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死にたい風  作者: 野良丸
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プロローグ




 これが悪いことだっていうのは、分かっていた。優しい人と触れ合った後だと、余計に罪悪感が胸を締め付けた。

 でも、家にはもう食べ物がなかった。

 小さな商店に入り、比較的入口の傍にある棚からいちごミルク飴を手に取る。もっとお腹に溜まりやすいパンとかはカウンターの近くにあるから取れない。小さな駄菓子を数個取るくらいなら、内容量の多い飴の方がマシなのだ。

 いちごミルクを持ったまま店を出ようとした時、その手を誰かが掴んだ。

 短く息をのみ、振り返ると、手を掴んでいたのは同じくらいの歳の男の子だった。

「だめだよ。ちゃんとお金はらわないと」

 まるで、さっきまで一緒にいた人物に怒られているような気になり、女の子は涙ぐむ。そんな表情を見て、男の子は狼狽しだした。

「な、なんで泣くの? ……もしかして、お金ないの?」

 泣きそうになっている理由は違うけど、それも間違いではない。女の子が涙を拭いながら頷くと、男の子は手を引いて店の奥へ入っていく。

 レジカウンターに座っているお婆さんを、女の子は久しぶりに見た。しかし、罪悪感から直視することは出来ず、すぐに俯いた。

「これ、ください」

 男の子は、女の子が持っているいちごミルク飴を指差して言う。

「百円だよ」

「はい」

「ありがとね」

「あ、あと、袋がほしいです」

「袋。こんなのでいいかい?」

「うん! ありがとう……ございます」

 そんなやり取りを聞いていた女の子が恐る恐る顔を上げると、お婆さんと目があった。

「ありがとね」

 優しい声に、泣きそうになった。いっそ、泣いて、全て言ってしまいたくなった。

「行こう」

 男の子に手を引かれる。流石に歩いている時まで俯いていては危ないため、顔を上げて、そこで気付いた。

 店の天井隅には鏡が設置されていて、カウンターからは死角だった筈の棚が丸見えだった。

 女の子がゆっくりと振り返ると、お婆さんは変わらない笑みを浮かべて、

「またおいで」と言った。

 店を出たところで男の子は足を止めて、女の子の手を離していちごミルクの袋を開けた。

「半分、あげる」

 お婆さんからもらったビニール袋に飴玉を入れながら、男の子は言う。

「で、でも、わたし……」

 男の子が袋を差し出しても、女の子は受け取ろうとしない。男の子はどうした者かと考えてから、良いことを思いついた、というように笑顔を浮かべた。

「じゃあ、これから僕の家に遊びにきなよ。遊びながら、一緒に飴食べよう」

 そう言って、男の子は女の子の手を握る。

 女の子は、しっかりと繋がれた手をしばらく見つめてから、また目に涙を溜めながらも、笑顔で頷いた。




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