉しくなるが……

「…………すまないな……こういうときは笑顔の一つでも見せるべきなんだろうが苦手でな……上手く表現できん。しかし有難いとは思っている。大事に使わせてもらうよ。」


そう告げてセルフィアはネックレスを首につける。

「私はこういったものは付ける習慣が無いからな……似合っているか?」


「…………ええ…凄く似合ってます……あっいや、やっぱり安物ですからセルフィアさんには…」


「これはお前の気持ちなんだろ?なら大事に使うさ。」


ルクスは女性にプレゼントを渡すなんてことは初めての経験なので緊張で喉がカラカラになっている。そこにウェイターが食前酒を運んできた。


「これは飲んでもいいんですか?」

「構わないぞ。それは食前酒といってな……そういえばお前、酒を飲んだことは……」


セルフィアが言い終える前に一気に食前酒を煽ったルクスはみるみる顔を紅く染めていく。

頭をフラフラさせてテーブルに突っ伏してしまった。


「おいルクス!大丈夫か!」

「えっと……なんかグルグルします。……どうなってるんですか?……これ」


ルクスは酒を呑むのは初めてで、全く吞めない体質なのが今日発覚したようである。


「ああ……ダメだ。完全に酔っ払っているな。食事はキャンセルして外で風に当たろう。」


「えっ……しゃんな……わりゅいですよぅ」


「呂律も回ってないな……気にするな。また連れて来てやる。」


グッタリするルクスの肩を担いで店を出たセルフィアは休める場所を探すが、そんな彼女に声をかける男がいた。


「おおセルフィ!こんな所にいたのか!お前を探していたんだ!」


そこにはウェーブのかかった金髪にそばかすだらけの顔で如何にも貴族様です。といった偉そうな格好をした二十代前半ぐらいの男が従者を数人連れて近寄ってきていた。


その男を見てセルフィアは苦虫を噛み潰したような顔になっていく。そして小声で

「くそ。こんな時に…………すまないルクス。一人で立てるか?」


セルフィアはルクスの肩から手を離し貴族の男に向かって丁寧なお辞儀をした。


「お久しぶりです。ロビン・ウィズダム卿……」


「そんな敬称で呼ぶなんてツレないじゃないかセルフィ。私とお前の仲だろう?以前のようにロビンと呼んでくれ。ん?その汚らしい男はなんだ?」


ロビンと呼ばれた男はどうやら本物の貴族のようである。ルクスは酔ってはいるがセルフィアに恥をかかさぬ様に丁寧なお辞儀をした。


「彼はルクスと言い、今は私の弟子として騎士を目指しております。

ルクス。こちらの方はテムズ・ウィズダム子爵の長男であらせられるロビン・ウィズダム卿だ。挨拶をしなさい」


「ル、ルクスと言います。どうかお見知りおきを……」


挨拶をするルクスをロビンはゴミを見るような目で見下している。

「ふん。お前が例の平民出の弟子か……お前なんぞに興味はない。疾く去れ……私はセルフィに用があるのだ。」


ルクスはそう言われプリマが言ってたプライドばかりの中身の無い貴族というのを思い出していた。


「なぁセルフィ。今日こそ私の願いを聞いてくれるんだろ?二人で新年の鐘を一緒に聞こうじゃないかぁ」


そう言ってセルフィアの手を取りサワサワと撫で回す。そのやらしい手つきを見ているとルクスは段々と腹が立ってきている。

これは酔っているからなのか自分でもわからなくなっている。


「ロビン様……お戯れはお止め下さい。私は貴方に見合うような女ではありません」


「なんだ冷たいじゃないか。私達は将来を誓い合った許嫁じゃないかぁ。私の気持ちはあの時から変わっていない。いいだろ?セルフィ」


それを聞いてルクスに衝撃が走る。

(許嫁?セルフィアさんとこいつが?どういうこと?)


「それは親同士が決めたこと。ビスコット家が断絶した今その約束は取り消えになっています。

今の私は騎士とはいえ平民出の女……そんな私を娶るなどロビン様の格を落とすだけに御座います。」


親の決めた許嫁でそれは昔の話と聞いてルクスは心底ホッとする。

それにセルフィアはロビンに虫唾が走る程、嫌いらしくさっきから全く目を合わせようとしない。


しかしロビンは全く懲りていない。

「そんなことはわかっているよセルフィ。

だぁかぁらぁ〜娶りはしないが囲ってやるって言ってるんだよ。

女が剣を振ってビスコット家を再興させようなんて下らない夢みてないでさぁ。私の女になれば優雅な暮らしをさせてやるって言ってんの。

ほらっ!こんなタコだらけの手なんかになっちゃって。もっと女性らしい手になりたいだろ?」


それを聞いたルクスは自我が吹っ飛ぶ程に激昂する。

こんなに全身が怒りで満たされることなど人生で初めてかもしれない。抑えが全く効かない……感情のままにルクスはロビンの腕を掴みギリギリと締め上げる。


「セルフィアさんから手を離せ!お前にセルフィアさんのなにがわかる!お前に家族がいきなり亡くなった人の気持ちがわかるか!

せめて家だけでもと血の滲む様な努力をするセルフィアさんの夢を侮辱する資格なんてお前に無い‼︎

謝れ‼︎セルフィアさんに謝れ‼︎」


握力に任せて締め上げるルクスにロビンは叫び声を上げる。

「い、痛い!離せ!貴様、私を誰だと思ってる!」


「ルクス‼︎止めろ!大変なことになるぞ!」


セルフィアは強引にルクスとロビンを引き離す。

ルクスを叱責するが全く聞く耳を持っていない。


「平民出の分際でふざけた事をしおって!

おいお前等‼︎こいつに身の程を教えてやれ!」


ロビンは従者をけしかけルクスを痛めつけようとしている。

命令を聞いた従者は袋叩きにしようとルクスに飛びかかった。


「ロビン様!やめさせて下さい!」


セルフィアは助けようとするがロビンが邪魔をしてくる。二人の力量は圧倒的な差があるが身分の差が手荒な真似を許してはくれない。


「なぁに。ちょっと身分の差というのを教えてやるだけだ。お前が今夜、付き合ってくれるなら止めてやってもいいぞ。」


下卑た笑いを浮かべセルフィアに話しかけるロビンをルクスは四方から殴り蹴られながら見ていた。


(まずい……このままじゃセルフィアさんはアイツの話を受けてしまう。どうしたらいい)


暴力を振るわれこのままでは自分も死んでしまうかもしれない。

自分は構わないがセルフィアは困るとルクスは朦朧の意識の中で覚悟を決めた。


(ごめんなさい先生……約束を破ります。)


「アアアアァァァ‼︎」


ルクスは殴り掛かる拳を避けそれを掴み叫びながら豪快に背負い投げを決めた。

人生で初めて他人を傷付けた瞬間である。


(あと三人……)


自分の右手方向にいる男の懐に飛び込み真下から顎に向けて立ち上がる様に掌底を突き出す。


セルフィアに教わった体重の軽い人間でも一発で大男を昏倒させる必殺技である。


(あと二人……)


相手は少し怯んだがこのまま怖気付くと後でロビンの折檻を喰らう男達は覚悟を決めて突っ込んでくる。


(自分の軸をブレさせるな。そうそれば隙は生まれない。)


殴り掛かる男の腕を軸に回転するように回り込み背後を取る。


(背中のヘソのライン……中心線から5センチ横を思いっきり突く!)


そこは人体の急所、腎臓がある場所……それを背中側から殴りつけると……


(人間は痛みで動けなくなる。あと一人!)


ルクスは残りの男を睨み付けると従者の男は腰が抜け情けない声を上げている。

完全に戦意を喪失してしまったようだ。


それを見たロビンは役立たずが!と言い従者を蹴り付ける。

そしてとうとう懐の剣を抜いてしまった。

「平民出の分際で舐めよって!私を誰だと思っている!死んで償え‼︎」


そう言うや否や斬りつけよう振りかぶるが急に動きを止めブルブルと震えだす。

セルフィアが強烈な殺気をロビンに当て動きを制してしまったのである。


「ロビン様……街中で剣を抜くとなれば治安を守る騎士として騒動を制圧せねばなりません。

ここは見なかった事に致しますのでお引き取り願えますか?」


ロビンは完全にビビっているが、せめてもの意地なのか

「わ…わかった……ここはセルフィの顔を立てよう…………」


そう言って逃げるように去って行った。



「やっぱりセルフィアさんは凄いで…す……ね」


「おいルクス!しっかりしろ!」



そう言ってルクスはバタッと倒れ意識を失ってしまった。




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜






それから数時間後にルクスは目を覚ました。

顔は火照るように熱く身体中が痛みで軋む……


「イタタ……あれ?ここは……どこだ?」


「やっと起きたか……身体は……まぁあれだけ暴れれば痛いだろうな。」



そう言って首に巻いていたスカーフをどこかで濡らしてきたのかルクスの顔に当てて冷やしてやる。


ルクスはベンチで寝かされセルフィアに膝枕をされていた。

それに気付いたルクスは飛び起きようとするがセルフィアはルクスを抑えつける。


「今は動かないでいい。大分と頭を殴られている。じっとしていろ。」


「あの……ごめんなさい…折角、買ってもらった服を汚しちゃいました……」


「そっちか……呆れるな…その服はもうお前のものだ。私に気を使うな……それにしても良い動きだった。やれば出来るじゃないか。」


「セルフィアさんのおかげです。……初めて他人に暴力を振るいました……お酒のせいですかね?」


「ならもう酒は飲ませられんな。でも私の為に怒ってくれたんだろう?礼をいうよ。ありがとう」


「僕が勝手なことしちゃいましたね。迷惑をかけちゃって……ごめんなさい……」


「気にするな。奴は私も大嫌いだ……しかしお前は私の事情を知っていたのか?」


「あっ!……すいません……黙ってろって言われたのに……」


「やはりプリマ殿下か……それはもういい……お前には謝罪しなければならんな……私はお前を利用しようとした。それも勇者になりたい訳でもないお前を無理矢理に戦わせようともした。もはや謝罪しても許されんことだ……」


「あの……その件ですけど…僕……勇者になります。出来るかわかりませんけど魔王を倒します、決めました。」


「何故だ?あんなに嫌がっていたじゃないか。お前は自由に生きていい。勇者になんてならなくてもいい。」


「でも僕が勇者になればセルフィアさんの夢……ビスコット家は再興できるんですよね?」


「私の為?私なんかの為に死地に向かうというのか?やめてくれ!私にそんな価値は無い!」


「やめません。セルフィアさんの為に死にに行きます。僕にとっては人類を救うより価値があります。」


「考え直せ!私はそんな……そんないい者じゃない……」


「でも家を再興すればもうあんな馬鹿にされることもないんですよね?」


「違う……違うんだ……私は……」


「セルフィアさんはずっと心の中で泣いていますよね?僕が勇者になればそれは晴れるんですよね?」


「私は泣いてなんかいない!思い違いだ!」


「嘘だ。僕には今も泣いて見えます。」


「やめてくれ……お前は…………なんで私なんだ……」


「それは…………初めて会ったときから……僕は……貴女に「止めろ!!!」


セルフィアは大声でルクスの声を遮る。

不意に立ち上がりルクスに背中を向ける。


「私は……お前に想われる様な綺麗な人間じゃない……汚い………穢れた女なんだ……だから……やめてくれ……」



セルフィアは走ってその場を去って行く。

ルクスの眼からは顔は見えない……だがその背中は大声で泣いている。幼い少女の様に大声で……




街の中央にある時計塔から鐘が鳴る。


祝福するように鐘がなる。


今……新年を迎えた……





















次回は魔人編です。

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