「いちゃつくのはその後だ!!」
「おいこら、そこのバカップルー!!」
美優さんの声に、渋々顔を上げる。あたしたちはまだ、抱き合ったままだった。
「撃て。撃って撃って、とりあえず勝て! いちゃつくのはその後だ!!」
檄を飛ばされ、あわてて離れる。
「あーあ、怒られた」
千尋がそういって、あたしの頭をなでる。
「怪我したら殺す」
「えっ!?」
頭に乗った手はそのままに、千尋が不穏な声が聞こえてきた。
「あたし、殺されるの?」
「ちげーよ、異形のモノだよ」
あたしは殺されないとしても、異形のモノが殺されてしまうのか。それでいいのか、悪いのか。
…うん、悪い。
「ほどほどにね」
殺す、という言葉を発するたびに異形のモノを恐ろしい目つきで睨み付ける千尋は、多分あたしが怪我をしたら本当に異形のモノを殺しにかかるのだろう。
こいつは、敵に回してはいけないと強く思った。
「いってぇ!!」
千尋と別れ、一つの壁を挟んで異形のモノとマンツーマンの対決をしていたところに、藤野さんの声が聞こえた。
うそ、痛い? 怪我した? 銃撃戦で? それならこっちが負けちゃうじゃん!
焦った頭の中で、
――怪我か?
と異形のモノの声が響く。
(今から確認するから、待って!)
重いので銃は砂地に置き、藤野さんのもとへ走る。幸い、銃弾は降ってこなかった。
「藤野さん! 怪我ですか!!」
息を切らせて駆け寄れば、すでに水木さんは駆けつけており藤野さんの手を一心に見ていた。
「あ、ごめん。大丈夫だよ」
へらへらと、銃撃戦で負傷したとは思えないほど軽く藤野さんが言う。
「ちょっとね、銃弾の詰め替えで爪ひっかけちゃって。剥がれるかと思ったー」
あはは、と笑う藤野さんは、本当に呑気で。
「なんだ…」
そんなことか。銃撃戦とまったく関係なくはないが、負傷ではない。つまり、こちらの負けではない。
ふぅっと息をつけば、
「心配した? ごめんねー」
と、これまたのんきに謝られた。
「大丈夫よ。怪我にすらなってないわ」
水木さんが藤野さんの手から顔を上げた。
「しっかりしなさいよねー」
咎めるような口調のくせに、優しく藤野さんを見つめる水木さん。
なんだ、このバカップル。羨ましいにもほどがある。
「じゃ、行きますね」
この二人を見ていたら、あたしまで千尋に甘えたくなる。銃撃戦でイチャイチャしてられるかっての。
少しなげやりに、異形のモノへ報告する。
(怪我じゃなかったよ)
――そうか、お前少し機嫌が悪いな
余計なお世話だ、ばーか。
そう思ってしまったのは、間違いなくあたしの機嫌が悪いからだ。




