愛は人を救う
ここは革命街。戦争の起こる街。怒る街。凍る街。
この街には、三人の少女が居る。
いつも、あるお店に出入りしている。
「僕は、君のことが好きなんだ」
「へえー」
「だから、この街に革命を起こそう」
「どういう事?」
「ここは革命街。戦争の起こる街。怒る街、凍る街。ここは、僕たちの中心の街」
「どういう事? 私、あなたの言ってることがよく分からないわ」
「だから、結婚しよう。二人でこの街にシンジケートを産み落とそうよ」
私は承諾した。
「いいわ。結婚してあげる。君は、何歳?」
「僕? 十八」
「私、十六歳だわ。それでも良いの?」
「良いよ。ジュリエットもその年で恋をした」
そのあと死んでるだろ。
「ま、とにかく、この革命街の隣の、戦争街に行こうか、後で」
「何故?」
「革命の恋人は戦争だから」
「そう。戦争の恋人は革命なのね」
「そう。そして僕らはその子供」
そうか、私たちは街を作る。
その夜、私たちは初夜を迎えた。
次の日、革命街と戦争街の間に、新しい街が出来た。恋人通りと言うらしい。
「どうだい。恋人通り。どうりで」
「あの、二人目を産みたい」
「うん、良いよ」
その夜、また寝た。
次の日、恋人通りは消滅していた。隣に平和通りが出来ていた。
「前の子は死んだのね」
「恋は人を元に戻すからね。これでもとどおり」
次の日、革命街も戦争街も、平和通りに取り込まれていた。平和街というらしい。この街の趨勢も変わった。
「これでもとどおり?」
「ううん。いやまだだ」
その夜、私たちは、一緒に有る薬を飲んだ。
次の日、全ての街が消滅していた。唯一残ったのは、アノお店。
「馬鹿だな、あいつも」
そういうのは、三人の少女のうち一人とただ寝まくった男だ。
「いや、まだ二人いる!」
男は、と言っても彼はまだ十八なのだが、ともかく、店にいた二人の少女に話しかけた。
「来ないで。あなたは、姉さんを殺したのね」
「なんで分かった」
「カンで分かるわ」
少女二人は、男を無視して、有る飲み物を飲み続けた。
「ちっ」
男は、舌打ちすると、暫くして、店を出て行った。
「あの、お勘定!」
ここは革命街。旧革命街。人の気持ちの温まる場所。ここでは老婆も彼女になる。おそらく、あの女の子らも年は俺よりたくさん上だろう。まあ、俺は、本当は今年で十九になる。あまり見た目の年と違わない。ただ、まあ、とにかく、此処に来ると、みんな、心と体が若返るのだ。なんで俺はこんな世界に来たのか。
これは夢か。
「夢よ、君の夢」
「君は?」
「死んじゃった君の彼女」
「……」
「本当の年は二十九」
「夢オチってんなら別にいいだろ」
「本当に私が死んでたらどうすんのよ」
「え」
「君の見た夢は、霊界と繋がってるのよ。私は、ある人の潜在意識。私は、君に殺された」
「違う」
「違わないわ。責任とって」
「……」
「彼女に現世でキスをすれば、生き返るわ」
「でもまって。彼女の居場所は……」
「ええ、彼女の住所は……✖︎✖︎✖︎✖︎✖︎✖︎✖︎✖︎✖︎✖︎✖︎✖︎✖︎✖︎✖︎✖︎」
その朝、僕は、土曜日で休日だったので、その彼女のところへ行った。
歩いている時に考えた。胡蝶の夢という比喩を。この世は一瞬の夢。いや、この世は物語か?
その彼女の家に着いた。出ない。鍵は空いている。
(夢ではその潜在意識とやらは、本体は一人暮らしと言っていた)
僕は勝手に家の中に入る。そして、寝ている彼女にキスをした。僕は直ぐに彼女の家を出た。
「その彼女の病気は、寝すぎてしまうというもので、ま、とにかく、日中は必ずずっと寝ています。ぐっすりと」
と、夢でその潜在意識さんが言っていた。