再会
一つしかないドアが開いた音に、私は我に返った。振り返ると、どこかで見たような。黒髪で童顔な、そんでもってボサボサ頭の男が、息を切らせながら驚いた表情をしていた。
その表情を見て、私の中でようやく記憶が繋がった。有り得ない繋がり方なのに、なぜか、ストンと嵌った。
でも、少し遅かった。
身体が後ろに傾いていく。ソウタは目を見開き、屋上の床を強く蹴り出す。
ビルから身体を投げ出す浮遊感の中、自然と右手が前に伸びた。何、迷ってんだ、私。それともあんたが迷ってんのか? 死にたい風さん。
ソウタが手を伸ばす。しかし、二本の手は、指先が僅かに触れたのみだった。
私は目を閉じて、身体から力を抜く。もはや、浮遊感はない。感じるのは、落下する風圧のみ。
そんな中、不意に、暖かいものが、私の身体を包んだ。
思わず目を開けると、そこには、十年以上も前に見た、でも全然懐かしくない笑顔が、そこにはあった。
「……なんで」
「いいんだ。俺も、もともと死ぬつもりだった」
でも、と彼は続けた。
「次は絶対に間に合わせてみせる。そうしたら、二人で生きよう。お互いの存在を重荷に、生きる糧にしよう」
「……私、こんなんだよ? 今の君なら分かってるでしょ?」
「分かってる。でも、俺だってまだ言ってないことがある。言いたいこともある。だから、話そう。まずは、そのための場所を、俺達は作らなきゃいけない」
地面が間近に迫り、激突するかしないかというタイミングで、私は頷いた。彼は、笑顔を見せてくれたように、思う。




