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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

出席簿

作者: お茶猫

初めてのホラー作品です。

と言っても僕自身はホラー系の作品見たことないのでこれがホラーなのか心配です。

なので自分なら見たくないなと思って書きました。

楽しんで読んでもらえると嬉しいと思います。

夏休みが始まり中学生は課題と向き合いながらも夏を満喫していた。

そんなある日、辺りの空は夕焼けに染めカラスが鳴く山奥の木造校舎に向かって歩く四人の中学生の影があった。

『穴熊中学校校舎』

と、書かれていた。

もっと言うなら、ここは旧校舎であり新校舎は山を降りた都心に近い所にある。

そして、彼らはその校舎の中に入ったのであった。

ギシ…ギシ…ギシ…と男女四人が床を踏むたびに木が軋む音が聞こえる。

アキラ、ホノカ、ショウイチ、ユキコの四人はここである伝説を調べにやってきた。

四人は地元中学の同級生だが仲がいいわけでは無かった。

「おら、さっさと歩けよ!アキラ!」

「そうよ、アキラ。もう夜暗いんだから早くしなさいよね ?」

「たく、クズでのろまなんだから!」

ショウイチ、ユキコ、ホノカはアキラを苛めていた。

理由なんてとうの昔に忘れた。でもいつしか彼を虐めるのが彼らの日課になっていた。

そして、三人はアキラを苛めるために今度はここ、穴熊中学校の旧校舎で肝試しをする事になった。

「ほ、本当に行くの ?僕、やだよ……」

アキラをショウイチに助けを求めた。

しかし、ショウイチはアキラを睨みつけ

「あぁ?俺に生意気言ってんじゃねよ!」

と、返して頭を殴りつけた。

「これ以上、痛い思いしたく無かったらさっさと行きなさい?」

とユキコが口に手を当てながら笑っていた。

「そうね、教務室を探してぇ、そこにある物なんでもいいから持ってきてぇ?」

ホノカはそう言うとアキラの背中を軽く押した。

アキラは言われるがまま薄暗い旧校舎を歩くのだった。

先が見えない暗闇がアキラの姿を消した事に確認すると三人は旧校舎から出た。

「しかっし、あいつもバカでぇー?俺たちが待ってるわけないじゃんか!」

と、ショウイチは笑いながらそう言う。

「本当、本当。あいつ、チビでメガネでもう見てるこっちが腹立つのよね?」

と、ホノカも笑いながらショウイチに同意した。

「で、でも……大丈夫なのかな?だって確か旧校舎にはある怪談があるんでしょ?」

ユキコは後ろを振り返り旧校舎に目をやる。

ユキコの心配の理由はこの穴熊中学校の旧校舎にある怪談だった。

『穴熊中学校の旧校舎で一人で行くと行方不明になる』

その伝説を思い出した三人に冷たい空気が漂う。

「……はははっ。んな、先生が作った脅しだろ?本気にする方がバカなんだよ!さっさと帰るぞ?」

ショウイチの言葉に二人は頷き足早に旧校舎から離れた。

しかし、アキラの姿を見たのがこれが最後だとはこの時の三人は知る由も無かった。

そして夏休みが終わる頃、アキラの行方が分からないという事が全校生徒に知れ渡るのだった。


人は都合の悪いことは忘れ都合の良いことだけしたか思い出にしない。

アキラの行方不明になって十年の年月が経ったがあの時旧校舎でアキラを置いていった三人はあの日の事を忘れしまった。

ある夏の夜、ショウイチのスマホに一本のメールが届いた。

『出席簿……見つけたよ?今から届けるね……』

ショウイチはイタズラだと思いそれを無視し明日のために眠りについた。

翌朝、目がさめると枕元に古びた黒い本が置いてあった。

そこには『穴熊中学校二年一組出席簿』と書かれていた。

「えっ……?」

ショウイチはそれを手にしようとするとヌメッといやな感触に襲われた。

ショウイチは恐る恐る自分の掌を見ると赤く染まっていた。

急いで洗面台に行くとフローリングの床にも赤い足跡が所狭しと付いていた。

「な、なんだよ……?これ……」

すると、スマホからメールの着信音が聞こえた。

『……ようやく見つけた……』

と、書かれたメールのあとショウイチの後ろから

「……シ ョ ウ イ チ ……」

と不気味な声が聞こえ後ろを振り向くと、白くこけメガネをかけた少年がそこに立っていた。

「あ、あ……まさか、お前……アキラ……なのか?」

「ボク……君タチヲ……ズット……探シテイタンダヨ……?」

「すまない!謝るから!」

ショウイチは手を床につき土下座した。

しかし、アキラは首を振ると

「モウ……騙サレナイ……絶対二……覚悟……シロ!ソシテ、ソレヲ絶対二手放スナ!オ前ハ、日直ナンダカラ!」

アキラはそう言うと身体がフッと消えた。

すると、今度はスマホから電話の着信音が鳴り始めた。

ショウイチは恐る恐るスマホを取った。

「も、もしもし……」

『ショウイチかっ!お、俺だイチロウだ!……た、助けてくれ!』

「ど、どういう意味だ!?」

『な、なんか……白い肌で眼鏡をか、掛けた子供が俺の……ま、えで……う、うわぁぁぁぁぁ……』

イチロウの叫び声が電話口から消えると聞いた事がある不気味な声が耳に流れた。

『アト……ゴニン……』


ブツッ……ツーツーツー


「え……いまのって…アキ……ラ?」

ショウイチの手の震えが止まらなかった。

ふとアキラが持ってきた出席簿を思い出した。

(そもそも、なんで出席簿なんだ……確かにあの時俺たちはなんでもいいと言ったけど……)

そして、血に濡れた出席簿に近づきそれを開いた。

そこに書かれている名前に恐怖した。

(うそだろ、この出席簿……当時の俺たちのクラスメートの出席簿じゃないか……そ、それにアキラの所とイチロウ、いやそれだけじゃない他にも丸がついてる…… ?)

ショウイチは急に不安になり丸がついた全ての元同級生に電話をかけた。


その日の夜。ショウイチはバーに二人の女性を呼び出した。

扉の鐘が鳴りショウイチが振り向くとそこには大人になったとはいえそれでも、面影が残るホノカとユキコが此方に向かってきた。

「おっひさー何年ぶり?急にどうしたのよ?」

「ほんと、しかも切羽詰まった声で此処のバーに来いだなんて?」

二人は口々にそう言うとショウイチは怯えながら口を開く。

「な、なぁお前ら……アキラの事…覚えてるか?」

「アキラ……?」

「誰よ……そいつ?」

ユキコとホノカはお互いに顔を見るとショウイチは握りこぶしを作りバーテーブルを強く叩いた。

「バカ!思い出せ!俺たちが中学の頃の同級生で……」

ショウイチは大声で怒鳴ったが次第に小さな声に変わっていき。

「旧校舎に置いてきてそのまま行方不明になったアキラだよ」

そう告げると二人はようやく思い出したのだった。

「あぁ、思い出した。ほんとはた迷惑な奴よね?確かそのせいで私達がいじめたんじゃないのかって疑われたんだよね?つか、いじめたの私達だけじゃないのにさ」

「そうそう、クラスみーんなでやったのに……いい迷惑だよ。で、そいつ見つかったの?」

二人はまるで悪びれない感じで喋り出した。

ショウイチはカバンから一冊の出席簿を取り出し中身を見せた。

「こいつを見てくれ……」

「なによ、出席簿?しかもなんで私達の名前が?」

「しかも、私達とあとリョウヘイにダイスケ以外、なんで丸が付いてるのよ?」

「気づかないか?これは当時俺たちの穴熊中学校二年一組の出席簿なんだ」

ショウイチは震えながらこの出席簿について話し始めた。

「多分……信じてくれないだろうが、今朝早く目をさますとこいつが置いてあったんだ。すると後ろから行方不明になったはずの……しかも、子供の姿のアキラが現れたんだ……。そして、カクゴシロ!お前ガ日直ナンダカラ、コレヲ手放スナ!と言葉を残して煙のように姿が消えていったんだ……」

「あんた、寝ぼけていたんじゃないの?」

ホノカがそう言うとショウイチは首を振り話を続けた。

「俺もそう思ったさ……でも、そのあとにイチロウから電話があったんだ。あいつと今でも飲み歩いたり遊んでいたりしていたからな……。そしたら、助けてくれって……白い肌でメガネを掛けた子供が……っていいかけた後に叫ぶ声がしたんだ。そのあと確かに聞こえたんだ……アキラの声で……」

そう言うとショウイチはグラスに入った酒を飲み青ざめた顔でそれを言った。

「あと、五人って」

ユキコとホノカの二人はゴクリと喉を鳴らしながらショウイチに問い詰める。

「ど、どうせイチロウのいたずらでしょ?」

「そうよ!きっとそうなんでしょ?」

二人はそう聞いたがショウイチは声を震えながら二人に告げた。

「……あの声は尋常じゃないと感じてな?まずこの出席簿を見たんだ。中身は見ての通りだった。そして、丸についても調べた。……そしたら……」

「そしたら……?」

三人の周りだけ時が止まったかのような空気が流れた。

ショウイチは言うべきか分からなかった。

でも、告げなきゃいけなかった。

「……そこに丸が付いている奴全員……」

「なんなのよ?」

「いいから、言いなさいよ?」

二人はショウイチの顔をじっと見て息を飲んだ。

ショウイチは意を決して答えた。

「……全員、なんだらかの事故か変死して……もう、この世から居なくなってる……」


そう、ショウイチは丸が付いている同時の同級生に全て問い合わせた。

しかし、帰ってくるのは全て死んだ情報だった。

ショウイチはイチロウの安否を確かめるべく彼が住むアパートに向かうとアパートの方から女性の叫ぶ声が聞こえた。

ショウイチがたどり着くとおそらく大家さんであろう女性が彼の部屋の前に屈みこんでいた。

ショウイチは何が起きたかと聞くと大家さんは右手で部屋の方に指を指した。

ショウイチは部屋を開けると周りが赤く染まっていた。そして、床には小さな足跡が散漫していた。

(見覚えがある……これは今朝自分が見た足跡だ。それになんでこんなに鉄臭いんだ?)

部屋中には鼻を抑えなきゃいけない程の悪臭が漂っていた。

「お、おい……イチロウ?いるんだろう?返事しろよ……」

すると自分のから何かが落ちる音が聞こえた。

「ぎゃあああああぁぁ!」

後ろにいた大家さんの声が再び上がった。

ショウイチは恐怖に怯えながらも後ろを振り向くとそこには、変わり果てたイチロウの姿だった。

「う、うわぁぁぁぁぁぁ!」

すると、今度はショウイチのスマホから再び着信音が流れ始めた。

「だ、だれだ!」

『ネェ……ハヤク、出席シテヨ……ボク一人ジャ大変ナンダヨ?』

「アキラ……なのか!?なんでなんでこんな事を!?」

『理由ナンテナイ……君タチダッテソウダロ?理由ガナイカラボクヲイジメタンジャナイノカ?』

「そ、それは……」

『ソレニ、今ノ今マデ忘レテイテイル君、ウウン君タチにナニガ分カルノ?』

アキラはそう言い残すと通話が切れてしまった。


ショウイチは今朝起きた事を包み隠さずに話した。

ユキコは自分の腕を強く握り震える体を抑え、ホノカは両手で頭を抱え込んでいた。

「じゃあ、何?アキラは私たち二年一組の全員を殺すつもりなの?」

ユキコは震える声でショウイチに問い詰めた。

「おそらく……アキラは俺たちに復讐するつもりなんだ」

ショウイチは出席簿に目をやりながらそう告げた。

「……なによ。私たちは只々、遊んでいただけ……勝手に行方不明になって……それで復讐って……」

ホノカはそう言うながらも震えていた。

「ホノカ……今そういう事じゃない。とにかくあいつのアキラの怒りを鎮めなきゃ」

ショウイチの言葉に二人は頷くしかなかった。


時刻は夜十時になっていた。

三人はバーから出ると近場の公園を目指しながらアキラの怒りをどうすればいいかを考えた。しかし、どうしても決定的な方法が見つからなかった。

ショウイチは再び出席簿を開くと不気味な現象を目の当たりにする。

「えっ……なんで……?」

「どうしたのよ…ショウイチ……」

ホノカがショウイチに聞くがショウイチは出席簿から目が放さなかった。

「そ、それが……ダイスケの出席欄に勝手に丸が出来上がろうとしてんだ!」

ショウイチがそう言うと二人は出席簿に目をやる。

シュ……シュ……シュ……

少しづつ少しづつであるが丸の形が出来つつある。

「や、やめてよ……」

「やめなさいよ!アキラ!」

ホノカとユキコの叫びは無情にも夜空の中に消えていってしまった。

と、その時ショウイチのスマホにメールが届いた。

「誰だよ……こんな時に!」

ショウイチは慌ててスマホを取り出しメール画面にすると動画が添付されていた。

そこに映し出された映像に三人はもう声も出なくなっていた。


『や、やめろ!……来るなよ!来ないでくれ!』

そこに映し出されたのはダイスケが何かに怯える姿だった。

『嫌だ!嫌だ!!!』

なおも叫びながら逃げるダイスケ。

『う、嘘だろ……なぁ、この先……なにもないんだぞ!やめてくれよ!』

どうやら、ダイスケはどこかのビルの上だった。そして、急に画面が暗くなりダイスケの叫び声が轟いた。

『うわああああぁぁぁぁぁ…』

その瞬間、画面が回復すると映し出されたのはショウイチとホノカとユキコの立っている姿だった。そしてダイスケの声真上から聞こえ始めた。

「…ぁぁぁあああああっ!」

そして、勢いよく落ちる音が真後ろに聞こえたのだった。

三人は恐る恐る後ろを振り向くとそこにはうつ伏せになり顔の辺りから血が流れそして、顔だけ弱々しくショウイチたちの方に向けるダイスケの姿だった。

「あっ……あっ……た、すけて、死にたく……ない!死にたく……な……い…」

ダイスケは血だらけの手を三人に伸ばすが力尽き地面に下ろした。その瞬間、出席簿のダイスケの出席欄には丸の形が出来上がっていた。

三人は叫び尻餅をついた。

それはダイスケが死んだ事もそうだが落ちた場所が問題だった。

ここは公園で高いビルなんて一つもない。

つまり、ダイスケはビルの上から落ちたが怪奇現象により、三人がいる公園に降ってきたのだった。

そして、その動画には続きをショウイチたちは聞いてしまった。

『アト……四人……。早ク……ミンナニ会イタイナ……』

恐怖のあまり、三人はそこから離れた。


「はぁ……はぁ……」

「もぅ……いやだぁ」

「あと、四人って私とユキコ、ショウイチとリョウヘイだよね……?そうだ!リョウヘイは!?」

ホノカはショウイチに聞くと首を振りながら答えた。

「それが所在が奴だけわからないんだ……そうだ!先生ならアカバネ先生なら何か知ってるかも!」

ショウイチがそう言うと二人は頷いた。

しかし、今日は色々ありすぎたせいもあり体力的にも精神的にも疲弊していた。

三人は一度繁華街に入り漫画喫茶に立ち寄る事にした。

そして、各々各一室に入室し仮眠を取る事にした。

ショウイチは考えていた。今日起きた怪奇的な出来事。もしかしたら明日は自分なのかもしれない。いや、ホノカやユキコ、そしてリョウヘイの可能性だってある。

そうこう考えるうちにやはり身体や精神がピークに達したのかそのまま寝入ってしまったのだった。


漫画喫茶のある一室の主人はこの世とは思えないものを見てしまった。

しかし、辺りはまるで生きている者がいないかのように静まり返っていた。

この場所だけ時が止まっているのかそうンな感じだった。

そして、その主人の首に一本線が引かれたかと思うと強い力で頭だけが取れてしまったのだった。

その部屋に置いてあるテーブルの上にはグラスが置いてあった。

そのグラスの中に赤い液体が注ぐられていた。

その液体はポツ…ポツ…と少しづつ上から降り注いでいた。

そして、その液体から最後の一滴が落ちると地面にそれは転がっていた。

そして、ショウイチの部屋に置いてあった出席簿に新たに丸が記されていた。


翌朝、ショウイチはあたりが騒がしい事に気付いた。

「なんだ、これ……」

「グロい……」

「なんで、私の店でこんな事になるんだ!」

ショウイチはハッと気づいて出席簿を持ち騒いでるところに向かうとユキコが抱きついた。

「ホノ……カが……ホノカが……」

彼女は涙を流しながらそう告げた。

ショウイチは自分の手から出席簿が落ちた事も気づかずにその場に潜り込んだ。

そして、彼の目の前にはおぞましい光景だった。

恐らく寝る前にドリンクバーを頼んでいたのだろう。机にはグラスが置いてあった。

しかし、そこの中には赤くドロッとした液体が入っていた。

その近くにはリラックスチェアに座る頭のない女性が座っていた。

ショウイチは血で汚れているがそれがホノカの服だと直ぐにわかった。

「……うそ……だろ…」

ショウイチは頭を抱えよろめくと足元に何かが当たった。

その時、周りがどよめき騒ぎ始めた。

ショウイチは目を閉じながら頭を足元に下げる。

(嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ……!)

心臓の音がうるさいくらいに鳴り響く。

心臓の振動が体全体に響き渡る。

ショウイチは意を決して目を開き、それを確認した。

彼女は何を見たのか。そして何に怯えたのかわからない。

もしかしたらほんの一瞬の出来事なのかもしれない。

だが、その顔は恐怖のまま筋肉が固まり目が見開いたホノカだったものが転がっていた。

「ウワァァァァッ!!!」

ショウイチの叫び声が響き渡った。

すると、突然パソコンが起動し誰も触っていないのに勝手に文字が浮かび出てきた。

『アト……三人……』


ショウイチはユキコの元に駆け寄ると彼女の手を引きその場を急ぎ離れた。

漫画喫茶の店内から逃げ出した二人は人ごみに紛れながら走り続けた。

後ろから声が聞こえるがそれを気にしないショウイチ。

「どうして、逃げるの!?」

「あんな所に居たら警察に捕まっちまう!そしたら身動きが取れなくなってしまう!そうなる前にだ!」

ユキコが聞くとショウイチは前を向きながらそう答え、続けてユキコに言った。

「第一、アキラの事を警察に話したっておかしな奴としか思われねぇ!ますます俺たちに疑われる始末だ!」

走りながらそう言う。

「全てが終わったら警察にでも行けばいい!とにかく今は生き残ってる俺とユキコと所在がわからないリョウヘイでアキラの怒りを鎮める方法を見つけなきゃ!」

ユキコは頷くと前方から一台の車が止まり背の高い男が手を振っていた。

「おい!ショウイチ、こっちだ!早く、これに乗れ!」

男がそう言うとショウイチたちは一目散にその車に乗車すると勢いよく発進した。

「ハァハァハァ…ま、まさかこんなとこに出くわすとは思わなかったよ……。リョウヘイ」

二人を助けたのは所在がわからなかったリョウヘイだった。

しかし、リョウヘイはチラッと助手席に座るショウイチに目を向けると

「はぁ?何言ってんだ?助けてくれって言ったのお前じゃないのか?」

「えっ……?」

「リョウヘイ……今、何を言って?」

リョウヘイが聞くとショウイチとユキコは目を見開く。

「……し、知らねえよ!第一俺たちお前のアドレス知らねえんだぞ!」

「……まじかよ。じ、じゃあこのメールなんだよ」

リョウヘイは車を停めるとジーンズからスマホを取り出しそのメールを見せた。

『助けてくれ!○○店の漫画喫茶の通りを西に真っ直ぐに走ってる! ショウイチ』

それを見た二人は黙った。その店は確かに数分前に滞在していた。

「それに、お前……タイミング良くねぇか?なんでこの近くに?」

「それも、お前の指示じゃないのか?」

すると今度はこういうメールを見せた。

『今から○○店の漫画喫茶で仮眠とる。明日アカバネ先生の所に向かうから車を用意してくれ ショウイチ』

そのメールを見た二人は驚愕した。

そんなショウイチの胸ぐらをリョウヘイは掴み叫んだ。

「一体、何が起きたってんだ!説明しろ!ショウイチ!」

ショウイチは頷くとこれまでの経緯と今自分たちが置かれてる状況を説明した。

そして、このメールの本当の主は誰なのか三人は大体の予想が立てられた。

「アキラだ……。アキラが指示したんだ」

ユキコは震えながらそう答えた。

「一気に全て終わらす気なんだ……私たちを殺すために集めたんだ!」

「……くそっ!どうすりゃいいんだ!」

ユキコは頭を抱えリョウヘイはハンドルに頭を当てながらそう言うとショウイチは両手を合わせて呟いた。

「……先生なら、先生なら答えを教えてくれるはずだ……。ううん、答えがなくてもてヒントがあるはず……」

「しかし、アカバネの所に行くにしてもどこに行くんだ?あいつ、アキラが行方不明になって暫くしたら辞職したんじゃねぇのか?」

リョウヘイはショウイチの方を向きそう聞いた。

そう、アカバネの行方も分かっていなかった。しかし、ショウイチは出席簿を二人に見せた。

「これに書いてある」

ショウイチは出席簿を開くとそこには連絡先と住所が書かれていた。

「アキラは……俺たちの行動を全て先を読んでるみたいだ。いや、俺の行動なんだろうな……」

ショウイチは出席簿に目を落とし小さな声で

「……なんせ、日直……らしいからな」


ショウイチたちがアカバネの家に向かう最中、アキラが行方不明になった日の事を思い出した。

夏休みが明けた教室。担任のアカバネがアキラが行方不明になった事をクラスに伝えた。

「なんでもいい。何か知らないか?」

アカバネが聞いてみてもクラス一同「知らない」の一言で終わった。

そして、アカバネはこうも言った。

「アキラから自分はいじめられてる。なんとかして欲しいと言っていたが……みんな、本当にいじめなんてしないよな?」

そう聞くとみんなはコクリと頷いた。

そう、クラス全員がアカバネを騙したのだ。

しかし、当時のショウイチを含めた二年一組はそれがいじめだと考えていなかった。

これは一つの娯楽。遊びだと。

暫くするとアカバネは一身上の都合で退職してしまった。

そして、それを気に一人また一人とアキラの事を忘れるようにした。

そして年月が経ち、今アキラと言う亡霊が二年一組のクラス全員を次々と殺し回っていった。

あと残るのショウイチ、ユキコ、リョウヘイの三人。車は徐々にアカバネが住むアパートに向かっていった。


アカバネの住むアパートに着く頃、辺りは夕方近くまでなっていた。

空一面に真っ赤な空になっていた。

辺りから夕飯の準備なのか美味しそうな匂いが立ち込む中三人はアカバネと書かれた表札を見つけてチャイムを押す。

数秒すると鍵を開ける音が聞こえゆっくりとドアが開くと白髪頭の中年の男が覗き込むかのように三人を見る。

「お前たちか……事情はテレビ知っている。さっさと入りなさい」

男、アカバネが三人をアパートの中に入れると辺りを見回し再びゆっくりドアを閉め鍵をかけた。

ショウイチたちはカーペットに腰を下ろし、アカバネは座椅子に腰掛けた。

ショウイチはアカバネの言葉を思い出しそれを聞く事にした。

「先生、さっき事情はテレビで知っているって言ったけど……あれはどういう意味なんだ?」

アカバネは無言でテレビをつけるとニュースが流れた。

それは今朝起きた漫画喫茶の事件。そこから立ち去るショウイチとユキコの姿。

そして、ショウイチとユキコが捜索願いが出されていると言うものだった。

「それだけでない。私が最後に受け持った元二年一組の生徒が次々に死んでいる事も知っている」

アカバネの告白に三人は息を飲んだ。

「どうして!知ってんだ!」

リョウヘイが吠えるように叫ぶとアカバネはテーブルに置いてある携帯電話を取ると操作し始める。

そして、三人に見せたのは大量のメールだった。

それを一つ一つ見ると三人は言葉を失った。

そのメールの内容は全て元二年一組の生徒が死んだという内容だった。

そこには昨日死んだイチロウとダイスケの名前。そして今朝死んだホノカの名前もそこにあったのだった。

しかも、そこには画像添付もしてありその画像は全て彼らの変わり果てた姿だった。

「それを見てこれはイタズラではないとすぐに分かった。……そしてニュースではお前たちが警察に追われている。だが何故お前たちがこんな事になっているかまでは知らない。頼む教えてはくれないか?」

アカバネはそう聞くとショウイチは頷きアカバネにもリョウヘイ同様にこれまでの経緯とアキラの事、そして出席簿の事を洗いざらい伝えた。

「そうか……その前にお前たちに聞きたい事があるんだが……アキラが行方不明になった時、私はお前たちに聞いたな?いじめはなかったのかと……。もう一度聞く。あの時本当にいじめなんてしなかったのか?」

ショウイチたちはそれぞれ顔を見渡しそして、無言で俯き顔を左右に振った。

それを見たアカバネは目を閉じ深いため息を吐いた。

「……そう…か、あの時すでにそんな事をしていたのか」

「すみません。それに行方不明になったのは、俺が山奥の旧校舎に置いてけぼりにしたのが原因なんです」

「ショウイチだけじゃありません!私だって同罪です!」

ショウイチとユキコがそう言うとアカバネは無言で手を前に出して静止する。

「もう、いい。わかった……。今更言っても起きてしまったのだから何を言っても遅い」

アカバネの言葉に三人は言葉を失った。

それだけ自分たちの罪は計り知れないものだと痛感したのだから。

アカバネはもう一度ため息を吐き語り始めた。

それはアキラの家族の事だった。


アキラの行方が分からなくなったのはショウイチたちと別れてから三日が経っていた。学校にアキラの母親が来て自分の子が居なくなった。探してくれと訴えた。

しかし、アキラはどこにもいなかった。

そして、アキラはただの家出ではないのかと決めつけた。

アキラの家庭は母子家庭で母親はいつも夜遅くまで働いていた。

母親の愛情が足りないからそうなるんだ。

学校側はそう決め、母親を学校から追い出したのだ。

学校は本格的に捜索したのは夏休みが終わった次の日からだ。

そして、アカバネにもクラスの様子を聞くように言われ捜索した。

が、クラス一同はいじめはないと言う嘘を信じそれを学校側に報告した。

しかし、その報告に納得のいかない母親、再度捜索といじめの捜査を依頼したが学校側はそれを再び耳を貸さなかった。

その後、アカバネはこの問題を一人で背負わされ退職されてしまった。

アカバネはその事をアキラの母親が住むアパートに行くと母親は自分の首を切り自殺をしていた。

母親の死体のそばに血文字が書かれていた。そこにはこう書かれていた。

『二年一組の生徒、担任教師。呪われて死んでしまえ』

母親の怨みを感じ取ったアカバネはその場を立ち去った。

そして、この十年職を転々としながらアキラの行方を独自で捜査したが有益な情報はなかった。


アカバネの過去、そしてアキラの家庭。

その全てを壊したのはあの夏の夜の日の出来事だった。

いや、それ以前にアキラをいじめてしまった時からだったのかもしれなかった。

ショウイチたちはアカバネから出た真実にただただうつむくしかなかった。

「ともかく、今は穴熊中学校旧校舎に向かうしない。そこに……アキラがいる」

アカバネの言葉に三人は前を向き頷いた。

それを確認したアカバネは老眼鏡を探しそれを掛けるとそこには居ないはずの二人がショウイチの後ろに立っているのを目撃した。

アカバネは焦り老眼鏡を外し再び掛けると今度はその二人が真正面に現れた。

二人の表情は暗くそして怒りの感情をあらわにしていた。

「アキラくん……そして、アキラくんのお母さん……」

アカバネの言葉に三人は凍りついた。

三人にはアキラと母親が全く見えてないのだから。

アキラと母親はアカバネを睨みつけて低い声で喋り始めた。

その声は耳から出なく頭に直接響くような感じだった。

『オマエハ、ボクノ声ハ聞コウトシナカッタノニ……ドウシテ、コイツラノ声ハ聞コウトスルンダ!』

『アナタハ苦シンデル、ムスコヲ蔑ロニシタノニ……コイツラガ苦シンデルトキハ、手ヲ差シ伸ベルノカ!』

アカバネは恐怖で声がでず、冷や汗をかきながら顔を左右に振るがアキラは右手を母親は左手をアカバネの瞼の前に迫った。

『ナニモ見エナイソンナ目……イラナイヨネ?』

『外シテモ……構ワナイデスヨネ?』

二人がそう言うと、アカバネの眼球に手を掛けた。

「うがぁぁぁぁぁぁ!」

アカバネにこの世とは思えない激痛が走りそして、アカバネの眼球が床に落ちてしまった。

ショウイチたちは突然の出来事にアカバネから離れた。

「せ、先生!」

ユキコがそう叫んだがアカバネは痛さのあまりその声は届かなかった。

『ナニモ聞コエナイ耳ナンテ……イラナイヨネ』

アキラの言葉と同時に今度は左右の耳を親子が引っ張り始めた。

ブチブチと耳と顔から割ける音が聞こえる。

「ギギギギ……」

アカバネの口から泡が出始めると同時に左右の耳は顔から剥がれ落ちた。

ショウイチたちその場から離れようとするが何故か外に出れなくなっていた。

「く、くそ!鍵を掛けたのに!ドアが……ドアが開かない!」

ショウイチはドアを何度も押したり引いたりしたがびくともしなかった。

「せ、先生を助けないの!」

「バカ!もうダメだ……先生は殺される!アキラの親子二人に!」

ユキコが訴えたがリョウヘイは左右に振りショウイチの手伝いをする。

すると後ろから、のそのそと歩く音が聞こえる。

三人が振り返ると、眼球を無くした目から血が流れ落ち、耳がなくなったアカバネの姿を立っていた。

「た……す……け……て、お……ま…えた……ち、た……す…けて……ぐ……れ……ぇ」

アカバネは手を前に突き出しショウイチたちに助けを求めたい。

三人はその悍ましい光景をただただ見るしかできなかった。

すると急にアカバネは、両手を頭を抱え込んだ。

『ナニモ考エル事ガ出来ナイ脳味噌ナンカイラナイヨネ?』

それがアカバネが聞こえた、最期の声だった。

「ぐあぁぁぁぁあ!」

アカバネは両手を頭を抱え込んだまま上を見上げた。

そして……ボンッという音と共にアカバネの顔半分が砕け散った。

アカバネの周りの壁には血が飛び散り床には肉片がぼとぼとと落ちてゆく。

アカバネの両手はその衝撃からなのか無くなってしまった。

そして、アカバネだったそれは真後ろに倒れこんでしまった。

「うっ…うっ……うわぁぁぁぁ」

ショウイチたちは慌ててドアノブに手を掛けると今度は簡単に開いた。

そして、そのまま車に乗り込みその場を離れたのだった。


近くのコンビニに立ち寄りタオルで身体に着いた汚れや血を吹いていた。

「これから……どうするの?」

ユキコが二人に尋ねた。

ここに来る途中、ラジオ内で三人を緊急指名手配された。

もう、街に繰り出すことは不可能に近い。

ここのコンビニも顔を隠しながらの買い物だったのでいつ不信に思われても仕方なかった。

もう、帰る場所も行く当てもなかった。

「行くしか……ないだろ?」

ショウイチは出席簿を軽く上げながら答えた。

それにはリョウヘイも頷いた。

まずは自分たちのせいで悪霊にしてしまったアキラの事だ先だと思ったからだ。

ユキコも渋々頷き、一路穴熊中学校の旧校舎へと向かった。

あたりもすっかり真っ暗になる中軽自動車は山道を走行していた。

デコボコな山道により車は左右に揺れながらも旧校舎に向かう。

「リョウヘイ、多分旧校舎だからここら辺で止めた方がいいかもしれないぜ?」

ショウイチの言葉にリョウヘイは頷きブレーキを掛けようとした。

車は速度を落とすどころか益々加速していた。

「おい!リョウヘイ、ブレーキかけろよ!」

「……動けないんだ……」

「えっ……?」

「俺の、足の間に……アキラが……邪魔して……」

リョウヘイは脂汗をかきながら説明した事を確認するためショウイチは運転席を確認した。

しかし、そこにはアキラの姿はなかった。

「見えないのかよ!入るんだよ!」

「リョウヘイ!前!前!」

リョウヘイが焦る中後部座席にいるユキコが指を指していた。

リョウヘイとショウイチは前を見ると大きな木が迫っていた。

そして、木に勢いよくぶつかりクラクションが山中に響く。

ショウイチは額を切ったため血が流れるのをタオルで巻いて応急措置を施した。

ユキコは膝をつき息を整えている中リョウヘイの姿が見えなかった。

「リョウヘイは?リョウヘイはどこ!」

ユキコが辺りを見回すと運転席から動けないリョウヘイの姿があった。

「リョウヘイ!」

ショウイチが駆け寄ろうとするとドアは重く開かなかった。

そして、車に閉じ込められたリョウヘイの運転席のシートベルトがだんだん締め上げてきたのだ。

「うっ……あ…あっ」

バックミラーを見ると不敵な笑顔を浮かべるアキラがシートベルトを握っていた。

するとドンドンという音の方をリョウヘイはわずかな力を使って振り向くとそこには尖った石で窓ガラスを割ろうとしているショウイチの姿が写っていた。


「急いでショウイチ!出席簿が……リョウヘイの出席欄に丸印が浮かぶ上がってるよ!」

「わかってる!だけど、なんで割れないんだよ!ちくしょう!」

ユキコは出席簿を確認しながらショウイチに訴え、ショウイチは必死で窓ガラスを割ろうとしていた。

が、まるで防弾ガラスかのように一向に割れる気配がなかったのだった。

車内ではだんだん苦悶の表情を浮かべるリョウヘイの姿があった。

そして、次の瞬間リョウヘイの声と共に車の窓ガラス全てに赤い液体で見えなくなってしまったのだった。

「…………ショウイチ…。リョウヘイの出席欄が……」

ユキコの震える声で全てが察した。

するとショウイチの目の前にある窓ガラスが動き出すとそこにはシートベルトが大胸筋を深くめり込んだ反動で肋骨が飛び出し、顔は目と口に大量の血が流れていた。

すると、車から声が聞こえた。

それは、これまでずっと自分たちを監視をしていたアキラの声だった。

『アトハ、オ前タチ二人ダケダ!早ク……校舎二来イ!』


穴熊中学校旧校舎。

ショウイチとユキコはこの惨劇を作り出してしまった場所を目指していた。

この事件が始まった頃ショウイチはいつも考えてしまう。

どうして、アキラはクラスメート全員を殺すんだ……と。

しかし、考えてみればアキラの怒りはおそらく自分たちが考えている以上に根深いものではないかと思ってしまう。

学校ではクラスメート全員で無視、または悪口と陰口を叩かれる。誰もが彼の味方をするものがいなかった。

そして、旧校舎に無理やり連れ出され一人ぼっちにさせられる。

自分だったらどう思うか。

考えなくってもわかる。きっと自分も同じように怨みが強くなり、そして憎悪に変わり自分をいじめた事を忘れのうのうと平和に暮らすクラスメート全員に殺意を芽生えても分かりきったことだった。

幼いからとか気付かなかったとかはそれは言い訳に過ぎなかった。

悪いのはそういう風に考えを持ってしまった自分たちの所為なのだ。

この日が来るまで失ったかものが大きすぎる。

そして、それを作り出したのは誰なのか。

そう、全ては自分たちの行いから始まったのだった。

そう考えているうち、目の前には木造の建物が見えてくる。

「ついに、たどり着いてしまったな……」

ショウイチの言葉にユキコは頷き。

「えぇ……、全てが始まったこの場所に」

二人は途中で立ち寄ったコンビニで買った懐中電灯をもち穴熊中学校旧校舎の中に潜入するのだった。


二人が中に入ると突然引き戸が閉まる音が聞こえた。

振り向き戸を開けようとするがビクともしなかった。

「閉じ込められた」

もう、後戻りは許されないそう感じたショウイチはそうつぶやき、二人は内部の探索する事に決めた。

校舎内は埃が充満していて明かりを照らすと塵が舞い落ちていた。

一階には何もおかしな事はなく今度は二階に行く事にした。

しばらく歩くと小さな声が聞こえてきた。

二人は明かりを消すと前方に青白い光を照らす教室が見えていた。

二人は腰を低くしながらそこにたどり着き窓から教室内を除いた。

教室内にはきちんと並んだ机と椅子。そしてまだ真新しい教卓が置いてあった。

そして机と教卓の上にはロウソクが置いてあり青白い灯りが三十一本灯っていた。

(これって……どういう意味?)

ユキコが小声でショウイチ方に振り向き聞くとショウイチは真っ青な顔をしながら答えた。

(……きっと、今まで死んでいったみんなだ。アキラを入れてアキラが殺した先生やリョウヘイたちの魂の灯りなんだ)

その言葉の意味がわかると同時教室から再び声が聞こえてきた。

『先生、何で出席を取らないんですか?』

その声はホノカの声だった。

『仕方ないだろ?出席簿がないんだから。それにまだ今日の日直ともう一人いないしなぁ……』

次に聞こえたのはアカバネだった。

『もしかしたら、あの二人付き合ってんじゃねぇの?』

そして、リョウヘイの声により教室は笑い声が起きた。

すると一人の声が聞こえ始めた。

『きっと、もう来てるはずだよ……。だって……』

するとその声突然止まると、勢いよく窓が開き不気味な顔をしたアキラが覗き込み。

『モウ……コノ教室ノ前マデ……来テルンダカラ……』

その声はもうアキラの声ではなかった。

とても低くそして強い憎悪に満ちた声だった。

二人その場から一歩二歩と下がると教室から青白い影がぞろぞろとできたのだった。

二人は恐怖を感じその場から離れた。すると後ろから

『ツカマエロ!』

という声を合図に影が襲ってきたのだった。


どうやって逃げたか分からなかった。

しかし、その所為でショウイチと離れ離れになったユキコは一階の方に降りていた。

懐中電灯を照らしながら身を隠す所を探していた。

するとしくしく……と誰かが泣く声が聞こえた。

その声は次第大きくなってきた。

「ここから聞こえる?」

懐中電灯を照らすとそこにはこう書かれていた。

『教務室』

ユキコは息を飲んだ。

確か、中学生時代。そうアキラを連れ出しこの場所に訪れアキラに向かうように指示した場所だった。

ユキコは意を決してその教務室の中に入った。

辺りは薄暗かった。

ユキコは懐中電灯で辺りを見渡すと白骨がそこにあった。

「ひっ……!」

ユキコは思わず口を手にしながらそれを確認するとある事に気付いた。

その白骨の近くにはメガネが置いてあった。

その白骨が来ていた服は薄い記憶が徐々に蘇ってきた。

「ア……キ……ラ……!?」

その白骨はアキラのものだった。

ユキコは懐中電灯を手放した事も気づかないまま両膝と両手をつき涙した。

「ごめん……ごめんね……アキラ……」

だから、気付かなかった。

アキラの白骨がゆっくりと起き上がる事に。

そしてカタカタという音に気付いたユキコが顔を上げた瞬間目の前には口を開いたアキラのドクロだった。

「えっ……?」


「はぁはぁ……」

ユキコと離れたショウイチは腰を下ろし膝を抱えながら息を整えていた。

懐中電灯はさっき逃げる途中で落としてしまった。

「ユキコ……どこだ……」

その時ショウイチは気づいた。

きっと、アキラも同じだったんだ。

こうやって心細かったに違いなかった。

ショウイチは改めて自分の犯した残酷な罪を意識した。

すると、左の方からヒタヒタと音がした。

音がする方に顔を向けるが暗闇で分からなかった。

すると雲に隠れていた月が出て光が差し込む。

その姿に見覚えがあった。

数分前まで一緒に行動していた、ユキコの姿だった。

「ユキコ……!」

ショウイチは立ち上がりその方向を見た。

「ユ…キコ……?」

しかし、その歩き方に不自然があった。

肩を左右に動き歩幅も小さかった。

そして、ユキコの全体が月明かりて照らされた時、ショウイチは恐怖した。

なぜならユキコの頭部が千切れて無くなっていたからだ。

そして、ユキコの手がショウイチに手を伸ばしヒタヒタと迫ってきた。

「く、来るな!」

そう叫ぶと、ユキコは力を無くしたのか前のめりになり倒れこんだ。

千切れた首から大量の血が吹き出て床を血の色に染め上げた。

ショウイチの近くにある窓ガラスが突然突き破るとそこにはメガネをかけた骸骨が現れた。

その骸骨の口には何本何百本の黒い糸が垂れ下がっていた。

それを吐き出すとゴロゴロと転がり血だまりのところで止まった。

そして、それがユキコの頭部だった。

「ユキコー!」

ショウイチは膝をつき叫んだ。

ユキコの顔は目を閉じ、目と口から血が流れていた。

「あ……ああっ……」

ショウイチはその現実を受けて止めずにいるとユキコの顔に変化が表れた。

突然、目を見開き閉じた口が動き始めた。

『後ハ……オ前ダケダ!』

その声はユキコではなかった。

この事件が始まってずっと離れなかったあの声。アキラの声だった。

ショウイチは無我夢中でその場から離れた。

そして、その声が引き金となったのか校舎内全体に声が至る所から聞こえるようになった。

アキラだけでなかった。

ユキコ、リョウヘイ、ホノカ、ダイスケ、イチロウ、アカバネなどといった自分を除く二年一組の生徒の声で

『後はお前だけだ』

と響き渡った。

そして、通り過ぎるガラスには死んだ生徒たちの顔。後ろからは亡霊が迫りつつあった。

「はぁはぁはぁはぁ……」

ショウイチは走った。

額の傷がしみるくらいの汗をかき、息は絶え絶えになりながら。

すると今度は前方からも亡霊の姿が現れた。

ショウイチは後ろを確認するがやはり亡霊が迫りつつあった。

ショウイチは思わずある教室の中に逃げ込んだ。

すると、声が消え亡霊の気配も消えた。

「ふぅー。助かっ……た…。あぁ…あああっ!」

ショウイチがため息を吐いた途端あるものが目の前には飛び込んだ。

それは誰も使われていないはずな旧校舎。

他の教室は荒れているはずなのにある教室だけはきちんと机と椅子が三十二台並んでる。

そして、教卓の上にはいつどこで落としたか忘れたが出席簿が置いてあった。

ショウイチは力を失い側に崩れ落ちた。

頭を下げると目の前に気配が感じた。

ショウイチはもう顔を上げてそれを見るを諦めた。

そして、その気配の白い手がショウイチの頭をつかむのだった。


穴熊中学校旧校舎。

山奥にある木造校舎は今は誰も使われてない。

そのため中は至る所で傷んでいた。

各教室は荒れ放題の中ある一箇所だけは綺麗に整頓されていた。

その教室の中にある教卓の上に置いてある出席簿。

その出席簿を開くと担任教師の名前と生徒の名前が書かれていた。

出席欄には全員が出席された証である赤い丸が全生徒に付けられていた。

すると教室の一番後ろから何かが崩れ落ちる音が聞こえる。

教室には珍しい骨格標本だった。

しかし、この骨格標本にはこの生徒のいたずらなのか……

頭蓋骨には赤黒い汚れがついたタオルがまいてあったのだった。


終幕

最後まで読んでいただき有り難うございます。

この作品を作る時思ったのが主人公たちは生還しない終わりにしようと思いあの設定にしました。

あとテーマが学校という事もあり身近でなおかつどんな教室にもある出席簿をキーアイテムとして採用しました。

前書きにも書きましたが僕はホラー系の作品はあまり見ません。

その理由は簡単に怖がりだからです。

さて、つぎはファンタジー小節に挑戦したいと思います。

有り難うございました。

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