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「じゃーん!」
「本当だー。私、また琴羽の冗談かと思った。」
「ひっどーい。」
「ごめん、ごめん。」
「ま、いいけどさー。そういう里香は、どこ就いたの?」
「えーとね、無難なケーキ屋よ。」
「里香らしいね。小さいころから好きだったもんね、ケーキ。」
「そ、それとこれとは別なんだから。何、言ってんの琴羽。」
「ごめーん。」
「許してやんなーい。」
「そ、そんなー。」
ルルルー♪ルルルルー♪
「あっ、お母さんからだ!……琴羽、私もう帰んなきゃ。」
「もう?もう少しゆっくりしていったらいいのに…。」
「そうはいかないわよ。琴羽も知っているでしょ。お母さんが時間に厳しいの…。」
「そうだけどさー…。」
「また、ゆっくり時間があるときに来るわ。またね。」
「……またね。」
私は、この後一生里香と会うことはなかった。またね。里香。お元気でね。