表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ぼくの詩集

楽園の女

作者: 桜井あんじ

私の一部を 切り取って

あなたに あげましょう と

その女は 言うのです

私の一部を 切り取って

差し上げましょう あなたに と

言うのです


あなた性器を入れるための穴が空いている あたたかい肉の塊

それだけでは ないのだと

食事を作り 掃除をし 励まし 時には叱り

かつ あなたは正しいと 壊れた人形のようにくりかえす 

それだけのものでは ないのだと

女は 言うのです


女が言うには 

女というのは いきもので

ぼくたちには わからないようなことを いろいろ

考えたりとか 感じたり するそうです

肉の塊のなかには こころというものを もっていて

そこには 秘密の楽園が あるのです と

美しい楽園でありながら 女はそこで

獰猛で醜いけだものを 慈しんでいるのだ とも

そしてその一隅に

ずっとぼくの 住む場所を こしらえていると いうのです

そこではぼくは かの日のままで

永遠の真実を暮らせるのだ そうです


何があっても時がたっても

そこには誰もはいれません

ぼくだけしかいない 世界

彼女のこころの 小さな楽園です


言うべき言葉もみつからず

ぼくにはわかりません と つぶやくことしかできないぼくに

一目散に逃げ出そうとする 僕に

わからなくとも よいのです と

そして 

痛々しい微笑みを浮かべながら

切り取った自らの一部を 僕に

差し出すのです


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ