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「…重いわ」

「美優さーん、麗さーん、仕事はー?」


 廊下をうろうろして美優さんたちを探す。倉庫かなと思い、倉庫に行ってみれば、


「友香、いいところに来た」


「銃と銃弾をあるだけリビングに運んで」


 ごそごそと倉庫の奥のほうで何かやっていた二人は、手に大きな段ボールを三つ抱えて倉庫を出て行った。なぜか楽しそうな表情にちょっと鳥肌が立つ。何もやらかさないといいけど。


 とにかく与えられた仕事をこなそうと、気合を入れ直す。

 ちょっと蒸し暑い倉庫に足を踏み入れて、銃や銃弾が入っている段ボールを探し出した。出てきたのは、キャスター付きのプラスチック棚が一つと、あたしがすっぽり隠れられそうな大きな段ボールが一つ。

 段ボールを開ければ、小さな段ボールがぎゅうぎゅうに詰められている。これはすべて銃弾だろうか、拳銃だろうか。


 異形のモノの出現でいろいろ変わった。銃刀法とかも変わって、護身用としての銃が急速に復旧した。一人一丁はもちろん、家にマシンガンを常備している人もいるくらい。

 が、ここにある銃の量はあまりにも多い。民間の家にはもちろん、公共機関とかでもこんなに多くの銃は常備していないであろう。

 なんでこんなにあるんだろう、と疑問に思いつつもリビングへの運搬を開始しようとした。


 が、


「…重いわ」


 もともと筋肉質な体ではないために、筋肉が不足しているあたし。一つ一つは小さいとはいえ、ごつい武器を大量に運ぶだけの筋力を持ち合わせてはいない。

 くそぅ。こういう時『腹筋とか毎日やったら、お腹割れちゃうからやだー』なんていう子が非常に羨ましくなる。こっちはどれだけ腹筋やっても筋肉つかないんだぞ。脂肪が燃えるだけで、『痩せすぎだ! 太れ!』と美優さんに命令されるハメになるんだぞ。あぁもう、この体質が憎い。


 段ボールを抱えるのは後回しにして、キャスター付きの棚を移動させる。転がせばいいいんだから何とかなるかな、なんて甘く考えていれば


「…重いわ」


 やっぱり重い。転がすだけで一苦労って、どういうことだ。なんでこんなに筋力がないんだ。悔しい。

 がしかし、持ち上げることすらままならなかった段ボールを運ぶよりは何とかなっている。仕方なく、ずるずると重い棚を引きずりながらリビングへ向かった。


「美優さん、麗さん。段ボールが運べません」


 リビングのドアの溝に引っかかったキャスターを無理やり引っ張りながら、美優さんたちに声をかける。


「誰か手伝って…ちょっと、何してるんですか」


 振り返って様子を見てみれば、美優さんと麗さんは何かの衣装をせっせと縫っていた。

 非常に嫌な予感がする。なぜか。答えは単純明快。それは、美優さんと麗さんの手にあるものが、実はちょっと見覚えがある気がするからである。それと、脇に置いてあった段ボールに大きく『コスプレ』と書かれているからである。


「何をするつもりですか」


 もはや棚を運ぶのは諦め、ドア付近に放置して美優さんたちに近づく。


「メイド服、縫ってるの」


「はぁ」


 なんで?とは聞けない。あまりにも、麗さんの目が真剣すぎて。


「イイコトするから、楽しみにしててね」


 ウインク付きでそういった美優さんにぞっとする。決して、似合わないわけではない。むしろ、ウインクする美優さんは綺麗で、大人だ。

 がしかし、言っている内容が怖すぎる。


 イイコトって、絶対イイコトなんかじゃないだろ。少なくとも、『イイコトするね』と言われて、本当にあたしにとってイイコトだったのは一度もないんじゃないか? これって明らかに、良くないことを起こす人が言う一言だよな?

 …何が起こるんだろう。めっちゃ怖い。


「あの、あたしは遠慮します」


 それだけ言い残して、倉庫に舞い戻った。


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