Ⅴ
「ミヤコ!早く!出発しちゃうよ」
「待って!汽車は逃げたりしないから」
一週間後、ミヤコと零は零の父陶冶のいる国都へ向かう汽車に乗り込んだ。陶冶の取った席はとても、綺麗な装飾品で飾られており、零も目をキラキラさせながら席をうろうろしていた。
「ミヤコ、これから、学校は国都の学校に行くの?」
「そうだね、多分向こうの学校はメリノの学校よりも楽しいよ」
「そうかな。俺は、農作業とかの授業結構好きだったんだ。だから・・・ちょっと寂しい。だって、国都の学校はマシン術とかなんだろ?授業内容」
「かもしれないけど、そこで新しいことを学べるってことは、零は他の普通の子よりも2倍頭がよくなるってことよ」
「そ、そうかな。だったらいいんだけど。
ミヤコのメンテ異常が無かったらいいな」
「!うん。そうだね。何にもないといいんだけど。」
「ミヤコ。俺ちょっと眠いからしばらくしたら起こして」
「分かった。ゆっくり寝てね」
「スー」
零は目をつむるとすぐに夢の中へと旅立った。ミヤコは窓の外に目を向けた。昔、慧人とよく汽車に乗って遠くまで行ったことを思い出した。慧人は、汽車に乗ると直ぐに眠ってしまい、お喋りどころではなかったことを思い出してクスッと笑ってしまった。ミヤコはそんな幸せな日々を思い出していた。今も、幸せだが、昔は愛おしい人といるだけでもほんとに幸せだった。もう、何もいらないと断言できるほどミヤコは慧人を、慧人はミヤコを愛していた。そんな、懐かしい日々を思い出し、感傷に浸っていたら、国都についていた。ミヤコは急いで零を起こし汽車を降りた。汽車を降り、改札を出ると陶冶が待っていた。
「父さん!」
零は、陶冶を見ると走り出し陶冶に抱き着いた。陶冶も、ニコニコと笑い抱きしめた。
「零。よく来たね。これからは、一緒に暮らそう。メリノの家は休みになったら行ったらいいよ。ミヤコも一緒だ。これから、楽しくなるぞ。」
「先生」
「ミヤコ。元気か?」
「はい」
「零を守ってくれていてありがとう。これからは、慧人先生を探しに行くのだろう。家の家事と同時進行で悪いな。」
「いえ、慧人を探すことができるだけ嬉しいです。」
「そうか。じゃぁ、家に行くか。外に、馬車を待たせてあるんだ。」
「「はい」」
ミヤコと零は少しの不安と大きな期待を胸に国都の土を踏んだ。