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「見たいじゃん、ゆーかのチャイナ。可愛いと思うよ」

 がしかし。そんなに現実は甘くない。っていうか、千尋が甘くない。


「服は」


 千尋に腕をつかまれ、静止。


「え?」


 笑顔で乗り切ろうとするも、


「服、渡したでしょ」


 あえなく失敗。


「もー、なんで着ないのかな。風邪ひくでしょ、髪も濡れたまんまだし」


 腕を引っ張られ、なぜか脱衣所にリターンする。


「ほら、服」


 はい、と巾着袋から取り出した服を見て、さすがの千尋も唖然となった。


「…これ、どしたの」


「千尋から渡されたんだよ」


「俺じゃねぇよ、入れたの」


 しばしの沈黙。


 もう、どうするのさ、と口を開きかけたところで、


「よし」


 千尋が高らかに言い放った。


「ゆーか、これ着ろ」


「はぁ!?」


 何を言っているのか、あたしの彼氏サマは。こんな大人っぽいセクシーな服が、この童顔に似合うわけないだろ、ばーか。どうせ着るなら麗さんだろ。

 もろもろの文句を一言で言い表すことはできず、ようやく


「ありえない」


 とだけ言い放つ。がしかし、これ一言で黙るような千尋ではない。


「着ようよ。見たいじゃん、ゆーかのチャイナ。可愛いと思うよ。俺、萌えちゃうよ。だから着てってば」


「嘘でしょ、ありえない。無理だって、あたしには。麗さんに着てもらってよ」


「ゆーかじゃないと意味ないでしょ。お願い、着てってば」


「嫌だって」


 押し問答がしばらく続き、


「じゃ、俺風呂入るから! バスタオルで別荘の中うろつくなよ!!」


 と千尋が強行突破で、あたしにチャイナ服を押し付けて行った。


 もう、どうすんのさ、これ。

 手元に残った赤い服と自分が身にまとっているバスタオルを見比べ、ため息をつく。

 もう、思案するまでもない。着るしかないじゃないか。いくら嫌がったって、彼氏の『萌えちゃう』発言には勝てない。今日のメイド服だって同じだ。


「あーあ」



 どうかバカにされませんように。


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