「あたしたち、メイド服とか来てる場合じゃなくね?」
時刻は2時56分。
「そろそろね」
麗さんの緊迫した声で、みんなの表情が引き締まり、眠いと駄々をこねていた祭もシャキッと起きる。
「行きますか」
美優さんの合図で、
「おおー!!」
「よっしゃー」
「行っくぞー!」
などと思い思いの掛け声で、外へ飛び出した。
ギラッギラな太陽と、涼しげな波が見守る中、異形のモノとの銃撃戦が始まる。
「ねぇ、ちょっと。やばくない?」
外に出れば、すでに異形のモノたちがスタンバイしていた。
「あたしらさ、メイド服とか来てる場合じゃないんですけど」
何、あの気合いの入れよう! 異形のモノは甲殻類のような堅い皮膚の上に、さらに頑丈そうな鎧を着こんでいる。それに比べ、あたしたちといったら…
「大事なことだから二回言うよ? あたしたち、メイド服とか来てる場合じゃなくね?」
鎧とか考えもしなかった。メイド服なんてふざけきってるし、千尋はタンクトップ、藤野さんはTシャツだ。銃撃戦するにはあまりにも薄着すぎる。
「どーすんの」
こんな薄着で、と付け加えて美優さんを見ると、
「気合入ってんねー」
あろうことか、美優さんは他人事のように目を細めて異形のモノを観察していた。そしてそれは、周りにいる麗さんも祭も、水木さんだって同じ。
だ、ダメだこの人たち…!! 緊張感がなさすぎる。あたしとしては今からでも防弾チョッキとか着込みたいのだが、もう時間がない。あと何分だろうか。
ちらりと別荘の壁にかかっている時計を確認した瞬間、
「ガァァァァァ!!!!」
突如として、異形のモノたちが吠えた。
――はじめるぞ
続いて、頭の中で響く声。
「はじめるってよ!」
突然のことに焦ってみんなに声をかけ、壁に隠れる。みんなも同じように隠れ、銃を構えた。
「いよいよね」
同じ壁に隠れた麗さんがとっても楽しそうにつぶやいていたのが、少々ぞっとしたのは秘密だ。