「ところで」
異形のモノ7人を一つのソファに座らせたのは少々まずかったかもしれない。なんだか居心地が悪そうにしている。多分、狭いのだろう。
「ところで」
コホンとわざとらしい咳払いをし、美優さんが切り出す。
「銃撃戦、勝ちましたので言うことを聞いていただきたいと思います」
異形のモノたちが一斉にうなずく。
「でも、まず最初に質問」
ひとつ、と人差し指を立てた美優さんは、ひどく綺麗な動作でそれを唇にあてる。
「あなたたちが、地球にきたわけ」
異形のモノの答えを聞かず、美優さんはさらに中指を立てる。
「ふたつ。影響力のある電波を欲しがったわけ」
もう一本、薬指が立てられ、
「最後に、あなたたちが今一番成し遂げたいこと」
なぜだろうか。美優さんはひどく満足そうに、ともすれば官能的な表情で、異形のモノたちに問う。
異形のモノがこちら側の『美』を分かってくれるか定かではないが、地球人から見れば、それは間違いなく『美しい』仕草だった。美優さんは、異形のモノを誘惑したいのだろうか。
あたしがぼぅっと考えている間に、ゆったりと時間が過ぎていく。誰も何もしゃべらない、動かない時が過ぎ、そろそろ息苦しくなった頃。
「話せバ、長クなる」
ぽつりと、右から2番目の異形のモノがつぶやいた。その瞬間。
「おっ茶でーす!!」
と、祭が乱入してきた。
「いや、空気読めよ」
千尋がぼそりとつぶやいたのも仕方がない。あたしだって、そう思った。
「とりあえず麦茶だよ。緑茶がいいなら言ってねー」
とんとんと、調子よくお茶を配る祭の機嫌よさげな顔に、良いところだったのに、なんて文句は言えない。
「ありがとう」
と、無難に返事をしておいた。
祭の件で、すっかり話の出端を挫かれたらしい。先ほどしゃべりかけた異形のモノが、身を少しだけよじった。
「で、ダ」
そういって、じっとあたしたちの顔を見る。その緊張した雰囲気にのまれ、ぐっと唾をのみこんだ。
しばしの沈黙。
「話シにくいな」
突然、照れたように異形のモノが頭をかく。
「何カラ話してイいのか、分からナイ」
異形のモノたちが顔を合わせ、ひそひそと何かやっている。
何を話しているんだろう。興味津々でそれを見つめていると、隣からはぁっとため息が聞こえた。
「あなたたち」