「じゃぁ、何なのよ」
声を発したのは、美優さん。
「面倒だから話し合わなくてもいいわ。それより、あたしの質問にイエスかノーで答えて」
ギリッと異形のモノを睨み据えた美優さんは、綺麗なんだけれど何というか。決してほめてはいない『怖いもの知らず』という言葉がよく似合った。
「一つ目」
美優さんはすでに、異形のモノの反応を見ていない。完全に自分のペースにするつもりだから、向こうが異議を申し立てても無視するのだろう。
美優さんの桜色の唇が、ゆっくりと動く。
「あなたたちは地球人を迫害したいの?」
いきなり、ぶっちゃけた質問だな、おい。そういうところが美優さんらしいっちゃ、らしいんだけど。
こんな質問に答えてくれるのかと、不安になったとき
「ノー」
異形のモノは律儀に、イエスかノーで返してきた。
「そう」
美優さんの返しに対する反応は素っ気ないもの。
「じゃ、次」
と、どんどん先に物事を進めてしまう。
「地球人に自分たちの存在をアピールしたい?」
「イエス」
「そのために、ここを襲った?」
「イエス」
「アピールしたいのは、地球人を支配するため?」
「ノー」
「植民地化するつもり?」
「ソレは絶対にない」
「じゃあ、何なのよ」
ばんばん質問を浴びせた挙句、若干の逆ギレを見せる美優さんは相当の鬼だ。
異形のモノたちが怒り出さなきゃいいけど、と思い、そっとこぶしを握る。それに気づいたのか、千尋が少し背中をなでてくれた。
「我々は、地球人と交流を深メルためにやってキタ」
左から三番目の異形のモノが言う。
「支配するツモリはナイ。だが、地球人は我々を恐れてイル。だから、電波が欲シイ」
「なるほど」
思わずつぶやいてしまった。
律儀な性格といい、頼めば水木さんの意識を返してくれたことといい、殺したくないから急所を教えろという要求といい、なんとなく地球人に害のないような気はしていた。
それをあまり信じていなかったからこそ、今の今までびくついていたのだが、交流を目的としているのなら、こちらに危害を加えることはない。この異形のモノたちは怖くない。
そうとわかったら、急に気が抜けた。ホッと背中をソファにくっつける。そんなあたしの隣で、美優さんがなぜか
「合格」
とつぶやいた。
「そうとわかれば、準備よ」
立ち上がり、麗さんを呼ぶ美優さん。
「何するんですか?」
という問いは、
「楽しいこと」
とはぐらかされてしまい、美優さんに耳打ちされた麗さんに言われるまま、機材の運搬を手伝わされた。