Ⅲ
「先生。私やっぱり国都に行かなきゃいけないと思うんです。」
「そうか」
「じゃぁ、1週間後。汽車の券をそっちに送るよ。」
「ありがとうございます。あの、、、」
「なんだね?」
「零はどうしたらいいんですか?」
「零は、こっちに就学させる。」
「就学、デスカ」
「ああ、零にはいずれ僕の跡を継がなければならないからな。国都には有名な学校がある。」
「そうですか。」
「国都に一緒に3人で住むんだ。そして、ミヤコは慧人先生ことを・・・跡を探したらいい。」
「先生、私は先生に見つけてもらうまで世界の色がモノクロだったんです。でも、零や先生と一緒に居ることで色鮮やかな世界を見ることができました。ありがとうございます。」
ミヤコは受話器越しに頭を下げた。心からそう思った。陶冶は「ふふっ」と笑った。
「?どうしたんだミヤコ。君がそんなことを言わなくてもいいんだよ。零も僕も君に感謝してるからね。」
「はい。」
「じゃあ、1週間後」
「はい。零にはなんて言ったらいいんですか?」
「そうだな。僕がこっちへ引っ越しておいでって言うことを言ったらいいんじゃないかな?」
「分かりました」
「お休み」
「おやすみなさい、先生」
(慧人に会いたい。)ミヤコは心の中で叫んだ急に湧いてきた気持ち。ミヤコは部屋に戻り零が寝ていることを確認すると、庭へ出た。庭の奥へ入ると小さな湖がある。ミヤコは湖の前に座った。「ふっ」と小さなため息がミヤコの口からこぼれた。湖はキラキラと月で反射した。今日は満月。満月は慧人との思い出が詰まっている。慧人との思いで、記憶が走馬灯のようにミヤコの頭を駆け巡る。懐かしくてたまらない。ここに居ないことが嘘のように感じたひと時だった。