「どーすんのこれ」
渋々、チャイナ服に袖を通す。
それは案外ぴっちりとした生地で、体のラインがはっきりと出た。ハイネックのため、見えないはずの鎖骨が服越しにくっきりと浮かび上がるほど。
これは…。
鏡を呆然と見つめ、決心した。急いで部屋に戻って着替えよう。
扉に手をかけ、脱衣所を出ようとしたその瞬間。
「どこいくの」
まだびしょ濡れの腕に腰を絡め取られた。
「離してくれ、千尋」
「なんで」
「着替えるから!!」
チャイナ姿なんて、美優さんたちに見せられるか、コノヤロウ。彼氏にすら見せたくないほどこっぱずかしいんだぞ、コノヤロウ。
「お願い、着替えさせて、マジで」
俯いて懇願しても、ドSな千尋が許してくれるはずもなく。
「似合うじゃん。せっかくなら髪もアップにすればいいのに」
と、ご丁寧に髪を梳いて結んでくれた。
こうして、恥ずかしさに戦意を喪失したまま、やりたいようにやられ、めでたくなくチャイナ友香が誕生した。
「どーすんのこれ」
再度、鏡を呆然と見る。頭のほぼてっぺんでお団子にされた髪は黄色のシュシュで飾られており、器用な千尋がうっすらと口紅まで差してくれた。
風呂上りって、こんなに気合をいれるものなのか。これからせいぜい、夕飯と生放送と異形のモノとの対談くらいしかしないのに。
「オッケー、さすが俺」
と、自分の腕を自画自賛した千尋はあたしをメイクアップした後、ようやく服を着た。
「ほら、行くよ」
事もなげに手を差し出す千尋に、少し上目遣いで
「どうしても?」
とつぶやく。お願い、別の衣装でもいいよって言って!
その願いはとどかず、
「どうしても」
と手を引かれ、リビングに連れ出された。