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3-4



「綾女、どうしたのだっ?」

 綾女の顔がどんどん蒼白になっていく。

「空丸っ! 貴様、綾女に何をしたのだ?」

「その娘の周りだけを真空にしてやったのさ。今のオレならそれぐらい造作もないことさ」

「空丸、もうお前には何を言ってもムダなのか? あのおとなしかった空丸にはもう戻れないのか?」

「うっとおしいんだよ!」

 空丸にオレ様の想いは届かなかった。

「天丸……」

 綾女を支えていたコタローが倒れる。まさか、コタローも。

「コタローッ!」

「悪かったな。何の……役にも立て、なくて……」

「オレ様の目の前で死んだりしたら承知しないのだっ!」

 コタローはムリして笑みを作ってみせた。

「空丸、オレ様は貴様を許さないのだっ!」

 主人に害をなす者は排除しなくてはならない。オレ様の命に代えても空丸は倒してみせる。

「このオレに勝つつもりでいるのか?」

 空丸は鼻で笑う。オレ様はゆっくりと空丸に向かっていく。

「オレ様は座敷わらしだ。主人を幸せに導くことが役目なのだ。それを放棄した貴様になど負けたりはしないのだ」

 オレ様は限られた妖力を右手に集中させた。こんなことになるんだったら、青年ヴァージョンになどなるのではなかったのだ。

「天……ちゃ、ん。ダメ……だよ」

 綾女は苦しげな声でオレ様を呼び止める。

「綾女!」

「せっかく……会えた、仲間なんで、しょう。ケンカ、なんか……しちゃ……」

 綾女は言葉を絞りだそうとする。自分をこんな目に合わした奴なのに。戦うなって言うのか?

「綾女はバカなのだ」

 涙が止まらなかった。

「空丸、もうひとりも始末したのか?」

 オレ様が見えない宮郷は焦っていた。オレ様が死んだかどうかがわからないのだ。

「空丸っ!」

 宮郷の催促する声が飛ぶ。

 オレ様は覚悟を決めた。

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」

 空丸は獣のような雄叫びを発した。

「オレは絶対に認めない。そんな人間がまだいることを」

 空丸は妖気の塊をぶつけてきた。

 オレ様は綾女とコタローを守るため前に出た。オレ様は自分の身体でそれを全部受け止めた。妖気を通して伝わってくる空丸の憎しみと哀しみ。奴は大切な主人を時代から守ってやることができなかったのだ。だから、時代を恨み、負のエネルギーを受け入れたのだ。

 でも、それは間違っているのだ。

「空丸、このふたりの夢を感じるのだ。まだ世の中には時代に負けず、夢に向かって生きている者はたくさんいるはずなのだ」

「もう手遅れなんだよ」

 空丸の笑みに淋しさが宿る。

 その時、空丸はすでに綾女たちの周りの真空を解除していたのだった。オレ様はまだそのことに気付いていなかった。

「空丸?」

 空丸の足が一瞬透けて見えた。

「何をしている? 早くあいつらにとどめをさせ!」

「うるさいんだよ。ゲス野郎が」

 空丸は妖気で宮郷を吹き飛ばした。宮郷は壁に頭をぶつけて気絶する。

「まさか、貴様……綾女の夢を」

「そうだよ。オレの中にあの子の夢が流れてきたんだよ」

 負のエネルギーを受け入れた者が正のエネルギーを吸ってしまうと、拒否反応を起こし消滅してしまうのだ。

「だから、お前の主人を想う気持ちを確かめたくなった」

 今度は空丸の全身が透けてきた。オレ様は急いで空丸に駆け寄る。

「もっと早くお前に会いたかったよ……」

「空丸っ! 消えるなぁっ!」

 消えようとする空丸をオレ様は必死で抱きしめた。空丸はオレ様の腕の中から消えていった。

「天ちゃん」

 綾女がオレ様を抱きしめてくれた。いつもと逆なのだ。

 オレ様は綾女の胸の中で声を殺して泣いた。





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